従業員の身だしなみと裁判事例

少し前、オリンピックでも身だしなみについて、議論がなされていました。

 

・どこまで強制できるのか?

・付け爪は?

・化粧の濃さは?

・髪の色は?

・私服(通勤時)は?

 

こうした質問を、よく受けます。

 

基本的には強制はできないが、経営者として何故それがダメだと思った理由をきっちり伝えることで、理解が得られるケースが多いというのが私の答えです。

 

『お前の化粧は派手だ!』ではなく、『いろんな人がうちに来てくれます。私個人は素敵だと思うけど、中にはあなたの化粧を良く思わない年齢層の方がいらっしゃるのはわかりますよね?うちのお客様はその年齢層の方が特に上得意様なので、もう少し抑えてくれるとありがたいんだけど…。』と、否定するのではなく、認めた上で理由とともにお話することが大事です。

 

 

ただ、こううまくいかないケースもありますし、従業員とのコミュニケーションは大変難しく、行動を変えさせるのはかなり困難です。

 

従って、どこまで、ルール・規則によって強制できるかというところをここでまとめてみようと思います。

 

結論として…。

 

身だしなみについて、それにより、解雇や職務変更を必要とする職務については、面接段階でお伝えください。

 

それを了承して応募するのか、それならばと辞退するのか、労働者の完全な自由意思がある状態で条件として通知することがトラブルを回避する一番の策です。

 

以下に紹介するような裁判事例(ひげ)では、基本的に労働者勝訴で終わっています。

 

『ひげ=不快感を与える』という等式が成り立つわけではないので、ひげ禁止だから解雇・職務変更とはいかないわけです。

 

ですから、『原因となっている身だしなみ=職務に不適格』という等式が成り立つ場合は、逆に言えば処分は可能。

ただ、この等式が価値観により変わってくるため難しく、デリケートな問題になってしまいます。

 

そのためにも、労働者に失う権利が発生していない、面接の段階で、明確に告げておくことが、その身だしなみの規程に法的な合理的強制力が薄い内容であればあるほど、その後のトラブルを防ぐ唯一の手段ということになります。

 

 

【イースタン・エアポートモータース事件(東京地裁昭和55年)】

ハイヤー乗務員の口ひげ

乗務員勤務要領に、『ひげを剃ること』という一文があり、口ひげを生やしている乗務員に剃ることを注意したが、それを拒否したため乗務から外してしまった。

 

・口ひげは、服装、頭髪等と同様元々個人の趣味・嗜好に属する事柄であり、本来的には各人の自由

・企業は企業の存在と事業の円滑かつ健全な遂行を図り、職場規律を維持確立するために必要な諸事項をもってさだめ、あるいは時宜に応じて従業員に対し具体的な指示・命令をすることができるのであるから、口ひげ、服装、頭髪等に関しても企業経営上必要な規律を制定することができる

 

→きちんと整えられた口ひげで乗務することに関しては、円滑・健全な企業経営が阻害される現実的な危険は生じない。

 

ということで従業員側が勝訴しました。

 

こうした考え方は最近の事例でも変わっておらず、前述の等式次第、“=”なのか、“≒”なのか、このあたりが争点になるようです。

 

こうしたトラブルを避けるためにも、その規制が合理的でなければないほど、面接段階でお伝えしておき、結果的にそれで辞退されたとしても、入社後のトラブルを回避できたと考えることが適正であり、雇用後に雇用継続を盾に強制することは、やり方として良く思われないということになります。

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