【質問】
退職金って絶対に払わないといけないのでしょうか?
【回答】
まず、そもそも退職金というものは、法的に支給義務はありません。
しかし、就業規則等で、明確に『払う』としていれば、それはすでに賃金扱いとなりますので、絶対に払わないといけません。通常の賃金と同様の扱いです。
また、逆に『払わない』としていれば、払う義務はありません。
これが原則です。
就業規則がない、明確な定めがないような場合では、基本的には払う義務は生じません。
しかし、過去の支給実績から、定めこそないが、定めがないだけでルール化されてしまっているような場合には、期待権(もらえるだろうという期待)が存在することになり、支給義務が生じてしまいます。
なお、期待権の考え方は、就業規則に『払わない』と定義していている場合でも起こりうるものです。
【解説】
まとめると以下の2つが判断材料です。
①就業規則や雇用契約書がどうなっているか?
②過去の支給実績がどうなっているか?
①は契約の内容ですから、例えば、『退職金が有る・○○円です。』と記載があって、実際は払わないとなると、完全に契約不履行ですし、そもそも『退職金がない』と記載されていれば雇用契約が成立しなかった可能性も出てきます。
そうした意味で①で払うとなっていれば、まず支払い確定ですね。
次に、①で『払うとなっていない』、つまり、『払わない』とされていたり、そもそも就業規則や雇用契約書がないケースでは、②の過去の支給実績を見るわけです。
いくら『払わない』と定義してあっても、過去の支給実績を見ると、5年以上勤務して退職した人のほとんどに支給されているような実績があれば、労働者としても、私も5年以上働いて辞めるのでもらえるに違いないと期待してしまうような環境があれば、そこに支給義務が生じてしまうわけです。
逆にいえば、今まで支払ってきたのに、今回支給しないことへの合理的な理由が必要になるわけです。
期待権が発生するのは、どの程度の退職金支給実態があればというものが明確にあるわけではないので難しいところですが、払ってきた人たちと今回払わない人との違いを説明できるのであれば問題ないでしょう。
あるいは、過去において、払ってきた人たちと払ってこなかった人たちに明確な違いがないとすれば、ルールではなくその時々の状況で支払ってきたということの証明にもなります。
今回の対象者が、払ってきた人たちとの違いがなく、払ってこなかった人たちと違いがあるようなケースでは、期待権を考慮してあげないとトラブルになる可能性があります。
過去に比べて減額したり、支給しなかったりするケースでは、下記のような説明をしてあげるほうが良いでしょう。
※これでセーフというわけでもありませんが…。
『過去、退職金を支給していた時期もあったが、本来は退職金制度もなく、労働条件のひとつというよりは、気持ちで払っていたものなんです。今回も同様の気持ちなのですが、経営状態も芳しくなく、正直なところお支払いすることができません。感謝の気持ちがないわけではありませんので、ほんとうに心ばかりのお礼だけをお渡しします。現状をご理解いただけるよう願います。』
※少額の商品券等をお渡しするなど、本当にお礼程度のものでも渡せれば…。
日頃の関係が悪かったり、トラブルで退職するケースでなければ、このスタンスで説明されて、『それはおかしい!』と異を唱えられるケースは少ないはずです。
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