2014年

1月

22日

雇用契約書の英語訳

社会保険労務士って英語使わないよね〜。

 

って昔は思ってました。

 

が、よくよく考えると、外国人雇用はあるわけで。

 

英語の雇用契約書のチェックなんて仕事も関与先からお願いされた事もあります。

 

幸い、中学生英語で対応できるレベルで逆に勉強になった業務だったんですが。

 

専門特化が必須のこの時代、当然外国人雇用に特化されたサイトもあるようです。

 

とはいえ、当方のスタッフが『これから外国語の雇用契約書の依頼が増える!』と宣言しておりまして、そんな中、昨日、そんな相談がきました。

 

現状、海外で社労士業務をと思っているわけでもなく、外国人と言っても日本で働く人なので、多少の日本語できるっしょというノリはあったんですが、よくよく考えてみると、最近の雇用契約書は、労使双方の思惑がはり巡らされたものも増えてきており、確かに、前出のような中学生英語レベルの翻訳でちゃんと意図が伝わっているのかなぁと思ってみたり。

 

口頭の言語、根本的な考え方が違う中、だからこそ雇用契約書が重要になるはずです。

 

じゃあ、私がやろうってわけでもないわけですが、ちゃんとこちらの意図をわかって翻訳してくれる人が欲しいなぁなどと思ってみたり。

 

うん、今日から40名以上のパートさんの面接が待ってますし、みなさんに聞いてみようっと。

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2014年

1月

21日

監督署への相談事案、防止は入口(採用)から

ブログを休んでいる間にも、かなりの労使トラブルに巻き込まれました。(笑)

 

そんな中、かなり事業者にとって理不尽な内容も多く、話にならず、結果的に弁護士さんへ相談する案件も複数出ました。

 

私は社会保険労務士です。特定が一応ついてますが、争う専門家という自覚はなく、未然に争いを防ぐ専門家だと思っています。

 

戻ります。

 

で、監督官と話していて…。

 

やはり、かなり困った労働者もいるようで、事業主の無知を良いことに、次々といろんなところでトラブルを起こしていく。

 

監督官は、法律で動く以上、正論だとどうしようもないわけですが、

『いつまでも、こんなことしてないで…』

とおっしゃったりはするようです。

 

巻き込まれた事案のひとつでは、

『今回は大変ですねぇ』

と監督官が話を切り出した案件もあったり…。

 

で、こうしたトラブルに巻き込まれるケースは、やはり、入口がおかしい…。

 

①他に応募者がいなかった。

②遠い知り合いで断りづらかった。

③なんとなく採用した。

 

特に①は危ないです…。

 

人が足りないのはとても困ることですが、そこを埋める人が余分な仕事を増やして、

かつ、使えないとなると、悲し過ぎます。

 

踏ん張りましょう。

 

人が欲しいのは重々わかりますが、少ない中で選ぶとやはり…。

 

とりあえず今日はここまで。

 

じゃあ、どうやって人集めするかは、またの機会にしますが、『1人しか応募がなかったから仕方なく』というのは絶対に気をつけてくださいね。

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2012年

8月

09日

改正労働契約法が成立(5年超で雇用契約期間の定めのない雇用へ)

めちゃくちゃ久々にブログ書きます。

 

おかげさまで忙しくさせていただいておりまして、ブログ書いてる暇があったら、うちの仕事をしてよって言われそうで、更新を控えて(さぼって)いた次第です。

 

今回は、メールにてご質問をいただきまして、ただ、法律上の個人的な質問に答えていくつもりもないもので、ただ、放置も申し訳ないので、こちらで回答を兼ねて記事にします。

 

 

改正労働契約法が成立したとのことです。内容はと言いますと…。

 

有期契約の更新等により5年を超えた場合は、雇用契約期間の定めのある雇用に移行しないといけなくなります。2013年春に施行、2018年から適用ということで報道されています。

 

詳細は把握していませんので、推定にはなりますが、まず、施行と適用が5年間ということなので、5年のカウントは、施行日からということになるのでしょう。

 

でなければ、2012年7月1日に5年を超えることとなる有期契約を結んでいた場合、2013年に即時適用すると、次回は雇用契約期間の定めのない雇用に変更しないといけなくなってしまいます。

 

それは、『聞いてね~よ!』という話ですね。

 

ですから、5年のカウントも法律施行時からということで2018年適用になっているのでしょう。

 

実際の運用時には、いろいろと詳細な取り決めも出てきそうですが。

 

いずれにしても、現時点で5年を超えているからということで、雇用契約期間の定めのない雇用へと強制されることはないと思われます。

 

法律施行後に、5年を超えることになる有期契約を結んだときが、この法律の適用を受ける最も早いケースということになるでしょう。(5年超となる1年契約を2013年7月に結んだ場合、次の更新時に適用されるかは、ニュースの速報からは読み取れません。)

 

今回、相談があったのは労働者側です。

 

雇用する側は、雇用の調整弁として、有期契約で済ましたいところです。

働く側としては、期間の定めのない雇用のほうが安定するので、それを望みます。

 

双方、利益が相反します。

 

今後は、雇う側が、『5年超で雇用契約期間の定めのない雇用へ移行しなければならなくなる』という認識で、雇用契約の場に立ち向かうことになります。

 

場合によっては、この法律がなければ、更新してもらえたのに、この法律のせいで、5年を超えることになると有期契約できなくなるから、今回で契約満了にして人を変えようということにもなりかねません。

 

さすがに上記が露骨だと、不当な雇い止めということになりますが、そもそもの雇用契約の開始時に、『当社のルールとして、雇用契約期間は5年が最長で、絶対に更新しませんが、よろしいですか?』と確認していれば、それで当然にこの法律に対する対策はできてしまいます。

 

法律によって、雇用契約を維持させるという考え方自体が、私としては微妙に感じます。

 

労働者が一生懸命、真面目に頑張って働き、その職場・職務において、熟練になっていけば、雇用契約は維持されるはずです。

 

それでも維持されないのだとすれば、その職場・職務には向いていなかった、あるいは技能が足りなかったのかもしれませんし、あるいは、不当な雇い止めかもしれません。

 

いずれにしても、この法律の趣旨は、形だけの反復契約更新を排除して、実質的に期間の定めのない雇用契約なのであれば、そのように契約をし直そうという意図だと思います。

 

余程のブラック企業での勤務ならいざ知らず、そうでなければ、雇い止め自体も解雇に準ずるルールがありますので、簡単に雇い止めすることもできません。ですから、法律云々ではなく、働きにより、そんな心配がないような存在になっていただければと思います。

 

少々、回答と私的な意見が混ざってしまいました。

 

そもそも、とりあえず、報道があった段階ですから、実際の運用までに、いろんな情報が追加で出されていきます。

 

私どもの立場としては…。

 

前出の通りですね。そうしたくないなら、初めから明確に伝えておいてくださいという、いつものアドバイスになりますね。

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2011年

6月

21日

労働時間と修行・自己啓発

修行って労働時間でしょうか?

 

私たち士業の世界でも少なからずあることですが…。

 

独立開業できる業種においては、『修行』と呼ばれるような、ある意味、労働だとしたら労働の対価に見合わない賃金しかもらえないケースがあります。

 

独立開業するには、当然、経験が必要です。

 

しかし、自分で突然商売を始めても、特に職人的な業種、技術・知識が必要な業種では、お客様を満足させることができません。

 

ですから、雇用されて働いて、そこで経験を積ませてもらうわけです。

 

しかし、働く側は、そこで一生勤めあげようとは思っていません。

 

ある程度できるようになれば、技術や知識を身につける、あるいは盗むことができれば、独立して、勤務先のライバルになってしまうつもりなのです。

 

この関係というのは何とも微妙なわけです。

 

多くの事業主さんは繰り返します。

 

 

 

長く続かないからと待遇を改善する。

 

結局裏切られて、お客様を連れて開業される。

 

ちゃんとしても裏切られるからと労働条件を切り下げる。

 

みんなすぐ辞める。

 

で、最初に戻って、長く続かないからと…。

 

 

業種の性と言いますか…。

 

最近でこそ、独立開業しても、ちゃんと食べていける士業さんが少なくなっているので、待遇改善のところでストップしている士業の法人組織が増えてきているように思えますが…。

 

 

さて、前置きが長くなりましたが、もっと露骨な業種があります。

 

そういったところでは、最低賃金を割るような賃金設定で、修行をして…。

 

例えば、料亭の板前修業なんかであれば、そんな世界ですよね。

 

お金を払ってでも、そこで修行したい。

 

そこで修行したことが、経歴上の裏付けになるような…。

 

だから、たとえ賃金なしでも働かせてもらいたいと…。

 

みんな納得しています。

 

住み込みで、まかないも出るので、給与と言ってもおこづかいのようなものです。

 

 

修行とはいえ、当然、お客様にお出しするものの仕込みをします。調理します。買出しに行きます。

 

『労働かどうか?』と言われれば、確かに労働なのかもしれません。

 

ここに労働基準法・最低賃金法が介入しますと…。

 

 

 

この双方が納得している『修行』は、賃金不払い・最低賃金法違反ということになります。

 

理不尽だと思います。

 

しかし、修行が労働であるという考えが成立しているとすると、それを逆手に取って、お弟子さんたちが、賃金不払いと訴え出てくれば、その料亭がつぶれてしまう可能性だってあるわけです。

 

修行が、一定のカリキュラムに従って行われていて、使用従属関係が見られず、労働者として働いている者との明確な区別があったとすれば、労働ではないという話も出てくるのでしょうが、現実的には、恐らくは労働者との判断が下るでしょう。

 

指揮監督下にない時間帯に、自己の技術向上のために行っていることでも、結果として、その修行がなければ、業務が成立しないような場合は、やはりそれも労働と言わざるを得ないわけです。

 

何故なら、きっと使用者は、その修行が放棄されたときに怒るでしょうし、業務に支障が出るからです。

 

 

修行と労働時間についての見解は、おそらくは、それぞれの主張が平行線です。

 

修行の部分を最低賃金法で縛るわりに、御礼奉公は許されません。

 

それでは、先にあがった士業ではありませんが、使用者はライバルを育てては独立させ、育てては独立させを繰り返すことになります。

 

全ての業種に同じ法律ということ自体が、無理があるのかもしれませんが、法律を逆手に取る労働者がいないとも限らない以上、何かあったときに、被害を最小限にとどめるための手立てはきっちりとしておくことが大切ということになります。

 

先の修行の概念についても、労使でしっかり共通認識を持っておく必要があります。

 

 

あまり型にはめるのは好きではなく…。

 

実態に合った形で、使用者の思いが込められた就業規則を作って、労使で共有してもらってます。

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2011年

6月

13日

東京労働局作成の【妊娠→産休→育休→復職】紛争解決事例集

東京労働局から、妊娠から休業、復職に関しての紛争解決事例をまとめた資料が出されました。

 

読み物として、読んでもらおうという意図もみられて、読みやすい資料になっていると思います。

 

現物は下記です。

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2011年

5月

26日

労働時間(残業時間)は1分単位で計算する?

先日、監督署の調査が増えているというブログを書いた途端…。

 

お客様のところに調査が…。

私じゃないですよ…。

 

それはさておき…。

 

指摘内容のひとつが『労働時間を1分単位で計算してくださいね。』というもの。

 

多くの事業所で当たり前に行われている労働時間の切り捨て。

 

15分単位、30分単位…。

 

以前、大手ハンバーガーチェーンさんが、1分単位じゃないと指摘を受けて、是正が行われたことがありました。

 

労働基準法(通達)で認められているのは、

 

①1か月の集計を『30分未満切り捨て30分以上切り上げ』すること。

 

②割増賃金支給時に『1時間単位の賃金の端数を、50銭未満を切り捨て、50銭以上を切り上げること』

 

③割増賃金支給時に『1か月の集計の賃金の端数を、50銭未満を切り捨て、50銭以上を切り上げること』

 

の3つだけです。

 

監督署の監督官によっては、終業時刻の15分程度後までなら、業務が終業時刻に終わっているものとして推定されるので、切り捨てても構わないとおっしゃる方もいます。

 

弁護士先生の書籍で30分までなら良いのではという見解も書かれていました。

 

ただ、結局のところは実態なのだと思います。

 

タイムカードの設置位置や、業務中と業務終了の切り分け度合いなども影響するわけです。

 

そもそも、業務に対して切り捨てをして支払わないのはやはり違法(というより契約違反?)ということになりますし、業務でなければ支払う義務はないわけです。

 

また、切り捨て処理をしていると、その微妙なタイミングを計る従業員も出てきたりします。

 

 

労働基準法で明確に定まっているわけですから、もはや1分単位で支払ってはいかがでしょう?

 

時給1,000円で、1分あたり16.8円です。

 

タイムカードの集計が大変なら、エクセル等を使いましょう。

 

 

もし、どうしても嫌なら、端数処理のために、定額の残業代を導入しましょう。

 

1日30分、24日で12時間。12時間分の定額残業代を支払っている形に現在の賃金規程を変更すれば良いわけです。

もちろん、月給の対象労働時間数を12時間増やしても良いでしょう。

 

監督署や法律の主張は、『賃金を多く払え!』ではありません。

『ごまかさないで、法律通りに賃金を払え!』なのです。

 

ちゃんと説明をして、30分未満は従来通り切り捨てしたい。

だから、今の給与の一部を切り捨て対策の12時間の定額残業代に切り替える。

規程上は、不利益な変更になるが、実態は全く変わらない。

だから理解して同意して欲しい。

 

これで問題は解決するわけです。

 

もし、これで反感を買うのであれば、やはりみなさん、不満に思っていたということなのです。

 

それでもお願いして了解を得て押し通すのも自由。

 

それならばと15分未満を切り捨てて、6時間分の定額残業代というところに一歩下がってみるのも自由。

 

わかったということで、ちゃんと支払うのも自由。

 

不満の量は、労働者の働きにも影響が出ます。

 

程よい落とし所を模索していきたいですね。

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2011年

5月

24日

労働基準監督署の調査が増えてる?平成22年の実施報告より。

いろんな労働局で、平成22年の監督署の調査件数等の報告がなされています。

 

数的にも倍増しているとの報告。

 

というか、倍増させたんですよね。

自然現象、他人事みたいに…。

 

東京労働局の資料からですが…。

 

調査自体多いのが建設業。

 

違反が多いのが、交通運輸業に保健衛生業。

 

違反内容として、どの業種でも起こりうることで多いのが…。

 

労働条件の書面通知、就業規則未作成、36協定未締結、割増賃金不払い、定期健康診断の不実施。

 

まあ、実際に調査で指摘されることばかりですね。

 

 

以前、監督官と話していて、おっしゃられていたのが…。

 

『監督署の調査で是正されることは、労働者から訴えられることを思えば、事業主さんにとっても絶対良いことだと思う。』

 

もちろん、そうですね。

 

それはそう思います。

 

ただ、訴えられるような要素のない、労使双方にとって良いことでも、労基法違反だからダメっていうのも…ですね。

 

休憩時間とかよくありますよね…。

 

いろいろ思うこともありますが…。

 

調査対策ではなく、労使関係が良好になるように、いろんなことを考えていきたいですね。

 

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2011年

2月

09日

定期健康診断は、パートタイマーも含めて全員に受けさせないといけませんか?

【質問】

定期健康診断は、パートタイマーも含めて全員に受けさせないといけませんか?

 

【回答】

週の所定労働時間数が正社員の3/4以上のパートタイマーについては、健康診断を受けさせなければなりません。逆に言えば、3/4未満であれば、強制はされないということになります。

 

【解説】

根拠となるのは、平成5年12月11日基発第663号の行政通達だそうです。

 

1年以上の雇用が見込まれて、3/4以上勤務する者については、常時使用する労働者として取り扱われるわけです。

 

また1/2以上は健康診断を行うことが望ましいとされています。

 

定期健康診断は、労働安全衛生法で法律上の義務とされています。ただ、それ以前に、社員が健康に働けるように管理等を行うことは、安全配慮義務という形で、そもそも経営者に課せられています。

 

過労等の状況を、健康診断を行っておらずに見逃したとあっては、経営責任を問われるのです。

 

『健康診断を受けると、気にしてよけいに身体に悪い。』などと主張して健康診断を受けない社員はいませんか?

 

定期健康診断は義務であり、会社を守るためのものです。

 

義務であることを説明してもらって、必要な人、全員の受診を目指してください。

 

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2011年

2月

08日

全社禁煙にすることは問題ありませんか?

【質問】

全社禁煙にすることは問題ありませんか?

 

【回答】

現在のところ、全社禁煙になったことを、労働条件の低下ととらえて、裁判を起こしたという事例は聞いたことがありません。

ですから、明確に結論づけることはできませんが、賃貸物件であれば、そもそも建物内禁煙というケースもあるでしょう。

どちらかと言えば、会社ではなく、建物に付随してくる内容であり、人事異動や会社の移転で結果として禁煙になるケースもあります。

あまり気にしていただく必要はないと思われます。

 

そもそも、健康増進法により、受動喫煙について、会社は措置をおこなう努力義務があります。

それに従っておこなう以上、従わざるを得ないかと思います。

 

【解説】

私としては、喫煙者なんで、喫煙者の肩身の狭さもわかっていたりします。

 

まさか、喫煙者が、抵抗はしたとしても、訴えたりはしないはずです。

 

回答にも記載しましたが、全社禁煙かどうかを決めることすらできずに、建物内禁煙となってしまうケースがある以上、あまり気にする必要はないかと…。

 

では、禁じられたことによって、建物を出て喫煙できる場所まで行って吸う人間がでてきた時にどうするかという話ですが、別の小休憩と同レベルの時間であれば、気にする必要もありませんが、特別に長くなるようだと、対応が必要になると思われます。

 

喫煙に限らず、休憩時間ではない業務時間中の小休憩やおしゃべりと同配列で喫煙についても問題視していけば、おそらく喫煙者で文句を言う人はいないでしょう。

 

喫煙者は迫害になれてますし、建物内で吸えないのは、もはや世間一般の当たり前になってきていますからね…。

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2011年

1月

24日

タイムカードを押さずにダラダラと話をしているパートタイマーがいます。タイムカード通りに給与計算をしているので、その時間も全て賃金が発生するのですがどう対処すれば良いでしょう?

【質問】

タイムカードを押さずにダラダラと話をしているパートタイマーがいます。タイムカード通りに給与計算をしているので、その時間も全て賃金が発生するのですがどう対処すれば良いでしょう?

 

【回答】

『だから、タイムカード通りに計算するのをやめて黙って減らしてしまおう。』というのは、採って欲しくない選択肢です。

ダラダラと残っていること自体、問題ですから、ちゃんと話をしておきましょう。ただし、スタッフにとっては、その時間が凄く大切な可能性があります。コミュニケーションの場になっていて、組織にとって良い効果が出ている可能性もゼロではありません。

頭ごなしに注意せず、いきなりから否定せずに、話を聞いてみましょう。

 

【解説】

何も説明もせずに、時間を減らしてしまうのは、無言のケンカをしているのと同じです。

もちろん気付かないケースもあるでしょうが、気付いたら、どうせタイムカード通りじゃないんだから、バタバタタイムカード押さなくていいわというような意見も出てきてしまいます。

 

時間を経営者目線で減らしてしまう場合も、ちゃんと減らすという事実を伝えてからにしてあげてください。

 

できれば、減らす前に、何故終わってからも長く残っているのかを確認することから始めて、その時間が本当に無駄なのか、別に問題があるのか、そのあたりも確認をしながら対処していきましょう。

 

繰り返すようですが、『頭ごなし』というのが一番…です。

向こうが、スタッフが戦闘態勢に入った時点でまとまるものもまとまらなくなってしまいます。

 

スタンスを『早く帰ってもらえるようにするためにはどうしたら良いのか?』というところに置けば、大きな問題にはならないはずです。

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2011年

1月

19日

労働基準監督署の調査を受けることになりました。どういったことを確認されるのですか?

【質問】

労働基準監督署の調査を受けることになりました。どういったことを確認されるのですか?

 

【回答】

労働基準法及び関連する法律が守られているかどうかの確認です。一般的な調査の流れを解説でご説明します。

 

【解説】

①帳簿の確認

労働者名簿・出勤簿・賃金台帳の3帳簿を確認されます。

 

②出勤簿関係

労働時間把握義務の観点から、出勤簿で労働時間の把握が適切に行われているかが確認されます。

すなわち、労働時間の把握ができないような出勤簿であれば、是正の対象となるわけです。

時間外労働についても、正しくカウントできているかをかなり細かくチェックされます。1日8時間・週40時間ごとに、法律通りに細かくチェックされますので、多くのケースで、不足が生じてきます。

 

さらに、過労死・メンタルヘルス対策により、長時間労働防止の観点から、手当の適正な支給とは関係なく、単純に残業時間数月45時間以上、月80時間以上、月100時間以上の残業がある場合については、残業時間数の削減を指導されます。

 

③賃金台帳

まず、最低賃金が支払われているのかを確認されます。

次に、法律以上の時間外手当が払われているかが重要です。

単価を計算する場合の分子、分母それぞれが適正であるか。

算入していない手当があるような場合は、当然に指摘を受けることになります。

時間給者への月額支給の手当なども、単価計算からもれることが多いです。

 

また、管理監督者への残業代についてもここでチェックされます。

もし、管理監督者で残業代を払っていない人がいれば、その人の待遇等の実態についてのインタビューがあって、適切でなければ残業代の支給を指示されます。

 

④就業規則・協定等

10人以上雇用している事業所では就業規則を。

法定時間外労働のある事業所では36協定を。

変形労働時間制等、協定が必要な制度を導入していれば、その協定を。

それぞれ、作成しているか、提出しているかについて確認されます。

 

⑤定期健康診断

定期健康診断についても、思っている以上に確実に確認されます。

正社員の3/4以上勤務者については、例外は認められません。

 

⑥年次有給休暇

年次有給休暇についても、その管理状況と運用状況を確認されます。

 

その他、これらのチェックの中で出てきた疑問点は全てチェックされます。

 

これが基本的な調整の流れです。

 

自社が完璧だと思っている経営者ほど、手痛い是正勧告を受ける傾向にあります。

 

調査に関して、不安がある場合は、当方を含め、一度専門家にご相談ください。

調査前のご相談をお勧めいたします。

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2011年

1月

18日

労働基準監督署の調査の通知が来てしまいました。どうすれば良いでしょう?

【質問】

労働基準監督署の調査の通知が来てしまいました。どうすれば良いでしょう?

 

【回答】

主として、日々の労務管理において、労働基準法違反がないかをチェックされます。

ただし、あくまでも、労働基準法に対してどうかという判断です。

どんなに、労働者が満足していて傍目にも良い待遇であっても、労働基準法上は問題があれば是正指導を受けることになります。

普段から、労働基準法を意識して、労働条件を決定していくことが一番の対策です。

 

【解説】

労働基準監督署の調査は、場合によっては厳しいものとなります。

不払があれば、賃金の支払いを命じられますし、労使双方が望んでいないようなことも、場合によっては強制されます。

早く帰りたいパートタイマーの休憩や、定期健康診断の強制は、その代表的な例です。

ただ、最近感じているのは、これを良い機会だと捉えることも1つだと思っています。

現状、なんとかすり抜けても、最終的に、労働者から訴えられることになれば、さらに大きな金銭的・精神的負担が生じます。

これを機会に、問題点や課題を明確にして、必要な対策は施しておくことが、結果的に経営者のためになるはずです。

 

不安な方は、まずは、当方を含め、専門家にご相談ください。

場合によっては、説明の仕方や考え方で、誤解を生じさせないこともできるかもしれません。

 

明日は、具体的にどんな調査が行われるかご紹介します。

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2011年

1月

17日

見えない労務関係のリスクを考える。

労務関係のリスクと言って、何が思い浮かぶでしょう?

 

『労働者から訴えられるかもしれない。』

『労働基準監督署の調査で、是正勧告を受けるかもしれない。』

『労働者がやる気をなくして、業績が下がるかもしれない。』

 

これらは間違いなく、労務関係のリスクです。

 

 

 

では、具体的にどういった部分がそこにつながっていくのかを、考えたことがあるでしょうか?

 

労務関係のリスクは、多くの場合、即時性のリスクではないため、

 

『気にはなっているが、具体的に対策をしていない。』

 

というケースがほとんどです。

 

『○○を××していないから、労働者から訴えられるかもしれない。』

 

というところまで具体的に考えているだけでも珍しいことです。

 

そうなると、気にはなっていても、見えていないのと同じです。

 

 

 

しかし、放置しておいて良いかと言えば違います。

 

不払残業代については、金銭的にも多い額の支払いにつながります。

労使トラブルは、労使双方の精神的な負担も大きいものです。

やる気をなくさせることの実害は、計りしれません。

 

労務関係のリスクと言えば、従来は、労働基準監督署対策が一般的でした。

 

しかし、本当に怖いのは、労働者の権利主張が強くなったことでの労使間トラブルであり、労働者のモチベーション低下が引き起こす業績不振なのです。

 

 

では、どうしておけば良いのか?

 

人間が定期健康診断を受けるように、労務関係も、定期的に健康診断を受けておく必要があります。

 

5年前には、ほとんど機能していなかったパートタイマーの有給休暇も、現在ではかなり一般的になってきました。

10年前には、精神疾患による休職者もほとんどみかけませんでした。

 

時代の流れとともに常識も変わって行きます。

 

自社のルールのどこに問題があり、どうしたリスクにつながるのか?

 

一度、チェックされてはいかがですか?

 

 

もちろん、当方でもお手伝いは可能です。

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2011年

1月

14日

就業規則作成届に意見書の添付は絶対ですか?反対意見が書かれていたらどうなりますか?

【質問】

就業規則作成届に意見書の添付は絶対ですか?反対意見が書かれていたらどうなりますか?

 

【回答】

意見書の添付は絶対です。

ただし、就業規則は事業主が作成するものですから、社会通念上問題がなく、合理的であれば、反対意見があったとしても成立します。

意見書がもらえなかった場合でも、従業員代表意見書添付不能理由書といった、意見書がもらえなかったことを説明する文書とともに提出すれば問題ありません。

 

【解説】

就業規則の提出は10名以上の従業員を雇用する事業所においては、法律上の義務です。

しかし、場合によっては意見書を記載・押印してもらえないこともあるでしょう。

だから、監督署に提出しない、あるいは監督署が受け取らないということでは、法律の義務を果たせなくなってしまいます。

従って、意見書の添付は、原則絶対ではあるものの、回答の通り、添付できない旨の理由書の提出で代行が可能です。

反対意見についても、あくまでも意見として取り扱われます。

 

ただし…。

そんな状況の中、反対意見だったり、意見書に署名・押印がもらえないような状況で、就業規則の完成を強行することが、果たして組織にとってどうなのかという問題点もあります。

反対意見に対して、あるいは、意見書をもらえないことに対して、真摯に向き合い対応することで、不満を少しでも解消していくことが大切です。

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2011年

1月

12日

年間休日数の平均・目安ってどれくらいでしょう?

【質問】

年間休日数の平均ってどれくらいでしょう?

 

【回答】

多い会社:125日~130日

週休二日:120日前後

隔週週休二日:105日

くらいになってきます。

 

もちろん、1日の労働時間にもよりますので、単純な判断はできませんが、上記が目安になります。

 

【解説】

普通に、土曜日と日曜日と祝日を休むと、おおよそ、120日弱の休みになります。

それに最低限の大みそかと三が日あたりを加えれば、120日前後になります。

 

ここにお盆休みも数日取れば125日に届く数字、さらにゴールデンウィークの飛び石も休みにすれば130日になってきますが、休みが多い会社になればなるほど、計画的年次有給休暇の付与制度などを利用しているケースが多く、年間休日という表記上は120日前後になっているケースが多いです。

 

ちなみに105日というのは、260日の出勤となり、

260日×8時間=2080時間<2085.714時間=365日÷7日×40時間

の通り、1年単位の変形労働時間制によって、1日8時間働いてもらう場合の最大出勤日数で、中小企業の求人票でよく見かけます。

 

逆に言えば、105日より休日が少なくて、1日8時間労働だとすると、年間の労働時間数が多過ぎることになります。

 

それ以上の労働時間は全て時間外労働として計算されることになりますので、時間外手当の支給がなければ、常に不払いが生じていることになってしまいます。

 

そもそも時間外労働が予定されている労働条件というのも…なのですが、不払が生じると金銭負担も生じてきます。

 

ご注意いただければと思います。

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2010年

12月

17日

『労働者から、精神疾患のため休職したい旨の申出がありました。対応として注意するべきところはありますか?』

【質問】

労働者から、精神疾患のため休職したい旨の申出がありました。対応として注意するべきところはありますか?

 

【回答】

就業規則等で休職制度が明確に定まっている場合は、そちらを見てもらってください。そうでないケースでは、決めないといけないことを明確に決めておきましょう。

決めないといけないことは、解説で…。

 

【解説】

決めておかないといけないことは以下の内容です。

①休職期間

とりあえず、今回、いつからいつまでなのか?

最長、何ヶ月まで休職できるのか?

 

②給与

ノーワークノーペイの原則通り、給与の支給義務はありません。

休職期間中給与がなくなることと、協会けんぽの場合、傷病手当金の申請手順なども証明してあげてください。

 

③復帰時の注意点

復帰の際の段取りについて明確にしておきましょう。

・復帰の可否は会社が判断する。

・判断できないときはお試し勤務をする。

・会社の指定する医師の診断を受ける。

・会社の復帰否認の決定には従う。

・復帰後の再休職は、同一傷病の場合、3ヶ月以内の場合は、継続した休職として扱う。

 

こうした取り決めをしておかないと、復帰できるできないでトラブルになるケースがあります。

事業主の代理行為をしてもらうのが労働者です。

到底勤務できない状況で、勤務させる義務はありません。意気で応えるなら、休職最長期間の延長などを検討していただくほうが、ご本人の疾患にも有効なはずです。

 

④その他

休職期間が満了した場合は退職となること。

期間中の社会保険料は毎月振り込むこと。

定期的に連絡をしてくること。

 

決めないといけないことはたくさんあります。

 

いずれにしても、最初に説明しておくことが必要です。

労働者の状態が良くなければ、書面にして渡したり、ご家族に説明することも大事です。

 

その上で温情ある対処をしてあげれば、休職→退職となった場合でもトラブルを防ぐことができるはずです。

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2010年

11月

22日

『就業規則は10名以上雇用すると作らないといけないと聞いたんですが?』

【質問】

就業規則は10名以上雇用すると作らないといけないと聞いたんですが?

 

【回答】

就業規則は、10名以上雇用すると、労働基準監督署への提出義務が生じます。

これにより、提出しないといけないので、作成義務も生じているという考え方です。

 

10名の数え方ですが、パートタイマー等も当然含めます。

イメージとしては、在籍人数というのが最も適切かと。退職していない人の数。

 

他で使っている数字でいえば、労働保険の年度更新の際の労災保険の対象となっている人の人数を申告書に記載すると思いますが、あれが一番近いでしょう。

 

【解説】

就業規則の作成義務とは別に、労働条件の明示義務というものがあります。

労働時間だとか休日・休憩、給与や契約期間といった絶対的明示事項に加え、全員に適用される取り決めがあれば明示しないといけない相対的明示事項というものがあります。

これらを雇用契約書や労働条件通知書で全て明示するのはなかなか難しいものです。

 

これらを包括的にまかなえるのが、就業規則です。

 

 

就業規則にしても、雇用契約書にしても、

『はっきりさせたくないことを、はっきりさせることになるから。』

という理由から、あまり積極的に作られることはありませんでした。

『寝た子を起こす』ですよね。

 

有給休暇を法律通りに与えていない。

育児休業を暗黙で拒否している。

残業代を法律通りに払っていない。

 

などなど、各会社・組織によって、いろいろあるわけです。

 

それが、就業規則や雇用契約書を作ることによって、表面化するのが怖いという考え方です。

 

もちろん、そうしたことはあるかもしれません。

 

しかし、それは…。

『問題がなかった』のではありません。

『問題がなかったことにしていただけ』なのです。

 

なかったことにしていた問題は、事実存在しているので、将来、労使トラブルの火種となります。

 

あるいは、現状はお互いに誤解して都合の良いように解釈していて、後になって全く正反対の主張となって表面化するかもしれません。

 

最後までトラブルにならずに終わる可能性は、一昔前とは違います。

表面化していない不満を持ったまま、精一杯働けるでしょうか?

 

就業規則に限らなくても、労働条件は『あいまい』ではなく、『明確に』しなくてはいけません!

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2010年

11月

01日

労働者を雇い入れるときに、通知しておかないといけない労働条件っていうのは何があるのでしょう?

【質問】

労働者を雇い入れるときに、通知しておかないといけない労働条件っていうのは、何があるのでしょう?

 

【回答】

杓子定規な回答は、他サイトや後に回しておいて…。

 

『どれだけ働いて、どれだけもらえるか』

『何をしなくてはならなくて、何をしてはいけなくて、どんな権利があって、どんな権利がないのか』

 

これらを、正直かつ明確にしておくことが必要だと思います。

 

【解説】

さらにはっきり言えば、拘束時間と報酬、義務と権利について、明確であれば良いわけです。

 

法律上の明示義務も、結局はこれをはっきりさせるための項目が並んでいます。

 

逆にここの部分が明確でなければ、入社するかしないかを決定できないような事項だと思います。

 

実際、そうしたことがあいまいなまま、雇用契約が開始するケースが圧倒的に多いのです。

 

入社前というのは、おそらく、経営者と労働者が最後に対等に話をできるときです。

 

もちろん、求人・求職状況によれば、入りたい・入って欲しいという関係があって対等ではないのかもしれませんが、入社後に比べれば、経営者が言ったことに対して、『じゃあ入社しません』と労働者が言う権利がある状況です。

 

入社してから抑制をかけることがあるのなら、入社前に言っておかなければなりません。

 

『社員としてふさわしい身だしなみ』

ということで、付け爪、髪の色、通勤時の服装等、言うのであれば、採用前、面接の時に言っておけば良いわけです。

入社してから言えば、聞いてなかった、それなら入社しなかったなど、いきなりの不満につながるわけです。

 

悪い労働条件については、雇用開始後に通知すれば100%不満につながります。

 

しかし、雇用開始前に、入社の意思決定の前に通知すれば、納得済みです。

 

場合によっては、はっきりすることを避けたまま雇用していくことで、将来の大きな労務トラブルの火種になることもあります。

 

もちろん、告げることによって、入社拒否される可能性もあります。

しかし、そこで入社拒否されるようであれば、いずれは、労務トラブルにつながっていく関係です。

すっぱりとあきらめてはっきりさせることははっきりさせましょう。

 

正しい労働条件の明示義務に関する情報は、

こちら、兵庫県の労働局のHPをご参照ください。

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2010年

10月

14日

事務上の問題から、賃金の締め切り、支払日を変更したいのですが、注意点はありますか?

【質問】

事務上の問題から、賃金の締め切り、支払日を変更したいのですが、注意点はありますか?

 

【回答】

労働者が不利益を被る可能性がなければ、問題ありません。

ポイントは、『変更前にもらえるはずだった日に、もらえるはずだった額以上の給与が支払われる。』ということが守られるかどうかというところです。

守られない場合は、事前通知の上、一定期間の余裕を持って対応していきましょう。

 

【解説】

①支払日を早める。

通常は不利益にはならない。

②支払日を遅らせる。

住宅ローン等の支払日によっては、資金繰りがショートしかねない。

③〆日を早める。

通常もらえる額より、少なくなる月が発生するはずです。

④〆日を遅らせる。

通常は不利益にはならない。

 

とにかく、会社の都合で、労働者の生活が不利益になったは問題です。

そうしたことが起きないように、対応しましょう。

③のケースでは、多くの場合、勤退管理上の〆日だけを変更して、最終の給与で調整するような形を取ります。

②のケースでは、まずは変更内容とその影響をはっきりさせて、その上で、一定期間、労働者が準備対応できる期間を用意するようにします。

 

結構乱暴にされるケースもあるようですが、住宅ローンの支払いが滞ることで、ローンのとりやめにつながったりすれば、責任の取りようもなくなります。

注意してくださいね。

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2010年

9月

30日

遅刻が多く、厳格な対応をするべく、遅刻3回で欠勤1回の扱いとするようなルールを作ることは問題でしょうか?

【質問】

遅刻が多く、厳格な対応をするべく、遅刻3回で欠勤1回の扱いとするようなルールを作ることは問題でしょうか?

 

【回答】

賃金の控除は、いわゆる『ノーワーク・ノーペイ』、つまり、働いていない分は払わなくても良いという考え方が全てです。

働いていない時間以上の賃金を控除すると、それは問題となります。

 

【解説】

質問のケースでは、1分の遅刻3回でも、1日分の賃金を控除することになります。

1日8時間として、2時間40分の遅刻3回でやっと1日分ですから、まず間違いなく控除しすぎになってしまいます。

ただし、遅刻という問題行為に対する制裁措置として減額することは不可能ではありません。

しかし、1日分の半分、1賃金計算期間の賃金の1/10までと控除の上限が決められています。

例えば、月給160,000円、1日8時間、週2日休みなら、おおよそ時給は1,000円、1日8,000円程度ですね。

1時間の遅刻を3回した場合に、1日分を控除すれば、8,000円控除することになります。

実際に労働をしていないのは3時間ですから、これだと5,000円は余分な控除、つまり制裁としての控除と考えることになります。

しかし、1日分の半分(4,000円)、1ヶ月分の1/10(16,000円)を超えてはならないというルールから、上記控除は違法という考えになります。

 

ちなみに、控除するから問題になるわけで、遅刻がない者に精勤手当を加算して支給するということだと、制限はかかりません。

ただし、当たり前に与える給与という概念から外れるので、最低賃金の確認時には含むことができなくなってしまいます。

 

遅刻の実態を考えながら、併用も含めてより適した運用を検討してみてください。

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2010年

9月

29日

労働者が休憩の取得を希望しません。それでも休憩は与えないといけませんか?

【質問】

労働者が休憩の取得を希望しません。それでも休憩は与えないといけませんか?

 

【回答】

結論から言えば、法律ですから与える必要があります。

ただ、実際に6時間、息つく暇もなく働き通しというのは、実際問題として不可能、あるいは厳しい状況だと思います。

できるだけ現状を変えない形で、法的要件を満たせる形を考えてみましょう。

 

【解説】

休憩は…。

6時間超の労働で45分。

8時間超の労働で60分。

与える必要があります。

法律上、休憩時間に対し、賃金の支払義務はありません。つまり無給で構いません。

 

≪今回の内容≫

現状は、9時~17時の勤務。

時間給は1,000円で、8時間勤務、休憩なしです。

結果的に、1日8,000円の賃金を手にしています。

 

監督署の調査が入り、休憩時間を取得させていないことについて、是正勧告が出ました。

 

当然、1時間休憩を取ってもらうことが検討されました。

①9時~18時勤務 12時~13時休憩 8時間勤務 1日8,000円

②9時~17時勤務 12時~13時休憩 7時間勤務 1日7,000円

会社としてはどっちだって良かったのです。

しかし労働者からの希望は、以下の通りでした。

『9時~17時の拘束で、8,000円欲しい。8時間働くので今まで通りにして欲しい。』

 

17時に終わって帰れば、夕食の準備も間に合うが18時では間に合わない。

だからといって、17時までで給与が1,000円減るのも納得がいかない。

 

主張はごもっともであり、対応に苦慮するわけです。

 

《対処①》

細切れの休憩時間をかき集めてもらう。

多くの場合、本当に業務をし続けるのは、常に相手がいる仕事、工場等のライン作業で止まることができないような場合を除いて無理ではないでしょうか?

通常、食事、一休み、トイレ、気分転換、お茶、お菓子、タバコなどなど…、腰を落ち着けて、『休憩』としなかったとしても、休んでいるはずです。

それをかき集めて申告してもらいましょう。

その際、申告された時間についても、給与は支給する形を取りましょう。

そうして、60分以上の申告を集めることができれば、従来のままの雇用形態で、法的にもクリアできる状態になるわけです。

 

《対処②》

時間外労働と早退をやり続けてもらう。

会社としては、法律は守らなくてはなりません。

ですから、前出の①の形を採用します。しかし、その結果、労働者本人が、休憩時間に働き、1時間早退したとしても、事業主の責任ではなくなります。

もちろん、事業主の労働時間把握義務を持ちだして実態を把握しているべきなのに是正をしないと注意されるかもしれません。実質一緒で悪意的な脱法行為ではないかと注意されるかもしれません。

ですが、注意指導を繰り返しても、それでも本人がそれをやめないとなると、どうすることもできません。

まさか、監督署が労働者を処分しなさいとは言わないでしょう。

 

今回、少しゴリ押し?強引?少しグレーな回答を記載しました。

というのも、この休憩の強制で誰も得をしないのです。

上記で全く問題がないとは言いませんが、できれば誰も得をしないことを杓子定規にはやりたくないですよね。

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2010年

9月

28日

社員から、『就業規則を見たい』と言われました。まだ作成していないのですが、作らないといけませんか?

【質問】

社員から、『就業規則を見たい』と言われました。まだ作成していないのですが、作らないといけませんか?

 

【回答】

現状の労働者数によって、作成義務の有無が分かれます。しかし、届出までするかは別として、労働者の多い少ないに関わらず、作成しておかれることをお勧めします。

 

【解説】

労働基準法においては、常時雇用する労働者が10名以上になると就業規則を作成して、それを労働基準監督署に提出する義務が生じます。

この場合の、常時10名以上の意味ですが、正社員・常勤に限定したものではなく、パート・アルバイトも含める形で、イメージとしては労働保険料の申告の際の労働者数が近しいと言えます。

 

ですから、質問のケースでは、労働者数によって、作成しないといけないか、しなくても良いかが分かれることになります。

 

ただし、労働者が求めてきているわけですから、労働者に雇用条件等について、少なからず不安を与えている可能性が高いです。

安心して仕事に没頭してもらうためにも、就業規則を作成して、労働条件を明確にされることをお勧めします。

 

・人数が少ないから。

・労使関係が良好だから。

 

もし、そういう理由で、今は不要だと思っている経営者がいらっしゃったとしたら

、是非、今のうちに作成しておきましょう。

 

就業規則は権利と義務が記載されたものです。雇用契約において、就業規則に大きな強制力がある以上、できるだけ、与える権利は少なく、与える義務は多く作ることになってしまいます。

 

そんなとき、人数が少なかったり、労使関係が良好であれば、万一のことを考えてのものと理解を得ることもできるでしょうが、多くなったりこじれてきたりすると、そこで敵対関係にまで発展したりします。

 

そうした環境があれば、是非、今のうちに、就業規則を作成しておかれることを、お勧めします。

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2010年

9月

21日

雇用契約期間を定めてさえいれば、自由に更新しないことができるんでしょうか?

【質問】

雇用契約期間を定めてさえいれば、自由に更新しないことができるんでしょうか?

 

【回答】

その雇用契約の実態次第、労働者に与える更新期待度によります。

つまり、明確に当初より更新しないことが明らかであれば、更新しないことに何の問題も生じませんが、更新回数が多いとか、同様の労働者が全員更新されているような状況においては、雇用契約期間自体が形骸化しているとみなされ、更新しないことについて、解雇の際と同程度の理由が必要になります。

 

【解説】

厚生労働省は、『有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準』において、契約締結時の明示事項等として、以下の2つを定めています。

①更新の有無を明確にする。

②更新がある場合、その判断基準を明確にする。

 

単純に有期労働契約と言いますが、そのパターンはいくつか存在します。

・完全に有期

何かしらの建造物を作る、プロジェクトを実行するなど、業務が行われる期間自体が有期であり、業務終了により、労働契約も終了するもの。

・実質無期

景気や業績の変動に対する雇用の調整を目的として、正社員以外の者に対して雇用契約期間を定めているもの。実態として更新が繰り返されている。また正社員との業務の違いもあまり明確ではない。

・一応有期

正社員登用前など、雇用のミスマッチを防ぐべく、試用期間のような役割で位置づけられたもので、雇用契約期間終了時点で、雇用契約期間の定めのない雇用への移行あるいは雇用契約終了となるようなもの。ハローワークのトライアル雇用制度が該当すると言えます。

 

大事なのは、その有期契約が、どれに該当するのかということが明確に伝えられていることです。

当然、完全有期→一応有期→実質無期の順に労働条件としては安定します。

 

こうして、どういう種類の有期雇用なのかということが明確に伝わっていれば、自然に、更新に関する制限度合いも自然に決まってきます。

 

更新しないことについて、完全有期であれば、そもそも、更新を期待すること自体間違っています。

一応有期の場合でも、その後、期間の定めのない雇用契約に移行するかどうかは別として、原則は一旦途切れるわけです。

実質無期のケースなら、有期雇用は形だけであり、契約満了で退社していただくには、解雇と同等まではいかなくとも、相応の理由が必要となるわけです。

 

ですから、雇用契約期間さえ定めておけばというのは問題があり、その有期雇用契約の実態がどうであるか、そしてそれをどう伝えているのかが、重要になってくるわけです。

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2010年

9月

17日

私以外の社員は1人だけの会社です。それでも有給休暇を与えないといけないのでしょうか?

【質問】

私以外の社員は1人だけの会社です。それでも有給休暇を与えないといけないのでしょうか?

 

【回答】

休まれると困るのは重々わかります。しかし、法律上、当然に有給休暇の権利は発生しますし、年中時季変更権行使というのは少々無理があります。

なんらかの手立てを打って、有給休暇を取得してもらえるような環境を作っていきましょう。

最悪、取得できないことを労働者自身がやむなしと思ってくれて、不満につながらないような状況は作る必要があります。

 

【解説】

先生1人でスタッフ1人。小規模のクリニックではよく見かける人数構成です。先生は診療しなくてはいけませんから、休まれるとどうしようもなくなります。

小規模な商店なんかも同じことでしょう。

 

法律の流れにそっていけば、取得させなければならない、取得できるような環境を作りなさいという回答のような答えになります。

 

1人の社員を2人のパートに変更して少しかぶらせれば取得してもらえる、いざというときに助けてもらえる助っ人スタッフを複数名用意しておく、派遣スタッフを利用するなどが、そうした対応になるかと思います。

 

が、複数人にしても労働意識が低ければ、穴があくことをなんとも思わないかもしれません。助っ人スタッフや派遣スタッフもそう簡単に見つからないかもしれません。

 

もちろん、根本的な解決策として絶対に必要です。

しかし、現実に難しいからご相談があるわけで、そうした視点から、以降は考えてみます。

 

(1)買い取る

買い取りは有給休暇の取得促進を妨げることから禁止されています。しかし、時効を迎えてしまったもの、退職時に残っているものについては、消えてしまうものですから、買い取り自体禁止されていません。

買い取ってもらうことを期待して使用しないという状況が、取得促進を妨げていないのかという視点もあるので、問題がないと言い切ることもできませんが、何もしないよりはマシです。

少なくとも有給休暇の対価として渡してさえいれば、後に請求されることもありませんし、時効到達時及び退職時に限定しておけば、少しグレーな感じもしますが、現状の通達ではクリアかなと言うところだと思います。

 

(2)我慢してもらう

我慢してもらうのはダメなんですが、現実問題として、有給休暇を1日も取得せず、不満もなく働いている人はたくさんいます。

当然、相応の待遇であったり、仕事のおもしろさであったりということも必要になるでしょう。

労働基準法は遵守しなければいけませんが、トラブル化するのは、それが不満につながったときです。労使関係が良好であれば、どんな労働条件だってトラブルなど生じないのですから…。

ただ、労使関係がどう変わるか、どんな新人が入ってくるかはわかりませんし、有給・無給に関わらず、休めないことは大きなストレスになります。

根本的な解決策は模索していってください。

 

そして、あくまでも、有給休暇を取得できる環境を作っていくのが正しい正解であることを忘れないようにしてくださいね。

 

 

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2010年

9月

16日

採用時の健康診断の代わりに、健康診断書の提出を求めています。この費用は会社が持たないといけませんか?

【質問】

採用時の健康診断の代わりに、健康診断書の提出を求めています。この費用は会社が持たないといけませんか?

 

【回答】

そもそも、採用時の健康診断や定期健康診断の費用負担については、法律の定めはありません。ただ、通達レベルで、事業主に対して義務が課せられているのだから、当然に事業主が負担するべきだという考え方が示されています。

つまりは会社負担ということになります。

どうしても負担したくない場合は…解説へ。

 

【解説】

ちなみに…。義務付けられているのは、採用時の健康診断です。

 

これが採用試験の一環として提出を求めるとしたら、それは義務となっている健康診断ではありません。

採用選考の必要書類として、健康診断書を求めることは問題ありません。

健康状態というのは、採否決定に大きく左右して当然です。

で、その際の健康診断書は、法定のものではないわけです。ですから、応募者に負担させることは問題ありません。

※応募者は嫌がるでしょうが…。

 

そして応募時に提出してもらった健康診断書を、最終的に採用時の健康診断書としてしまえば、会社負担が絶対ではなくなってくるわけです。

 

大手企業では、入社してすぐに健康診断があってという流れができていたりしますが、中小零細企業では、定期健康診断すらおぼつかないケースもあります。

 

また、採用後に健康診断をしたのでは、その結果ができれば採用したくないような内容でも、採用取り消しに持ち込むのは困難です。

しかし、選考段階で健康診断書を入手していれば、そうしたことも防ぐことができます。

 

もちろん、選考の最初から求めないでくださいね。

最終面接あたりで提出してもらえば十分ですし、負担させる人数は一人でも少なくなるようにしてあげてください。

また、実際必要だとは思いますが、選考に必要な書類として求めてくださいね。

『採用時の健康診断費用を節約したいから、面接段階で応募者負担で出させておく』ということが前面に出ると少々問題になるかもしれません。

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2010年

9月

10日

手順編『1年単位の変形労働時間制』を導入すると残業が減ると聞いたのですが?(6日目)

さて、最後に導入手順です。

 

導入時に労働基準監督署に提出するのは、以下の書類です。

 

①就業規則

②就業規則意見書or同意書

③1年単位の変形労働時間制に関する協定

④年間カレンダー・シフト表等、労働日労働時間がわかるもの

⑤1年単位の変形労働時間制に関する協定届

 

①就業規則については、1年単位の変形労働時間制を適用するということについて記載があることが望ましいです。

制度導入に対して絶対ではありませんが、勤務時間が1年単位の変形労働時間制によるという事実が記載されていない就業規則では、正しく実態を表しているとは言いづらく、一緒に改定提出されるのが良いでしょう。

 

②就業規則を提出する以上、意見書が必要です。(著しい)不利益変更となる場合は、全員の同意書を提出する必要も出てきます。

 

③そして最も大事な1年単位の変形労働時間制に関する協定です。googleなりyahooなりで検索すれば、すぐにひな形は見つかると思いますので、それよりも用語の説明をしておきます。

・対象期間…労働時間を平均する期間です。

・特定期間…繁忙期間として、週40時間を超える労働時間数となってしまう期間。

・期間中の労働日と各日の労働時間をあらかじめ明確にしておく必要があります。

 そのために④年間カレンダーを添付することが多いです。

 

⑤最後に1年単位の変形労働時間制に関する協定届です。規定の書式であり、求められるがままに埋めていけば、結果的に、1日10時間・週52時間や、48時間を超える週の規制、連続労働日の規制、旧協定との関係による規制をチェックできるような形になっています。

 

これら労使協定ですが、労働者の代表の署名押印が必要です。

この労働者代表の選出ですが、案外いい加減にされているケースが多いです。

例えば、

・一応それで良いかの確認は取っているが、会社が選んでいる。

・違う目的で選ばれた代表をそのまま適用している。

・完全に会社が指名している。代表者しか代表者になったことを知らない。

など…。

 

それまでの行程がきっちりと進んでいても、最終的に、この代表者の選定がいい加減であると、労使協定自体が不成立になりますから、全てが無駄になってしまいます。

 

また、総務・人事の社員については、代表になることはできません。ご参考まで。

 

おおまかな流れはつかんでいただけたでしょうか?

シリーズとして6回にわたって説明してきました。日をまたいで記載しているので、繰り返しになった部分もあり、わかりづらかったら申し訳ありません。

 

また、できるだけ平易な文章で、口頭で説明する時と同じような感じで説明することに心がけたため、少々ダラダラとした内容になってしまった点もご容赦ください。

 

また、ご質問等いただけましたら、補足説明もしますし、わかりづらいところの詳細な解説もするようにしますので、お気軽にご要望ください。

 

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2010年

9月

09日

事例編②『1年単位の変形労働時間制』を導入すると残業が減ると聞いたのですが?(5日目)

さて、昨日は、大筋での方向性を決めるところまででした。

 

決まった大筋は…。

 

①繁忙期については、1日の労働時間を9時間30分にする。

②1時間30分の延長の場合、83日まで繁忙期とできる。(4か月程度)

 

では具体的に考えるべく、カレンダーを作成します。

せっかくなんで、どうせ作らないといけないので、平成23年1月1日~12月31日の分でやってみましょう。

【繁忙期:12/1~3/15】

数えてみますと、営業日が72日ありました。

67日×9.5時間=636.5時間

【通常期:3/16~11/30】

(243日-67日)×8時間=1408時間

従って、年間の総労働時間数は、2044.5時間でクリアできます。

 

最多労働時間まで、40.5時間の余裕がありますので、暦により労働日が多くなったり、繁忙期と通常期のバランスが変わっても、このルールで大丈夫そうです。

 

これなら、週48時間を超えることもありませんし、1日10時間・週52時間もクリアしています。また、労働日数の制限がかかる要件である旧協定よりも悪い条件になることもなく、休日も1週1日(実際は2日)を確保できているので、なんら問題はありません。

 

よって、この内容に確定しました。

 

ただ、この内容で成立したとすると、初年度はかなりの不利益変更です。

なにしろ、労働時間が、年間108時間、月当たり9時間増えるわけです。

ですから、以下のようなルールを制定しました。

 

繁忙期の所定労働時間 8:30~19:00

ただし、17:30以後に退社した場合は、その理由の如何に関わらず、注意・指導はなく、評価上のマイナス、賃金計算上の控除もなく、つまりは、一切不利益な取り扱いを行わない。

 

これで、残業としてカウントされる時間数は、1日あたり1時間30分減ったわけです。当然、これでも不利益変更ですが、このときに一緒に導入した定額の時間外手当、昇給と合わせて、組織の方針、時間では評価しないというところを理解してもらって、就業規則・賃金規程の改定・1年単位の変形労働時間制の導入について、全員の同意を得ました。

 

【注意点】

繁忙期については、30時間分以上の時間外手当を削減することになります。

乱暴に導入しては、不満にこそなっても、労働者のモチベーションは良い方向には進みません。

そうならないように、是非とも、昇給や、前出の労働義務のない所定労働時間などを併用して、労働者の理解・同意を得てください。

 

なお、うちは、繁忙期と通常期に分けましたが、同じ休みの数なら、8時間30分労働というのも可能になります。

それぞれの会社に適した労働時間の振り分けによって、残業代を払う払わない以前に、法律上カウントされる時間外労働時間数は減らしておくに越したことはないでしょう。

 

最終回の明日は、手続きや必要書類についてご説明します。

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2010年

9月

08日

事例編①『1年単位の変形労働時間制』を導入すると残業が減ると聞いたのですが?(4日目)

1年単位の変形労働時間制についての話も3日間終わりました。

 

このブログは、できるだけ小難しくならないように、法律文を極力載せないようにしています。

 

なので、説明はこのあたりにして導入事例を紹介します。

公開して絶対文句の出ないところ、うちの事務所での導入事例です。

 

 

(1)動機

もともとは申請制による時間管理だったが、上司の性格等により、部・課によって、残業申請がしやすいところとできないところに分かれていた。結果、残業代の支給と能力や業務量が比例しない形になっていて、頑張っている人にしっかりと給与を払いたいという意向から、残業代が変動しない賃金制度に変更することになった。

その一環としての導入であり、時間外労働とされる時間数を減らすことが目的での1年単位の変形労働時間制の導入でした。

 

(2)現状確認

変更前は1日8時間、年間休日120日~123日位の勤務でした。

土日祝が休日の週休2日制で、年末年始に追加の休みがあるというカレンダーです。

単純計算で、年間の労働時間数は…

(365日-120日)×8時間=1960時間

1年単位の変形労働時間制における最多労働時間数が2085時間なので、125時間ほど労働時間を増やすことができます。

これを毎日に分けると…。

125時間÷245日=0.51時間≒30分

1日1時間延ばすとすると…。

125時間÷1時間=125日

1日1時間30分延ばすとすると…。

125時間÷1.5時間=83.33日

 

(3)検討

どの程度増やせるかというところを確認したうえで、どこを増やすかというところを検討します。

繁忙期だけなのか、毎日なのか、繁忙期をどれだけの期間とするのか…。

その他にも、1日10時間週52時間の縛りや、週48時間を超える週が多くなるとどうたらこうたらというのもありました。

したがって、週48時間を超える週がないほうがややこしくなくて良いです。

48時間を5日間で割ると…。

48時間÷5日=9.6時間、つまり1日9時間30分なら、毎日でも週48時間を超えない。

(2)の最後で、1.5時間の延長なら83.33日まで行ける。

繁忙期中の営業日が83日以下ならクリアできる計算。

税理士事務所の繁忙期は年末から確定申告まで。

※最近は3月決算5月申告も大変になってきていますが…。

年間労働日数と期間を考えれば、おおよそいけそうな感じ。

では具体的に考えてみよう。

 

っと今日はここまでにしておきます。

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2010年

9月

07日

『1年単位の変形労働時間制』を導入すると残業が減ると聞いたのですが、本当でしょうか?(3日目)

昨日予告した通り、今日は1年単位の変形労働時間制導入時の残業の考え方についての解説です。

 

まず、結果論ではダメだということをご理解ください。

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入している場合に誤って運用されていることが多い例で、『1ヶ月(1年)が終わって、結果的に1ヶ月(1年)を平均して週40時間を超えていなければ、残業代は不要!』とされているケースがあります。

 

『月170時間までは残業代不要、だって1ヶ月単位の変形労働時間制だから。』

これは誤りです。

 

1ヶ月単位にしても、1年単位にしても、通常の労働条件よりも労働者には手厳しい労働時間制度ですから、過酷になりすぎないような規制も多くあります。

 

それが、『あらかじめ労働時間が定められている』という規制です。

昨日以前に、ご説明した通り、1年単位の変形労働時間制の労使協定に年間カレンダーを付けて提出する話をしました。これにより、具体的な労働日・各日の労働時間を確定しているわけです。

 

この『あらかじめ定められている労働時間』というのが、重要で、時間外労働を考える際にも、重要なポイントになってきます。

 

月給=所定労働時間(勤務すべき時間)だった場合の、時間外労働の考え方は次の通りです。

 

法定時間外割増賃金(1.25倍)が必要な労働とは…。

 

『所定労働時間(勤務すべき時間)を超えて、かつ1日なら8時間、1週なら40時間を超えた労働。』

 

ということになります。

 

所定労働時間が10時間の日なら、10時間働いても時間外手当は不要です。

しかし、所定労働時間が8時間の日なら、10時間働けば2時間分の法定時間外割増賃金が必要になります。

 

また、1日6時間労働の日に、8時間働いた場合、増えた2時間で週40時間を超えないのであれば、その2時間は法定時間外ではなく所定時間外賃金になり、割増のない1.00倍の残業代を支払えれば足りることになります。

 

まとめますと、

(1)所定労働時間(勤務すべき時間)を超えた分

1.00倍の時間外手当は支払確定

(2)所定労働時間を超えた時間のうち、1日8時間・1週40時間を超えている分

0.25倍の時間外割増賃金

 

こちらの流れでほとんどのケースで正しい時間外労働を算出することができます。

 

文字で書くと複雑そうですが、やってみるとそう難しくはありません。

 

もし、現状、誤った運用をされていることがあれば、これを機会に改善してやってください。

 

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2010年

9月

06日

『1年単位の変形労働時間制』を導入すると残業が減ると聞いたのですが、本当でしょうか?(2日目)

では、先週金曜日の続きです。

 

先週金曜日のブログはこちら

 

1年単位の変形労働時間制についての解説です。

 

2085時間を1年の中で自由に振り分けることができるのがメリットという説明をしました。

しかし、完全に自由というわけではなく、一定の制限があります。

それがこちらです。

 

① 休日が1週間に1日確保できること。

② 1日10時間・週52時間を超える勤務にしないこと。

③ 週48時間を超える週が3週間続かないこと。

④ 週48時間を超える週が3カ月に3回以内であること。

つまり、総枠として、労働者に厳しい制度であるため、それが行き過ぎないように、その振り分け方を制限しているという考え方です。

また、もう一点大きなことが、手続きとして労使協定を結ぶ必要があるからです。労使による書面での約束ですね。

その協定を結ぶ段階、つまりは、区切った1年が始まる前に、その後1年間の勤務スケジュールを決定しておく必要があります。

一般的な決まった曜日がお休みの業種なら、年間カレンダーを組めば事が足りますが、シフト勤務や交代制の勤務の場合でも、それぞれの期間の労働日数・労働時間数を定めておく必要があります。

 

このあたりから、なんか面倒くさくなってきたでしょうか?

 

ただ、2085時間は魅力的ですよ。

年間休日が120日の会社というのは多くありますよね?週休2日で余分な休みがないとこれくらいになります。お盆と正月しっかり休むと125日を超えてきます。

年間休日120日、1日8時間労働だとすると、年間何時間の労働になると思われますか?

1960時間です。120時間の余裕があるわけです。

いわば、月10時間の残業代削減になります。

 

先ほど、労使協定が必要だというお話をしましたが、その他にも就業規則への記載が必要です。かつ、それらを労働基準監督署へ提出する必要もあります。

手間はかかりますが、そのメリットは大きいといえます。

 

また、並行して進めるべき話が、『勤務しなくても賃金を減額されない勤務時間』です。

9時から18時までの勤務を、9時から19時までに延長します。

しかし、18時に帰ったとしても賃金減額もしなければ評価を悪くすることもしないとすれば、単に残業のカウント開始時間が19時になっただけです。それでも不利益と言えば不利益ですが、説明の仕方次第では十分に理解を得られる内容ではないでしょうか?

 

では、残業の話になりましたので、明日は、1年単位の変形労働時間制導入時の残業の考え方について解説してみましょう。

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2010年

9月

03日

『1年単位の変形労働時間制』を導入すると残業が減ると聞いたのですが、本当でしょうか?

【質問】

『1年単位の変形労働時間制』を導入すると残業が減ると聞いたのですが、本当でしょうか?

 

【回答】

1年単位の変形労働時間制を導入しても、総労働時間数が減らないのは当たり前です。しかし、所定労働時間数が増えることによって、残業とされる時間数が減ることにはなります。すなわち残業代も減るわけです。導入について、必要な手順があるとともに、所定労働時間数を増やす場合には、不利益変更に該当することになりますので、導入の際にはそのあたりもケアしてくださいね。

 

【解説】

1年単位の変形労働時間制をざっくり説明してみますと…。

『最大2085時間の労働時間を、一定の制限の中、1年間のカレンダーの中で自由に振り分けることができる制度』ということになります。

 

『1年を平均して週40時間を超えないように…』というのがベースです。

上記の2085時間という数字ですが、以下の算式により計算されます。

365日÷7日=52.142857週間

40時間×52.142857週間=2085.714285時間

つまり、1年間は何週間であるかを計算し、週40時間を乗じることで、年間何時間までなら、『1年を平均して週40時間を超えないように…』を守れるかというハードルを確認しているわけです。

細かく言えば、2085時間42分です…。

つまりは、2085時間42分までであれば、1年間のカレンダーの中にちりばめられていたとしても、1年を平均して週40時間を超えないという状況が出来上がるわけです。

 

ちなみに、この2085時間42分という時間数ですが、8時間で割り算しますと、260.71425日になります。

営業日260日、休日105日というのは、隔週土曜日出勤がほぼ可能な日数になります。

隔週土曜日出勤の会社では、1日の労働時間を7時間20分などに短くして、その分、土曜日に半日出勤してもらうような形態を採っている会社もありますが、こうして1年単位の変形労働時間制を導入すれば、1日8時間での隔週土曜日出勤も可能になるのです。

 

では、本当に好き勝手に振り分けて良いかというと、それは誤りであり、いくつかの制限があります。

 

1年単位の変形労働時間制は、1日では説明しづらいので、複数日にわたって解説しますね。

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2010年

8月

31日

社員が繁忙期に有給休暇の申請をしてきました。申請を拒否しても良いでしょうか?

【質問】

社員が繁忙期に有給休暇の申請をしてきました。申請を拒否しても良いでしょうか?

 

【回答】

拒否するのは微妙です。事情を説明して同意を得るのが無難でしょう。ただし、その社員が休暇取得することによって著しい損害が出ることが予測される場合は、拒否も可能です。

 

【解説】

有給休暇には、労働者が持つ『時季指定権』と、経営者が持つ『時季変更権』があります。

労働者が『○月○日に有給休暇を取得したい』というのが時季指定権です。それを、『その日はダメです。別の日にしてください。』と認めないのが時季変更権ということになります。

 

この経営者が持つ時季変更権を行使する際の条件が厳しいものがあります。『事業の正常な運営を妨げる場合』とだけ規定があり、具体的にどのようなことがあてはまるかは明確に示されていません。

 

少なくとも、代わりに勤務できるものがいる場合は、難しいといえます。恒常的な人員不足という理由で代わりの勤務者を確保するための努力をしなかった場合で、裁判で不当とされたケースもあり、派遣会社の利用などが強制されるかどうかというところもはっきりと区分けすることが難しい状態です。

※過去の裁判例で否認されたケースは、労組絡みで他の目的で時季変更権を行使している雰囲気があり、それは当然のような気がしますね。

 

時季変更権で、裁判までになるケースは考えにくいですが、あまり強行するのは、労使関係を悪くする可能性も高く、お勧めできません。

 

できれば、時季変更のお願いをして、納得・同意をしてもらって、申請しなおしてもらうくらいの流れが好ましいでしょう。

それでも固辞されたら、あきらめましょう。

結局、欠勤されたらどうしようもないわけですから…。

 

1賃金計算期間の取得日数を制限したり、連続取得日数を制限するのも、時季変更権の行使が認められる環境でなければ、合法とは言いづらいです。

 

ですから、ルールとして強行するのでなく、『お願いする』という表現で、『やむを得ない場合は業務の具体的対応を含めて経営者と相談の上取得する。』といった感じで定義しておくのが限界だと思います。

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2010年

8月

30日

労働者の人数が多くなると、産業医や衛生管理者が必要だと聞きましたが…。

【質問】

労働者の人数が増えてくると、産業医や衛生管理者が必要だと聞きましたが、どうなんですか?

 

【回答】

共に、1事業所(会社ではなく事業所単位です。)あたり50名を超えると、選任が必要です。

労働基準監督署の調査で、選任していない場合は必ず指摘されます。罰則等課された経験はありませんが、衛生管理者試験への申込を強制されたことが複数回あります…。

 

【解説】

産業医、衛生管理者、ともに事業所単位で50名を超えると選任義務が生じます。

 

・産業医

お医者さんにお願いすることになります。

ざっくりとした内容は、外部の健康相談窓口ということになるでしょうか?

月に1回は事業所を巡視(見回り)することになっています。

※しているかどうかはわかりません。いえ、法律ですからきっとしているはずです。

ほとんどの医師が資格を有しておられます。お知り合いがいればご相談、もちろん医師会でもご紹介いただけます。

費用は、規模・実態によるところがあり、2万円~数10万円までさまざまです。

 

・衛生管理者

その事業所に常時勤務する人でないといけません。

ざっくりとした内容は、内部の健康面の責任者兼窓口といったところでしょうか?

衛生管理者という資格であり、資格がなければすることはできませんので、調査等で指摘を受けた場合、受験することを強制されます。

試験は月1回ペースで実施されています。

監督官いわく、真面目に勉強してもらって何度も受けてもらえば必ず受かるとのことで、実際、調査対応で受けさせられた方は、2、3回で合格されました。

が、勉強せずに研修だけ受けて、帰りにちらっと試験して、そのままもらえると言った類の試験ではありません…。

 

選任状況ですが、両方とも、必須となっている事業所でも、選任されていないケースが多々見かけられます。

 

選任されているところに聞くと、『過去調査があって…』という話を聞きますから、多くはそういうことなんでしょう。

 

ただ、最近は、労働者が希望した場合の長時間労働時の産業医の面接指導が義務化され、実際に労働者が希望しなかったとしても、体制が整っていないことは、問題視されてしまいますね。

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2010年

8月

25日

解雇した社員から解雇理由通知書を求められました。そもそもどんな書類ですか?

【質問】

解雇した社員から、解雇理由通知書を求められました。そもそもどんな書類ですか?

 

【回答】

解雇理由通知書というのは、読んで字のごとく、解雇した理由を記載して本人に告げるものです。

労働者が希望する場合には、お渡ししなければならない書類です。

 

【解説】

労働者がこれを求めてくるいうことは、解雇に納得していなくて労働基準監督署に相談に行ったということが予測されます。

監督署は、決して労働者の一方的な味方ではありません。あくまでも労働基準法が遵守されるように監督している機関です。

相談に来た労働者に対して『解雇理由通知書をもらってきてください』とお願いするようです。それを見て、どういった解雇だったのかを判断するわけです。

 

※その時に、『解雇予告通知書はもらわれましたか?』という質問も、解雇予告手当の関係でされるようで、一緒に求められるケースが多いようです。解雇は30日前の予告が必要です。予告が遅れた、あるいはない場合は解雇予告手当が必要になりますので、その確認ですね。ただ、解雇予告は必ず書面でないといけないということもありませんので、落ち度があったと思ってもらう必要はありません。

 

※解雇予告手当については、原則として予告と同時に支払うことになっています。ですが、支払う日数を明確に通知してあれば、解雇日までに支払えば良いので、『何日後に解雇します。30日に満たない○日分については、解雇予告手当を支払います。』と伝えておけば良いわけです。

 

話を戻します。

この解雇理由通知書を見て、監督官があきらかに問題があると判断した場合は、労働基準監督署が注意・指導に動きます。

しかし、微妙なケースや、第三者的に解雇もやむなしと判断できるケースでは、監督署は動きません。厳密に言えば動けません。

ゆえに、この解雇理由通知書の書き方によって、その後の流れが変わっていくわけです。

もちろん、嘘を書いてはいけません。万一、その後さらに進んで、あっせん・労働審判・裁判などになった場合に、その通知書に嘘の内容があるとなると明らかに不利になります。

また、主観の入った人格否定は、労働者の感情を煽ることになり、次のステップに進む可能性を高めてしまいます。

 

ですから…。

事実である事象を列挙記載してください。

思い出せばたくさんあるはずです。解雇に至るまでの原因となった言動が…。

その人がどうこうではなく、その人の言動を説明してください。

そして『改善を求めたが、改善がない上、改善しようという動き・気持ちが感じられなかった。』最後に、『上記のような言動から、事業主の代理行為をお任せすることはできないと判断した。』と続けていけば、おおよその解雇の内容は、正しく伝わります。

 

感情や主観での人格否定が全面に出ると、監督署も正当な手続きが踏まれた解雇ではないのではと思いますし、その後のステップでも同様に受け取られます。

相手のことを思って理由を変えるのも、その後のステップに進んだ場合に不利が生じる可能性があります。あくまでも、事実である事象の列挙が基本です。

結局は主観を書いても、正当かどうかを判断するのは第三者なのですから。

 

また、上記のような流れが作れない解雇であれば、そもそもその解雇が正当だったのかということを考え直す必要が出てきます。主観・感情が入ったことを、お詫びしないといけないかもしれません。

 

解雇はないほうが良いに決まっています。ですが、雇用継続が両者にとって良くない結果につながるケースもあると思います。

戦いに時間を費やすのはもったいない話です。無用な争いを招く解雇理由通知書を作らないように気をつけてください。

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2010年

8月

24日

休憩時間は必ず取らせないといけませんか?

【質問】

休憩時間として、きっちり1時間を取ることを労働者が希望されていないのですが、それでも休憩時間を取らせないといけませんか?

 

【回答】

法的には、6時間超で45分、8時間超で60分、休憩時間を取らせなくてはいけません。監督署の調査の際にも、結構是正事項としてあげられる内容です。

なかなか、そううまくいかないケースもありますが…。

 

【解説】

法律が強制しているわけですから、希望するしないに関わらず、取らせないといけないというのが回答です。

 

ただ、休憩時間が長くなることは、拘束時間が長くなることにつながり、本人たちも希望しないケースがあります。

 

そもそも、工場労働者を想定して作られた労働基準法。確かに、流れ作業の工場労働者であれば、勤務時間中は同じペースで仕事が必ず流れてくるわけですから、休憩の重要性は間違いありません。

 

しかし、お客様、人を相手にする仕事だと、こちらのペースで仕事を進めるわけにはいきません。当然、時間帯による繁閑の差もあります。

待ち時間もあれば、トイレに行く時間、水分補給する時間もあるわけです。

労働時間でないことの定義として、何かあっても動かなくて良いという考え方があり、待ち時間は労働時間とされてしまいますが、本当の意味で8時間休憩なしで毎日働くことは、人間として不可能に近いことであり、何らかの休憩は取っているはずなのです。

※本当に8時間休憩なしで動かれている方、申し訳ありません。不可能に近いだけであり、そうした凄い方もいらっしゃるものと思います。

 

労働者本人が、拘束時間を短くしたいため、休憩を取りたくないというスタンスであり、経営者としてもそれを拒まないのであれば、希望に応じるために、そうした細切れの休憩もきっちり休憩として申告してもらう形を取ることしか、監督署に対する言い訳は成立しません。

 

法律のせいで、労使双方が希望しない形態になるのは、できれば避けたいですよね…。

 

もちろん、休憩時間をしっかり決めて、かつ休憩時間も賃金を支払うことにすれば、実際に働いていても、その分の賃金は支払えているので不払いが生じないという考え方もあります。

定額の時間外手当を導入して、今と変わらない賃金で労使双方が望む形も作れないことはないでしょう。

 

が、賃金を払うことと、休憩を取らせることは、あくまでも別問題と捉える考え方もありますので、なかなか悩ましいことです…。

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2010年

8月

19日

有給休暇の買い取りを求められました。禁止されていると聞いたことがあるのですが?

【質問】

有給休暇の買い取りを求められました。禁止されていると聞いたことがあるのですが?

 

【回答】

有給休暇の買い取りは、『有給休暇の取得を妨げるもの』として取り扱われ禁止されています。

ただし、時効により消滅してしまった分や、退職により消化できなくなってしまったものについては、『買い取り→違法』という取り扱いは受けません。

ただ、時効消滅時に買い取ってもらえるので、有給休暇を残しておこうというマインドが働くとすれば、積極的に採用するべきものではないということになります。

 

【解説】

昨日ツイッターで、今日のテーマについてつぶやいていただいたので解説します。

 

以前、このブログでも記載していますが、有給休暇の法律の趣旨は、『日々の業務を行うにあたって、ゆとりある職業生活を送るために、適度に有給休暇を取得し、リフレッシュしてまた仕事に励む』ためにあるというものです。

 

ですから、有給休暇の買い取りが前面に出てしまうと、お金を多く欲しい労働者も多いわけですから、有給休暇の買い取りを希望する者が増えて、法律の目的を果たせなくなってしまいます。

 

また、有給休暇の付与を好ましいと思わない経営者の方が、いえ、私のような社労士が、有給休暇の買い取りを前提とした賃金水準を決定したり、賞与の一部を有給休暇の買い取り分として定義したりして、そもそもの制度自体を破たんさせてしまう可能性があります。

 

買い取り禁止は労働者にとって不都合に感じるかもしれませんが、上記のような対策を封じ込めるためのものでもあるのです。

 

回答で触れましたが、時効消滅分・退職時未消化分については、『買い取っても良い』というような見解がなされています。

が、これも積極的に行えば、有給休暇の取得を妨げるものになりかねませんし、退職金の上乗せ部分を買い取り分に定義して、実質制度破綻という状況も作りえることになります。

おそらく、一応上記のような見解はあるものの、制度破綻を目的とした悪質な時効消滅時買い取り・退職時買い取りは、トラブルになっていざ裁判となるとどう転ぶかわかりませんし、そもそもあまり推奨されるものではありませんね。

 

またあくまでも、『買い取っても良い』だけですので、買い取らないことも自由です。しかし、『禁止されているから』という理由は通用しません。

少しインターネットで調べれば答えが見つかるこの時代ですから、明確に『うちは買い取りはしない』、『退職金の上乗せは残存有給休暇を考慮して決定している』といった明確な説明をしてあげてください。

時効消滅分・退職時見消化分の買い取りも義務ではないので、堂々と対処してあげてください。

 

参考ブログ記事として、

『退職する際に残っている有給休暇を請求されましたが…』です。

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2010年

8月

18日

健康診断を受けたがらない社員がいます。強制して良いでしょうか?

【質問】

健康診断を受けたがらない社員がいます。強制して良いでしょうか?

 

【回答】

労働安全衛生法に、明確に事業主の義務として、定期健康診断を受けさせることが記載されています。

また、その結果・記録についても保存義務があります。

また、労働契約法により、安全配慮義務、すなわち労働者が健康に安全に働けるように配慮する義務も事業主に課せられています。

健康診断は、その判断基準ともなりえます。

『強制して良い?』ではなく、『強制しなければならない』ものです。

 

【解説】

・健康診断を受けて結果を見ると病気になりそう…。

・体重を知られたくない。

・仕事が忙しくて受けにいけない。

など、理由はいろいろですが、健康診断を受けたがらない社員は少なからずいます。しかし、前出の通り、正社員の労働時間の3/4以上働く者については、健康診断を受けさせることが義務なわけです。

監督署の調査の際に、(経営者が)思っている以上にチェックされるのが、この健康診断の記録の保存義務です。

受けさせるだけで、記録を保存していなければ、それもまた指導の対象になります。

 

過去、全員が受けるまで、一人一人名簿を消していって改善報告書を出した記憶もあります…。

 

体重を知られたくないといった内容であれば、一旦本人に結果を通知してもらって、そこだけ切るなり塗るなりして提出してもらうなど、最終的には、全員分を揃えておくことがルールです。

 

なお、その費用についてですが、明確な定めがあるわけではありませんが、法律上、受けさせる義務がある以上、事業主に負担義務があると一般的には理解されています。

また、受診する時間についても、同様の理由で、労働時間として取り扱うべきであるというのが一般的です。

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2010年

8月

17日

36協定って出したほうが良いですか?他所はどうしてられます?

【質問】

36協定って出したほうが良いですか?他所はどうしてられます?

 

【回答】

出さなくて良いとは答えられませんね?

 

出さないといけません。

実態はというと、中小企業、特に従業員数10名未満の事業所だとほとんど出していらっしゃらないかもしれませんね。

 

ただ、出して邪魔になるものではないので、出しておきましょう。

監督署のスタンスとしては、出してないより出して守れてないほうがかわいげがあるとかないとか…。

 

【解説】

36協定というのは、『時間外・休日労働に関する協定』のことです。

実は、これがないと、1日8時間、週40時間を超えて労働させてはいけないんです。

一応、『6カ月以下の懲役、または30万円未満の罰金』という罰則までちゃんとあります。

内容は、時間外・休日労働が発生する場合の理由や、1日・1カ月・1年などの期間ごとに時間外労働をしても良い時間数や、休日労働をしても良い日数などを定めます。

それに労使が了解をして成立するわけです。

実態は、そんなものがあろうがなかろうが、残業・休日出勤をしてしまわれるのでしょうが、本当は、『絶対』36協定がないとしてはいけませんし、違法となります。

 

経営者が36協定を嫌がるケースというのは、そうした協定の際に、寝た子を起こして、残業が多いだとかそういう話になるのを避けたい気持ちからのようです。

 

あるいは、時間外手当を払っていないとか…。

 

確かに耳の痛い話かもしれませんが、調査で指摘を受け、複数回提出出来なかった場合に、書類送検に至ったケースもあります。

 

また、労働者の誤解として、『記載された時間数・日数の、時間外・休日労働を強制される』と誤解しているケースもあるようです。

 

きっちり説明して、できれば…。

いえ、必ず締結して提出しておきましょう。

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2010年

8月

16日

中退共に加入しています。退職金規程を作ったほうが良いでしょうか?

【質問】

中退共に加入しています。退職金規程を作ったほうが良いでしょうか?

 

【回答】

中退共であれば、退職金は退職労働者へ直接支払われます。

せっかく毎月の掛け金を拠出しているわけですし、隠していても、事業主の手元に返ってくることはありませんから、堂々と規程を作ってください。

逆に言えば、『中退共=退職金』だと経営者が思っていても、明確な定義がなければ、通用しません。

支給基準や金額算定根拠が明確でなければ、退職金制度としては不完全です。中退共はあくまでも準備手段です。そのほかに退職金が支払われるケースも多数あります。

 

【解説】

『中退共=退職金』というスタイルの退職金制度を、中小企業ではよく見かけます。いわゆる、『中退共まる投げ』というスタイルです。

あるいは、経営者としては、余裕があれば追加してあげたいし、実際に追加しているが、先のことはわからないので、そこは約束したくないというスタンスです。

こうしたケースで、あえて退職金制度を作らずに運用されているケースを見かけます。

先日のブログで、支給実績が期待権・慣例という形で思いの他、その後の退職金支給に影響を与えることはご説明しましたが、やはり基本となるのは、退職金規程です。

期待権・慣例という部分に影響を受けたくなければないだけ、つまり、前述のような、『先のことはわからないので、そこは約束したくない』という状況であれば、その点も明確に退職金規程で定義しておいてあげる必要があります。

 

一旦事業主へ支払われる退職金準備制度ならまだしも、中退共など退職労働者へ直接支払われる退職金制度を規程化しておかないメリットはどこにもありません。

 

退職金支給は義務ではありません。経営者の思いを自由に表現して良いものです。もし、そのような状況があれば、ありのまま、思うのままを制度にしておくことをお勧めします。

 

どうせ、減額や不支給はできない(しても事業主には返らない)わけですから、追加支給はあくまでも追加支給という定義を明確にすることのほうが大事だと思います。

 

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2010年

8月

12日

退職金って絶対に払わないといけないのでしょうか?

【質問】

退職金って絶対に払わないといけないのでしょうか?

 

【回答】

まず、そもそも退職金というものは、法的に支給義務はありません。

しかし、就業規則等で、明確に『払う』としていれば、それはすでに賃金扱いとなりますので、絶対に払わないといけません。通常の賃金と同様の扱いです。

また、逆に『払わない』としていれば、払う義務はありません。

これが原則です。

 

就業規則がない、明確な定めがないような場合では、基本的には払う義務は生じません。

しかし、過去の支給実績から、定めこそないが、定めがないだけでルール化されてしまっているような場合には、期待権(もらえるだろうという期待)が存在することになり、支給義務が生じてしまいます。

なお、期待権の考え方は、就業規則に『払わない』と定義していている場合でも起こりうるものです。

 

【解説】

まとめると以下の2つが判断材料です。

①就業規則や雇用契約書がどうなっているか?

②過去の支給実績がどうなっているか?

 

①は契約の内容ですから、例えば、『退職金が有る・○○円です。』と記載があって、実際は払わないとなると、完全に契約不履行ですし、そもそも『退職金がない』と記載されていれば雇用契約が成立しなかった可能性も出てきます。

そうした意味で①で払うとなっていれば、まず支払い確定ですね。

 

次に、①で『払うとなっていない』、つまり、『払わない』とされていたり、そもそも就業規則や雇用契約書がないケースでは、②の過去の支給実績を見るわけです。

いくら『払わない』と定義してあっても、過去の支給実績を見ると、5年以上勤務して退職した人のほとんどに支給されているような実績があれば、労働者としても、私も5年以上働いて辞めるのでもらえるに違いないと期待してしまうような環境があれば、そこに支給義務が生じてしまうわけです。

逆にいえば、今まで支払ってきたのに、今回支給しないことへの合理的な理由が必要になるわけです。

 

期待権が発生するのは、どの程度の退職金支給実態があればというものが明確にあるわけではないので難しいところですが、払ってきた人たちと今回払わない人との違いを説明できるのであれば問題ないでしょう。

あるいは、過去において、払ってきた人たちと払ってこなかった人たちに明確な違いがないとすれば、ルールではなくその時々の状況で支払ってきたということの証明にもなります。

今回の対象者が、払ってきた人たちとの違いがなく、払ってこなかった人たちと違いがあるようなケースでは、期待権を考慮してあげないとトラブルになる可能性があります。

 

過去に比べて減額したり、支給しなかったりするケースでは、下記のような説明をしてあげるほうが良いでしょう。

※これでセーフというわけでもありませんが…。

 

『過去、退職金を支給していた時期もあったが、本来は退職金制度もなく、労働条件のひとつというよりは、気持ちで払っていたものなんです。今回も同様の気持ちなのですが、経営状態も芳しくなく、正直なところお支払いすることができません。感謝の気持ちがないわけではありませんので、ほんとうに心ばかりのお礼だけをお渡しします。現状をご理解いただけるよう願います。』

※少額の商品券等をお渡しするなど、本当にお礼程度のものでも渡せれば…。

 

日頃の関係が悪かったり、トラブルで退職するケースでなければ、このスタンスで説明されて、『それはおかしい!』と異を唱えられるケースは少ないはずです。

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2010年

8月

10日

シフト制で勤務してもらっているのですが、月給制の正社員の労働時間数が少ないように思います。どうしたら良いでしょう?

【質問】

シフト制で勤務してもらっているのですが、月給制の正社員の労働時間数が少ないように思います。どうしたら良いでしょう?

 

【回答】

月給の対象労働時間数は明確ですか?もし明確でなければ定める必要があります。

 

また、正社員の勤務からシフトを埋めてもらっていますか?パートタイマーの希望の勤務を優先して残りを正社員が埋めるというスタイルを採っているケースが結構見かけられます。適切な人員であればこれでも問題ありませんが、余剰人員がいると、数えてみると正社員の勤務時間数が少なくなっている可能性があります。

(逆に多いケースも考えられます。)

 

毎月のシフト上の勤務時間数を報告してもらうなり、ときどきチェックを入れるなど、シフト作成を任せきりにしないようにしましょう。

(上記のような質問をしないならかまいませんが…。)

 

【解説】

(1)月給の対象労働時間数は明確ですか?

思った以上にこれが不明確なケースがあります。

一般的な週休2日1日8時間なら、勤務すべき時間数は明確です。『月給=所定労働時間の労働の対価』というのも普通に成立します。

(もちろん、別途定めていただくことはよりベターだと思います。)

しかし、シフト制の勤務では、そもそもの勤務すべき時間をシフト作成によって決定しますので、月給の対象労働時間数が曖昧だと、シフト作成者も何を基準にして作って良いのかわからなくなります。

ただし、時間・日数・曜日の不公平是正…などと多くルールを作ってしまうと、作成がかなり困難になってしまいます。

最低、労働時間数だけは定めておいて、できるだけ少ないルールにしてあげることがベターだと思います。

 

(2)シフトを埋める順番

パートタイマーのほうが、時間に融通が利かなく、さらに労働時間数が少なくなると収入が減るという性質があるので、労働者寄りのスタッフがシフト作成していると、悪気なく、善意でパートタイマーのシフトから埋めていくケースが見られます。

 

パートタイマーにとってはありがたい話ですが、経営者としては本来調整弁として機能するはずのパートタイマーの勤務が固定化すると、パートタイマーにしている意味もなくなります。

まずは正社員の労働時間数を確保し、その余ったところにパートタイマーの勤務を入れてもらわないと、例えばお盆・正月・GWなど休みが多い月に正社員の勤務時間が驚くほど少なくなるケースがあります。

 

もちろん、パートタイマーとの雇用契約上のおおよその週所定労働時間数の約束(週20時間~25時間程度など)があると思いますので、それは守ってあげるにしても、正社員の労働時間数を減らす理由はないはずです。

 

・シフトを埋めるのは正社員から。

この原則を守ってもらえば、質問のような話は出てこないはずです。

 

後は、先ほども書きましたが、たまにはチェックしてあげてください。チェックしていない中で、労働者が楽をしようとしてしまうのは、チェックしないほうの責任でもあると思いますよ。

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2010年

8月

09日

日曜日に働いてもらうと1.35倍の賃金を必ず払わないといけないのでしょうか?

【質問】

日曜日に働いてもらうと1.35倍の賃金を必ず払わないといけないのでしょうか?

 

【回答】

1.35倍というのは、休日の割増賃金になります。ここで言う休日とは、法定休日と呼ばれるものです。

労働基準法により、1週1日の休日を与えることが義務付けられています。この1週1日の休日が法定休日です。

ですから、この法定休日に働いてもらう場合は、1.35倍の賃金が必要ですが、世間一般の休日、日曜日や祝日に働いてもらう場合に必要なわけではありません。

※ただし、働いてもらう人材を確保するべく、幾分かを上乗せして支給しているケースは多く見られます。

 

【解説】

ほとんど回答で解説してしまった気がしますが、世間一般の休日は関係ないということです。

もともと、日曜日や祝日が勤務すべき日で、1週1日の休日が別で確保されていれば、休日割増賃金は必要ありません。

さらに、日曜日や祝日が勤務すべき日で、それを含めて1日8時間週40時間の範囲内であれば、1.25倍の時間外割増賃金も必要ありません。

これは、変形労働時間制の適用に関係なくそうなります。

 

ただ実際には、土曜・日曜休みの会社で、どちらか片方だけ勤務しても1.35倍で支払われるケースや、日曜日だけを勤務した場合でも1.35倍で支払われるケースなど、様々なケースを見かけます。

あと、時間給のパートタイマーで、土曜・日曜だけ時間給が高いケースなどもよくあります。

これらは、それぞれの会社の独自のルールであり、法律の定めにより絶対的に必要とされているものではありません。

定義の仕方によっては支払う義務がないケースも多々あります。

 

すでに、1.35倍で運用されているものを無くすのは難しいかもしれません。

しかし、世間の休日に働いてくれる人を確保できる環境で、これから定めるような場合は、『世間の休日だから1.35倍』ということではなく、『1日8時間週40時間を超えたので1.25倍』『1週1日の休日を確保できなかった日なので1.35倍』という考え方で定義したいものです。

 

ちなみに深夜割増については、所定労働時間内の労働であっても、深夜時間帯(22時~5時)であれば割増が必要です。ご参考まで。

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2010年

8月

05日

タイムカード打刻後の始業時刻前の時間は労働時間になりますか?

【質問】

当社の社員が始業時刻よりも早い時間に出勤をしてきてタイムカードを打刻しています。残業の場合と同じように、早く出てきた分もタイムカード通りに労働時間となってしまうのでしょうか?

 

【回答】

始業時刻については、終業時刻・残業ほど、タイムカード通りにという取り扱いにはなりません。が、あくまでも労働をしているなら、当然に労働時間ですから、残業代の対象になる労働です。

タイムカードが絶対ではなく、あくまでも労働をしていたかどうかが絶対であり、第三者的な判断を行う際の代表的かつ信頼性の高いものとしてタイムカードがあるという理解が正しいかと思います。

 

【解説】

とある事業所で、『始業時刻前だから残業代が要らないというわけではありませんよ。』と説明した3日後、事業所から『始業時刻前にタイムカードの前に行列ができるがどうすれば良い?』という質問が来て、説明不足をお詫びしたことがあります。

タイムカードの設置場所によっては、始業時刻に業務が開始できるように、始業時刻の十数分前に出勤するのは社会人としての常識と言えます。

ですから、十数分前に打刻してあるから、それが全て労働時間と言ってしまえば、残業を防ごうと思うと、前出のような行列ができてしまうわけです。

 

また最近は、朝を有効利用しようという流行りもあり、早朝に出勤するケースも多く見られます。

この場合、その時間に労働をしているのか、違うことをしているのかというところで、労働時間とされるのかどうかが変わってきます。

残されて業務をしているのと、自分から早朝に出てきて仕事をしているのでは、残業代を請求される可能性、訴えられる可能性は違いますが、あくまでも朝だからではなく、仕事をしているのかどうかが判断基準になります。

 

ということで、労働をしているなら労働時間になるが、単に始業開始時刻に業務を開始するためにその準備に出社しているのであれば、それが社会通念上相当な分数であれば、労働時間としなくとも問題は生じません。

※ただし、始業時刻に関係なく、タイムカードの打刻直後から業務を開始する場合は、当然に労働時間になります。拡大解釈にならないよう、実際の判断は実態に応じて専門家に確認ください。

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2010年

8月

04日

出勤してくるが、調子が悪いらしく業務になっていない。どうすれば良いでしょう?

【質問】

出勤してくるが、調子が悪いらしく業務になっていない従業員がいます。どうすれば良いでしょう?

 

【回答】

労務の提供ができない状況というのは、雇用契約における債務不履行です。事業主の代理行為をお任せできる状態にありませんし、労働者の心身の安全という意味での安全配慮義務の問題もあります。

強固に出勤停止・休職を強要すると、休業補償の問題などでトラブルになるケースも考えられます。

上記のスタンスで、医師の診断書を求めたり、説得するなどして、納得してお休みしてもらえる状況を作りましょう。

 

【解説】

回答のところにも書きましたが、以下のスタンスを基本にして対応しましょう。

 

・労務の提供ができない状況は、雇用契約における債務不履行。(ノーワークノーペイ)

・労働者は事業主の代理行為(労働者の行為は事業主の行為として責任は事業主が全面的に負う)を行っている。

・事業主には労働者が心身共に健康に働けるように安全配慮する義務がある。

 

これらを考えると、質問のようなケースでは、とても業務をしてもらえる状況ではありません。

まずは、安全配慮義務の観点から、労働者の体調を心配して説得からでしょう。

それでもダメなら、体調を心配するがゆえに休ませるようにするべく、代理行為の話をしていくことになるでしょう。

 

この段階で、休職命令まではいくでしょう。

 

後は、無理して出てきていること自体、給与のためなのであれば、傷病手当金等を請求できる立場であれば、その説明をしてあげれば良いでしょう。

 

ただ、そうした補填がなければ、場合によっては、働けるのに経営者の都合で休まされると休業補償の話をされる可能性があります。

 

そうならないように温和に話を進めることが大前提ですが、代理行為の観点からも、安全配慮義務の観点からも、経営者の指定する医師の診断を受けてもらったり、診断書の提出を求めることは問題ありません。

 

その上で、経営者の都合なのか、労務の提供ができない(債務不履行)のか、明確にして対応していくことになります。

 

実際の質問では、妊娠中の女性でした。

軽微な業務への配置転換の義務はありますが、妊娠中の女性でも対応は基本的に変わりません。(質問のケースは、ほぼ寝ているとのことで、軽微な業務うんぬんのレベルではありませんでした。)

逆に言えば、お腹の赤ちゃんのことを考えれば、より体調を大切にする必要があります。

何も、辞めさせたり、ひどいことをするわけではありません。

 

本人の体調と経営者の業務上の責任を考えて、適切な対応を、正しいスタンスで対応すれば、大きな問題にならないはずです。

 

『寝ているだけなら、来る必要がないだろう!給料泥棒!』

こんな風に対応すれば、まず100%トラブルですよね。

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2010年

7月

29日

移動時間は労働時間なんでしょうか?

【質問】

移動時間は労働時間なんでしょうか?

 

【回答】

単純に、単に移動のみが目的であり、拘束はされているが、寝ようが本を読もうが自由な場合は、労働時間とされないという判例があります。

いわば、休憩時間のような取り扱いです。ですから、労働時間ではないというのが一つの回答ではありますが、普段の業務で、得意先から得意先を回っていくようなケースでその移動が労働時間ではなく、実際に商談等の時間のみが労働時間という見解が成立しているわけではないので注意ください。

 

【解説】

出張先から出張先への移動などを想定した『移動』については、労働時間ではないという判例が存在しています。

ただし、その移動が、ついでとは言いづらい物品の運搬といった業務を兼ねていないことが条件になります。

 

では、『普通に10時に1軒目の得意先に訪問して、次の得意先に1時間をかけて移動した場合、その1時間も労働時間ではないのか?』ということになると、移動だから労働時間ではないと片づけることはできません。

 

それを認めてしまうと、移動に片道2時間かかって1時間の仕事をするケースを、5時間ではなく1時間の労働としてしまうことになります。

 

出張・移動・通勤の3つの切り分けが明確でないため、そのような微妙な状況がうまれるわけです。

 

このあたりになると、いわゆる『社会通念上』というものが出てくるわけです。

 

通常の労働時間内に移動があったとしても、それを労働時間とはみなさず、その日の残業時間までを含めて8時間を超えた場合にしか残業代を支払わないというのは、危険極まりないでしょう。

 

逆に、出張先から出張先へ移動する場合で、業務終了後、翌日のために移動するようなケースで、その移動時間まで労働時間として残業代を払うというのもおかしい話です。

 

明快な定義がないからこそ、労働時間とされる可能性がある部分については、きっちりとケアされておくことをお勧めいたします。

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2010年

7月

28日

社員が延着証明を持ってきました。賃金控除してはいけませんか?

【質問】

社員が延着証明を持ってきました。賃金控除してはいけませんか?

 

【回答】

ノーワークノーペイの原則通り賃金控除してもかまいません。逆にしなくてもかまいません。

 

【解説】

延着証明が、水戸黄門の印籠のごとく、遅刻の正当性を主張するもののように思っている労働者もいます。

 

『ただ、どれくらい遅れたのでしょう?』

 

大原則は、ノーワークノーペイですから払う必要はありません。交通機関のトラブルを経営者が補てんする必要はないからです。

しかし、月給制の社員の場合、それもかわいそうかなと延着証明により賃金を控除しない会社も少なくないです。

 

そこで先ほどの質問です。

 

いつも2分前に走りこんでくる人は10分電車が遅れれば遅刻です。

しかし、いつも15分前に着いている人は10分電車が遅れても間に合います。

これをどう考えるかです。

 

労働基準法は、炭鉱等の坑内労働者を想定して、業務に必要な着替えや現場までの移動時間は労働時間とみなしています。

しかし、現代で言えば、そのような時間を要する人はほとんどいらっしゃらないでしょう。

社会人の常識として、始業時刻には業務が開始できるように準備を整えておくのが基本でしょう。

また、業務を定刻に始めることは基礎中の基礎であり、交通機関の遅れが生じる可能性は、常にあるわけですから、少し余裕を見て出勤するのも常識と言えます。

 

そう考えたときに、いつも2分前に走りこんでくる人が10分電車が遅れたということで遅刻扱いしないということが果たして正しいかどうかです。

 

これは、経営者がどう考えるかですから、対応はおまかせします。

そもそも、遅刻自体、かまわないという経営者の方もいらっしゃるはずです。

 

・賃金控除する?しない?

・評価項目とする?しない?(マイナス査定する?しない?)

 

これらを組み合わせて、経営者の考えに合う形を選択してください。

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2010年

7月

28日

社員の一人がどうしても会社指定の銀行で給与振込用の口座を作ってくれません。

【質問】

社員の一人がどうしても会社指定の銀行で給与振込用の口座を作ってくれません。強制しても良いものでしょうか?

 

【回答】

賃金支払い5原則のひとつ、通貨払いの原則から、原則は現金渡しだったりします。給与振込は、同意を得た上で本人が指定する口座でなければなりません。

従って強制することはできません。

ただ、振込手数料の関係もあります。強制せずに、うまく同意を得られるように、会社の希望する銀行・支店の口座を指定してもらえるようにお願いしてみましょう。

『お願い』も本来微妙なんですが最終的に気持ちよく同意してもらえれば大きな問題にはならないでしょう。

 

【解説】

賃金支払い5原則というものが、労働基準法で定められています。

直接・通貨で・全額を・月に1度以上・定期的に支払うことになっています。

この通貨払いに、会社指定の銀行・支店で口座作成を強制することが違反になります。

ごく当たり前に、強制している会社を見かけます。入社直後に口座作成をお願いする事が多いため、逆らわずに作成してくれるケースがほとんどです。

ここを退職時にむしかえすケースはほとんど見られませんが、この質問のように拒否をされてそれを押し切ると、労働基準法に詳しい労働者だとトラブルになることも出てきます。

銀行が手数料をしっかりと取る時代です。メインバンクへ給与を移すことの面倒さや手数料を考えて、拒否する労働者もいて不思議ではありません。

あくまでもお願いまでに止めてください。

 

なお、当然、現金で渡すことは全く問題ありません。というか、それが原則です。

ただし、受け取りについては、受け取り確認印など、後でもらったもらっていないでトラブルにならないようにしておく必要があります。

 

過去、退職金をもらったもらっていないでトラブルになったケースもあります。

特に金額が大きい場合は、振込で第三者的な証拠が残るような取り扱いをしておくことも大切です。

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2010年

7月

27日

試用期間中の社員ですが、どうも期待外れです。解雇できるでしょうか?

【質問】

試用期間中の社員ですが、どうも期待外れです。解雇できるでしょうか?

 

【回答】

試用期間中であるからと言って、自由に解雇できるわけではありません。しかし、本採用後に解雇する場合よりもハードルは低いです。

中途採用で一定レベル以上の能力を想定して採用しているのか、新卒同様の状態で採用しているのかという違いもありますが、試用期間中か否かで解雇のハードルが変わる以上、再度面談等を行って、必要であれば試用期間の延長も含めてしっかりと話し合ってみましょう。

 

【解説】

まず試用期間の長さですが、現行法では定めはありません。しかし、労働契約法制定の際に噂になったのは、最長6カ月という内容でした。

ハローワークのトライアル雇用制度が3ヶ月まで助成対象であり、6カ月だと一般的には長すぎる印象があるので、一般的には3ヶ月、最長6カ月くらいだと思っておいて問題ないでしょう。

 

次に、解雇(本採用否認)のハードルですが次の段階で上って行きます。

①試用期間(14日間まで)…解雇予告不要

②試用期間(15日以降定められた期間まで)

③本採用後

 

労働基準法も雇用のミスマッチを想定しており(たぶん…)、14日間までは解雇予告なしで解雇できるという定義にしています。

本当に合わないのであれば、早期に退職するほうが、お互いにとって幸せなはずです。ただ、だからと言って好き嫌いで解雇できないことはご理解ください。

 

次の段階は、事業所ごとに就業規則等で定めている試用期間満了までです。

一定期間雇用してからの判断ですから、当然、14日の時点よりはハードルは高くなります。

何より大切なのは、試用期間満了で本採用しない可能性がある社員に対して、14日間の時点や、途中のどこかで、本採用しない可能性があると判断している理由を説明して、改善を求めておくことです。

本当に本採用しないことが濃厚であれば、試用期間満了の1カ月前に、解雇予告を行って、解雇予告撤回の条件も説明しておけば良いでしょう。

 

問題点を言わずにためておいて、解雇の際に並びあげて解雇の正当性を主張するケースが見られますが、それだと解雇するために雇用しているようです。

問題点を指摘して、改善を求める期間を与えて、それでも改善しないので、やむなく解雇ということでないと、いくら試用期間と言えども不当解雇とされる可能性があります。

 

また、前述の『一定レベル以上の処遇により、相応のレベルの能力を期待して』採用しているケースでは、試用期間中の解雇が認められやすい状況にあります。

 

新卒レベルだと教育することも事業主の責務になりますが、そうしたヘッドハンティング的な採用では、高い能力を持っていることが前提で採用していますので、通常の採用の場合とは、やはり異なります。

 

いずれにしても、試用期間は制度として存在していても、機能していなければないものと同じです。

面接・採用時に何の話もなく、過去何十人もが試用期間満了時に何の話もなく本採用に移行しているのに、突然試用期間満了で本採用否認と言っても、それは労働者としてはびっくりです。

 

試用期間を機能させていることを説明する事で、労働者も不安に感じるかもしれませんが、あらゆる制度に言えることですが、伝えてナンボです。

 

きっちりと、面接時・採用時に説明をしておきましょう。

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2010年

7月

23日

退職の申出を3カ月前までに言うようにというのはダメなんでしょうか?

【質問】

退職の申出を3ヶ月前までに言うようにというのはダメなんでしょうか?

 

【回答】

お願いでしたら問題ありませんが、退職の申出から3ヶ月後以降の退職日しか認めないのは許されません。

 

【解説】

期間の定めのない雇用契約は、解約の申出から14日で消滅すると民法に定めがあります。従って、労働者が強固に14日後の退職を希望した場合は、それ以上の勤務を強制することはできません。

 

ただし、お願いすることは自由です。

 

就業規則に、『退職の申出は3ヶ月前までに申し出るように努めること。』というように定めることは自由なわけです。

しかし、『退職日は退職の申出の日から3ヶ月後の日以降で会社が定めた日とする。』と定めることは違法です。

 

つまり、就業規則でお願い規定・努力規定的に定めても、本人が希望すれば14日後の退職は認めざるを得ないわけです。

 

後は、実際に3ヶ月前に申し出てもらえるかは、普段の経営者の言動次第です。

退職を申し出た者に対して、賞与を減額する、有給休暇を取らせないなど風当たりがきついようなケースでは、当然ギリギリまで退職を申し出ないでしょう。

 

早い時期での退職の申出を期待するのであれば、退職を申し出た者を大切に扱うのが、最も効果的です。

 

経営者が労働者に対して行ったことは、直接受けた本人だけではなく、周囲も見ています。

 

手厚い措置をすれば自分も手厚くしてもらえると思い、手厳しい措置をすれば自分もそうされると思うわけです。このあたりも考えて行動することが大切ですね。

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2010年

7月

20日

裁判員制度の裁判員に選ばれたことによる欠勤は有給?無給?

【質問】

社員が裁判員制度の裁判員に選ばれました。結果的に5日間仕事を休んだのですが、これはどのように取り扱えば良いのでしょうか?

 

【回答】

裁判員としての職務をおこなうことを禁じることはできませんが、それによって休んだ日を有給にするか、無給にするかは自由です。

 

【解説】

回答の通り、現状では法的な拘束はありません。

無給として、有給休暇を申請してもらうことも何の問題もありません。

もちろん、有給として、出勤したものとして取り扱うことも問題ありません。

裁判員候補者の段階で最高8,000円、裁判員になると最高10,000円の日当が支給されます。

ただし、これは、普段の給与とは全く関係なく、全員均等に支払われるものです。

人によっては、普段より多くなることもあるし、少なくなることもあると思われます。

ただ、経営者としては、実際に勤務してもらえなかったわけですから、替わりの人間に働いてもらったり、他の日の残業が増える可能性が高いため、無条件に勤務したものとみなすというわけにはいかないと思います。

 

これもまた自由なだけに、決めづらく、処理に困る内容です。

 

日当が出ますから、原則は無給とし、有給休暇を取得してもらうのが妥当なラインと思われ、実際の運用も同様にされているケースが多いように思います。

その場合、有給休暇の残日数が少ない者、発生していない者の取扱いをどうするかという悩みも浮上します。

そこに救済措置を作るか、それは仕方ないこととあきらめてもらうかも、これまた自由なわけです。

 

アドバイスを求められた場合は、有給休暇の取得状況もお聞きして検討してもらうようにお願いしています。

当たり前に全員が完全消化に近い状態になっている事業所では、無給にして有給休暇を取得するようにお願いするとブーイングが起こりかねません。

消化率が低い事業所ではさしたる問題にならないでしょう。

 

その他、前更新時に時効で消えた分があればそれを使って良いような特別な措置や、新規発生分から使用するルールになっている事業所で繰り越し分を使って良いようにするなど、中間措置も含めて、不満につながらない程度に、事業所として有利な措置を決めてもらうというのが、ベストではないでしょうか?

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2010年

7月

05日

残業を減らす手段(実労働時間数を減らす)①

残業を減らす手段は2つあります。

 

ひとつは、実際の労働時間数を減らすこと。

 

もうひとつは、所定労働時間を増やすこと。

 

後者はテクニック的な話になります。

明日以降にご紹介するとして、そもそも、実際の労働時間を減らすことを会社として取り組むことにより、テクニック的な手段への同意も現実的になります。

 

単なる制度変更だけなら、労働者としてはうまくやられた感、不満感が残ってしまいます。

 

労働者にもメリットのある、実労働時間数の減少を一緒に実現してこそ、労働者の協力が得られ、全体的な時間外労働の削減が達成可能になります。

 

(1)価値観をぶち壊す。残業=美

『労働時間が長い→頑張っている』こんな方程式が成立していませんか?

もちろん、一定範囲成立している方程式です。

しかも、とてもわかりやすい評価基準です。

 

ただ…。

本当にそうでしょうか?

『成績や仕事の内容がいまひとつ→なのに早く帰って不届きもの』

『成績や仕事の内容がいまひとつ→でもまあ遅くまで頑張っているから』

こんな感覚はありませんか?

 

真面目に仕事に取り組んでいるかどうか?

手抜きをしているかどうか?

 

これらに、労働時間数の長さは関係するかもしれませんが、全てではありません。

 

実際に大事なのはその中身です。

 

ただ、中身をしっかりと評価していくのは大変です。

労働時間を目安にして評価したほうが楽です。

 

しかし、労働時間を目安にして評価しているうちは、残業は絶対に減りません。

 

早く帰ろうが、遅く帰ろうが、その仕事の中身や結果をしっかりと評価している事が伝われば、帰ることができる社員は帰るようになります。

 

そのためにも、社長(評価者)は仕事が終わったら早く帰ってください。

 

無駄に残っていても誰も見ていないというメッセージになります。

 

社長(評価者)が、帰る人間に、『もう帰るのか?』などと嫌味を言っている会社であれば、それだけで格段に残業が減るはずです。

 

(2)価値観をぶち壊す。 残業→1.25倍

今、残業をさせても、残業代を支払っていない経営者には、おそらく、残業によって費用が発生しているという考えはないでしょう。

 

しかし、その多くの場合は、経費が発生しているのです。

不払い残業代という債務が…。

 

疲れてきた時間帯の時給が1.25倍になる。

本来ありえない話です。

 

効率を考えれば、時間外が発生しないように、1.25倍の支払いが極力起きないように雇用するのが正解なわけです。

 

しかし、正社員には無理をさせても良い、だからこそ正社員なんだというような概念が、中小企業には存在しています。

 

今払う、払わないは別として、残業をさせれば残業代が発生している、しかもそれは1.25倍。

 

この考えを再度、強く認識することで、経営者として、残業を減らそうという思いが強く、本気になるはずです。

 

 

価値観だけでかなり長くなったので今日はここまでにしてテーマに①をつけておきますね…。

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2010年

7月

01日

研修費用を返還させることはできるか?

経営者が行うべき重要な仕事のひとつが、従業員の教育です。

 

1人前に仕事をしてもらえるようになるために、さらに上のレベルの仕事をしてもらえるようになるために、大切なことです。

 

こうした教育は、OJTで行われる時もあれば、外部研修という形で行われることもあります。

 

今日は、この外部研修についてのお話です。

 

ある社員が入社しました。

社長としてはすごく期待をしていたので、いろいろと外部研修を受けてもらいました。中には高額のものもありましたが、これからを担ってくれる逸材ということで期待をして受けさせました。

 

ところが…。

 

入社して6ヶ月程度たったある日、ちょうど研修も一通り終えて、これから学んだことを活かしてガンガンと働いてもらおうと思っていたら、本人から退職届が出てきました…。

 

社長は激怒、この間に受けさせた研修費用総額50万円を返金させろと総務担当者に命令したわけです…。

 

 

この返金請求が正当がどうかというのが今日のテーマです。

 

答えから言えば、定義次第でクロ(完全違法)かグレー(微妙)に分かれるというところです。

 

(1)原則クロ

以下のようにしっかり定義してあってもクロです。

 

入社以降2年を経過しないで自己都合退職する者について、在職時に会社が費用を負担した研修があった場合には、その要した費用を返金させる。

 

これは、労働基準法における、強制労働に該当するというのが一般的な見解です。

 

2年未満で自己都合退職すれば、研修費用を自己負担しなくてはならなくなるわけです。会社がかけた研修費用が多額の場合には、実質返金が不可能と言うケースもあり、そうなると、自己都合退職が2年間できないことになってしまいます。

 

こうなると、2年間はそこで働くことしかできないため、結果的には強制労働を強いているに等しいということになってしまうわけです。

 

強制労働を禁止した理由の一つである、丁稚奉公と同じ状況になってしまうわけです。

 

(2)グレーなケース

グレーなケースは以下のようなケースです。グレーというのは、現状、お咎めなく運用されているが、実態はあまりクロのケースと変わらないので、前提条件が少し変わっただけで違法とされる可能性があるという意味です。

 

・研修への参加は自由意志(不参加を不利益取り扱いしない)

・研修費用は貸付

・研修終了後、一定期間勤務によって返済を免除

 (あるいは返済額相当を給与に上乗せ)

 

看護師学校の費用を負担してあげて、お礼勤務的に運用されているのがこのパターンです。

 

ポイントとなるのは、研修への参加が自由意思であることです。

当然、自分が負担することになるかもしれない研修であれば、本人に参加するかどうかの決定権がないとおかしいことになります。

 

そして、研修費用はその場で与えるのではなく、とりあえず貸付で、その後返済してもらうというスタイルをとります。

『与えたものを取り返す』のと『貸しておいて返してもらう』のでは当然ハードルが全く違います。

 

返済を免除する際は、それが賞与に該当するといった考え方もあるようで、実務上の取扱いはそれぞれの管轄機関への確認が必要ですが、この流れであれば、

 

『会社が指定する研修については、自分の意思で受けたい場合、研修の費用を会社が貸してくれて、その上その後も継続して勤務していたら返さなくて良いと言ってくれる』

 

労働者にとって素晴らしい制度になってしまうわけです。

 

(3)まとめ

ポイントは『受講が強制ではないこと』『貸付→返済免除』の二つです。

 

受講が強制でなければ、『営業職については』等と限定することもかまいません。

 

 

ですから、今回のこの社長のケースでは、入社直後の社員に会社命令で受講指示のあった研修を断ることなどできず受講は半強制であったと思われ、貸付→返済免除の流れも説明していなかったので、研修費用を返還させることは難しいでしょう。

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2010年

6月

29日

○×の出勤簿

昨日、以前労働基準監督署の調査の際に、お仕事をさせていただいた社長さんが突然来所されました。

 

その調査の際には、残業代は払ってはいたものの、かなり独自なルールで支払っておられた関係で、こっぴどく遡及支払いされてしまった会社さんです。

 

その調査の際に、その独自ルールであっても、法律上の残業代の不払いが生じないように、制度を設計させていただく形で関わらせていただきました。

 

そして今回…。

 

社長

『ややこしいから、正社員だけ○×の出勤簿に変えようと思うんです。そしたら何時間働いたかもわからないから、調査があっても軽い指導で済みますやん。』

 

『いや、でもそもそも事業主には、労働時間の把握義務というのがあって…。』

 

社長

『でも、それで知り合いの会社は、遡及払いも言われなかったみたいやで。』

 

~以降略~

 

○×の出勤簿で勤怠管理をされている会社はまだまだあります。

 

上記のように、実際に調査で出勤簿が○×ですと、あきらめて時間管理をするように指導するだけで帰られる監督官もいらっしゃるようです。

 

※ただ、私があたった監督官で、三ヶ月分、労働者から聞き取って自己申告によって確認して遡及払いしてくださいと指導されたケースもあります。

 

 

○×の出勤簿の是非は、いくつかの観点で見る必要があります。

(1)監督署調査

たしかに初回は許される場合が多いです。

『労働時間の把握義務』について説明があり、労働時間の管理手法を変えるように言われて、その内容を報告するという形で終わったりします。

ただ、例の社長の会社は、過去にタイムカードを見せていますから、『何故、○×にしたのか、労働時間を把握したくないからではないか?』と悪質と思われても仕方なくなりますね…。

 

(2)労働者からの訴え

不払い残業代請求を起こされた場合、個々の労働者が何らかの形で労働時間を記録していたとすると、ベースがその記録になり、事業主はその記録の中で労働していない時間帯を証明していくという形になります。

なぜ事業主に証明責任があるかと言えば、そもそも『労働時間の把握義務』があるからです。

『○×にしてわからなくなったら支払わなくても良い。』のではなく、『○×にしてわからなくなったら、労働者の言いなりで支払わなくてはならない。』と思っておいてください。

 

(3)健康面

ある意味最も大事なことです。

それだけではありませんが、労働時間数というのは、労働者の健康状態を推定するひとつのバロメーターです。

労働時間が少なければそれで良いということではなく、深いコミュニケーションを取って、精神的・肉体的な健康の維持、異常の有無の確認をしていく必要があります。これは、事業主に課せられた、自己の雇用する労働者への安全配慮義務という労働契約法に定められた条項により義務化されています。

それ以前に、実際に業務が適切に行われるように、個々の労働者の能力が発揮されるようにという観点からも、非常に大事なことです。

 

上記のような理由から、○×式はあまりお勧めできません。

 

もちろん、○×式でも、

①労働時間を把握できて

②労働者の安全に配慮ができて

③適正な時間外手当が支払えていれば

全く問題ありません。

 

でも、○×式では、現実的に難しいですね…。

 

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2010年

6月

28日

悪人はいるのか?

先週金曜日、労使トラブルに関する相談が連続しました。

 

共に、話を聞いていると、そんな人にはいて欲しくないなぁと思うような方です。

 

では、そういった人は、どこにいても必要のない人なのでしょうか?

そう、今日のテーマ、生粋の悪人なのでしょうか?

 

今回のケースでは、共に、おそらくは基礎能力の高い、賢い方です。

しかも、それをご自身が認識されています。

 

過去の職歴だったり、経歴だったりが、そうした自信につながっているのでしょう。

 

それが、今回の片方のケースでは、周囲にかなりの迷惑をかける存在になっていらっしゃいます。

 

他人のせいにしたり、誰かをいじめたり、顧客に対して失礼な態度を取ってみたり…。

 

解雇要件として、事実を並びあげても、片側(経営者)の意見しか聞いてはいないものの、ある程度第三者判断でやむを得ないかなと思ってしまうほどの迷惑ぶりです。

 

ただ、ご本人としては、そんな状態ではなく、自分が正しいと思っていらっしゃるようで、解雇通知を行えば、100%争いが生じる環境です。

 

そんな状況まで来ているので、今回のケースは少しでも穏やかな結論が出るように導くだけなのですが、では、どうしてこのような状態になったのかというところを考えてみようと思うのです。

 

ご本人が周囲に迷惑をかけている行動は、ご本人の中では正当化されています。

あるいは、ご自身の正当性・優位性を証明するための行動です。

 

自分の優位性を証明するために、他人を否定する。

自分の正当性を証明するために、他人を悪く言う。

注意をすれば、自己の正当性を否定されることになるために、過剰に反応する。

 

つまり、一生懸命、自己の正当性・優位性を証明しようとしているだけなのです。

 

では、なぜ、そうする必要があったかを考えてみると…。

 

もちろん、ご本人の自己顕示欲が強すぎたのかもしれませんが、経営者・周囲のプラスのストローク(好意的関わり・承認)が少なかったのではないでしょうか?

 

誰でも同じだけのプラスのストロークで満足できるわけではありません。

大食いの人がいるように、人よりも多くのプラスのストロークを必要とする人も存在します。

 

プラスのストローク不足は、過度な自己アピールにつながります。もっと見せつけないといけない、まだ認めてもらえない、もっとアピールしないといけない。

でも、アピール自体は十分にやっている。では、周りを落としてめて差を見せつけなければならない…。

 

プラスのストロークに満たされていたら、こうした過度な自己アピールはなくなるはずです。

 

防げたのか防げなかったのかは今となってはわかりません。

 

ただ、プラスのストロークが、もし不足していたと感じるのであれば、改善の余地があります…。

 

それだけで全てが上手くいくわけでもなく、気をつけていたら今回のトラブルが防げていたとも限りませんが、プラスのストロークの大切さを再認識する良いきっかけになりました。

 

難しいですけどね…。

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2010年

6月

24日

上手な辞めさせ方・上手な解雇

この職業で仕事していますと、今日のテーマのような質問をよく受けます。

 

答えは…。

 

辞めさせようとしないことです。

 

答えになってないでしょうか?

 

 

では、何故解雇がトラブルになるのかを考えてみましょう。

 

(1)生活の糧を奪うから

解雇してしまえば、された側は収入が途絶えることになります。

生活に困る状況は、誰しもが避けたいところですから、収入を確保すべく戦う姿勢を見せるわけです。

 

(2)要らない人、ダメな人扱いされたから

解雇というのは、『お前は要らない人だ!』という通告です。

言い方を誤れば、人間否定・人格否定・存在否定になります。

これは生活の糧どころか、生存の意味すら否定することになりますから、人として正常に生きていくために当然に防衛の意味からも、『そんなことはない』と戦う姿勢を見せることになります。

 

経験上、トラブルの多くは、あるいは泥沼に発展するトラブルは(2)に起因していることが多いです。

 

そもそも、何故辞めさせようとしているのかを考えてみます。

 

・事業の正常な運営に支障が出るから

 

上記が理由であるケースがほとんどでしょう。

・遅刻や無断欠勤が多い。

・注意指導、指示を聞かない。

・間違いやミスが多く、顧客に迷惑をかけている。

・法的に問題のある行動が多い。

・他の社員に悪影響や迷惑がある。

 

これら全て、『事業の正常な運営に支障が出るから』でひとくくりにできます。

 

しかし、先にあげたような事情を改善するために、どれだけ、経営者・管理職が努力したでしょう。

 

自分の家族が同じような状況だったとして、その家族に対して行う努力と遜色ない努力がなされたでしょうか?

 

・怒っているだけで問題点の指摘も原因の追及もしていない。

・注意はしているが、行動変容のための援助を行っていない。

・悪意が取れる場合に、なぜその悪意が生じているのかを考えていない。

 

こうした状況では、改善がなされるはずもありません。

 

 

では、本当に、上から目線の指導ではなく、一緒に変わっていこうというスタンスで取り組んで、いろんなことを一緒に考え、その意図・行動・結果を承認していったとしてどうなるでしょう?

 

もしかすると、それでもダメかもしれません。

 

ミスマッチは起こりうることですし、そもそもの能力・向き不向きもあります。

こうしてがっつりと向き合えば、長所・短所もわかってきます。

 

先にあげたような流れの結果、そこへたどりついたとしたら、最後に出てくるのは、『ここよりも、あなたに適した職業・職種・職場があるのではないか?』という話です。

 

ここで行われるのは、解雇ではなく、退職勧奨、もっと言えば、転職の相談です。

一緒に転職先を考えたって良いではないでしょうか?

 

ここまで親身になって、一緒に頑張ってくれた人とトラブルを起こそうとは思いませんし、感謝こそされるはずです。

 

 

こんな面倒なことやってられない!

 

そうかもしれません。

 

しかし、こうした行程を他の社員は見ています。

また、辞めることにならず、改善に成功した社員は、今後の最も信頼できる忠実な社員になるでしょう。

 

経営者・管理職を信頼していない、いえ、好きではない社員が、経営者・管理職のために頑張ってくれると思いますか?

 

自分が満足していない社員が、顧客の満足を考えられますか?

 

 

もし、こんな面倒なことはできない、やってられない、それなら、頑張ってくれる社員のために時間を割きたいと思われる方。

 

それであれば、辞めさせたい方に、たっぷりと上乗せの解雇予告手当を支払ってあげて、『うちには合わないと思うので、次の仕事を探してくれないか?』と告げてあげてください。

 

辞めさせる人間に、ムチ打ってもろくなことにはなりませんよ。

 

でも…。

他の社員が噂しているかもしれません。

 

『俺たちも結果が出なくなったら、捨てられるのかな…。』

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2010年

6月

22日

月給の対象労働時間~何時間で○○万円?~

よくトラブルにつながる内容で、昨日もトラブルではありませんが、どうしようかとご相談を受けていた内容です。

 

労働条件を決定する際に、給与を決めるのは当たり前ですね?

 

『月給30万円です。よろしく。』

 

これで給与は決まったのでしょうか?

 

いえ、実は決まっていないのです。

 

この月給、何時間の労働の対価なのでしょう。

何も取り決めがなければ、一般的には、当該月の所定労働時間ということになるでしょう。

土曜日日曜日祝日が休みの1日8時間労働なら、休みの日以外の毎日8時間の労働の対価ということになるでしょう。

 

これならわかりやすくて良いのですが、相手のある、つまり客商売であれば、8時間だけを営業時間としているケースは少なく、シフトを組んで、交替制で勤務をしていることも多いはずです。

 

先ほど、決まった30万円。何時間のシフトを組めば良いんでしょう?

 

同じ30万円で、対象労働時間数が、150時間・170時間・190時間の場合に、200時間働いた場合の賃金を計算してみましょう。

(計算上170時間超を1.25倍とします。)

 

【150時間】

300,000円÷150時間=2,000円(時間単価)

20時間×2,000円+30時間×2,500円=115,000円(時間外手当)

総額:415,000円

 

【170時間】

300,000円÷170時間=1764.71円(時間単価)

30時間×2205.89円=66,177円(時間外手当)

総額:366,177円

 

【190時間】

300,000円÷(170時間+20時間×1.25)=1538.47円(時間単価)

10時間×1923.08円=19,231円

総額:319,231円

 

こんなにも変わってくるのです。

 

月給の対象労働時間数は、法律上、何時間としなさいというルールはありません。

上記のような、どれで設定したとしても、法律上は何ら問題ありません。

 

しかし、労使それぞれにとっては大きな問題です。

使用者としては、少しの残業を含めた190時間分くらいで思っていたとして、本人が以前の勤務先で150時間程度で月給をもらっていたとしたら、その差は100,000円です。

 

明確に定まっていると思っていた給与額は、実際には全く定まっていなかったようなものです。

 

医療機関では、月給を決めて、シフトはスタッフに任せているというケースを良く見かけます。

 

先生としては、今いるスタッフで不都合なく回してもらえていれば良いというスタンスかもしれません。

 

しかし、スタッフから人が足りないという要望を受けて、私どもがチェックしてみたら、シフトの時間数が135時間しかなかったというようなケースもよくあります。

 

こうしたケースでは、先生が思っていた以上の時間単価で給与を支給していたことになりますし、実は全く人不足ではなかったりします。

 

スタッフはこれを悪気なくやります。

 

パートさんが入りたい希望を聞いて、自分たち常勤が空いているところを埋める。

むだに人が多くても仕方ないので余分には勤務しません。

 

結果的にこうなるわけです。

 

本当は、自分たちの月給に見合う勤務時間数を確保した上で、パートさんの勤務を入れるべきなのですが、自分たちは犠牲になってパートさんからという善意からこれらを結果的にやっているケースもあります。

 

シフト制による月給制を敷いている事業所の経営者の方。

一度、みなさんが月に何時間働いているのか、シフト表を数えてみてください。

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2010年

6月

21日

従業員の身だしなみと裁判事例

少し前、オリンピックでも身だしなみについて、議論がなされていました。

 

・どこまで強制できるのか?

・付け爪は?

・化粧の濃さは?

・髪の色は?

・私服(通勤時)は?

 

こうした質問を、よく受けます。

 

基本的には強制はできないが、経営者として何故それがダメだと思った理由をきっちり伝えることで、理解が得られるケースが多いというのが私の答えです。

 

『お前の化粧は派手だ!』ではなく、『いろんな人がうちに来てくれます。私個人は素敵だと思うけど、中にはあなたの化粧を良く思わない年齢層の方がいらっしゃるのはわかりますよね?うちのお客様はその年齢層の方が特に上得意様なので、もう少し抑えてくれるとありがたいんだけど…。』と、否定するのではなく、認めた上で理由とともにお話することが大事です。

 

 

ただ、こううまくいかないケースもありますし、従業員とのコミュニケーションは大変難しく、行動を変えさせるのはかなり困難です。

 

従って、どこまで、ルール・規則によって強制できるかというところをここでまとめてみようと思います。

 

結論として…。

 

身だしなみについて、それにより、解雇や職務変更を必要とする職務については、面接段階でお伝えください。

 

それを了承して応募するのか、それならばと辞退するのか、労働者の完全な自由意思がある状態で条件として通知することがトラブルを回避する一番の策です。

 

以下に紹介するような裁判事例(ひげ)では、基本的に労働者勝訴で終わっています。

 

『ひげ=不快感を与える』という等式が成り立つわけではないので、ひげ禁止だから解雇・職務変更とはいかないわけです。

 

ですから、『原因となっている身だしなみ=職務に不適格』という等式が成り立つ場合は、逆に言えば処分は可能。

ただ、この等式が価値観により変わってくるため難しく、デリケートな問題になってしまいます。

 

そのためにも、労働者に失う権利が発生していない、面接の段階で、明確に告げておくことが、その身だしなみの規程に法的な合理的強制力が薄い内容であればあるほど、その後のトラブルを防ぐ唯一の手段ということになります。

 

 

【イースタン・エアポートモータース事件(東京地裁昭和55年)】

ハイヤー乗務員の口ひげ

乗務員勤務要領に、『ひげを剃ること』という一文があり、口ひげを生やしている乗務員に剃ることを注意したが、それを拒否したため乗務から外してしまった。

 

・口ひげは、服装、頭髪等と同様元々個人の趣味・嗜好に属する事柄であり、本来的には各人の自由

・企業は企業の存在と事業の円滑かつ健全な遂行を図り、職場規律を維持確立するために必要な諸事項をもってさだめ、あるいは時宜に応じて従業員に対し具体的な指示・命令をすることができるのであるから、口ひげ、服装、頭髪等に関しても企業経営上必要な規律を制定することができる

 

→きちんと整えられた口ひげで乗務することに関しては、円滑・健全な企業経営が阻害される現実的な危険は生じない。

 

ということで従業員側が勝訴しました。

 

こうした考え方は最近の事例でも変わっておらず、前述の等式次第、“=”なのか、“≒”なのか、このあたりが争点になるようです。

 

こうしたトラブルを避けるためにも、その規制が合理的でなければないほど、面接段階でお伝えしておき、結果的にそれで辞退されたとしても、入社後のトラブルを回避できたと考えることが適正であり、雇用後に雇用継続を盾に強制することは、やり方として良く思われないということになります。

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2010年

6月

17日

正社員とパートの違い(本当は…)

正社員とパートの違い。

 

正規・非正規のような表現もありますが、結構イメージだけで決まっているもので、法的には何の根拠もないものです。

 

『パートだから○○は要らないよね?』

 

こんな質問をよく受けます。

 

その質問の内容自体は、実態として要らなかったりするのですが、

『パートだから』という理由は、ほぼ100%間違っています。

 

そのあたりをまとめてみましょう。

 

(1)正社員は月給、パートは時給

このように定義をしている事業所は多いです。

しかし、これは何かの根拠があるものではなく、世間の常識とされるものがそうなっているからだけです。

 

時間給正社員や月給パートタイマーがいても、なんら問題ありません。

ちなみに、パートタイマーの定義だけが、『パート』=『部分的』労働者という部分であるのが、唯一、言葉から理解できる定義だったりします。

 

つまり、『正社員に比し、労働時間が短い者』=『パートタイマー』という考え方です。

そう考えれば、労働時間数が短い月給者や、フルタイムの時間給者も存在しますよね?

フルタイムパートという完全なる造語も存在します。

全てに勤務する部分的労働者?

 

間違っても、『パート』=『時間給』ではありません。

 

(2)パートは解雇しやすい。

間違ってはいません。

 

が、それは、30対80の試合ではなく、98対99の試合なのです。

 

つまり、どちらかを解雇せざるを得なくなった際に、他に明確な基準での選別ができなくなったときに、正社員ではなくパートタイマーを解雇するということに合理性が出てくるだけです。

 

『パートタイマーだから解雇しやすい』ではなく、他の要素での判断ができない場合に、生活の中心的な収入を当社の給与で得ているAさんよりも、家計補助的な収入として当社の給与を得ているBさんを解雇するほうが合理的であるという判断になるだけなのです。

 

(3)パートだから賞与・退職金は要らない。

これも、事業所としてそのように定義をしているだけで、当然にないわけではありません。

上記のような勘違いで、説明もせずに雇用契約を開始してトラブルが多かったからこそ、過去は必要でなかった『賞与・退職金の有無』が雇用契約書の必須記載事項になったわけです。

 

何も言わなくても当たり前に払わなくて良いのではなく、面接時に『うちでは、時間給者への賞与・退職金はありません。』とお伝えしておかなくてはなりません。

 

(4)パートだから有給休暇はない。

これも、5年ほど前までは、誰もが信じて疑わない常識になっていたと思います。

しかし、今では、かなり多くの事業所でパートタイマーにも有給休暇が付与されるようになってきたように思います。

 

とはいえ、『休んだ時に費用が減るからこそ、パートタイマーを雇用しているのに!』と思ってしまう経営者も当然いらっしゃいます。

長年それが当たり前でやってきているわけです。

『有給休暇が取れない→取れる』という改定は、年間5万円~10万円程度の昇級になります。

 

しかし、これについては、どうしようもないことですので、昇給等の時期にうまくお願いもしながら、少しずつ取得できるように経営者側から働きかけていくことが、一番上手な導入の仕方だと思います。

 

(5)パートだから保険は要らない。

これは明確に違いますね。

社会保険も雇用保険も、週所定労働時間に応じて、加入義務があります。

社会保険は正社員の3/4以上の勤務時間、雇用保険は週20時間以上の勤務。

社会保険は調査等で是正されるので、最近は守られているケースが多いですが、雇用保険は未だにパートは未加入という事業所が見られます。

 

(まとめ)

『パートだから』が理由になるケースは皆無だと認識してください。

もちろん、法律やルールを認識しながらですが、あくまでも、『当然に』除外されるものではありません。

除外するのであれば、その旨を事前にお伝えしておくことが重要ですし、法律上除外できないものを除外している場合、最終的に、それらは権利として請求されることになります。

 

もし、今、誤った認識、取扱いをしているなら、急にが無理なら少しずつでも、その分昇給をしないなど、労働条件を良くするという捉え方で、導入していかれることをお勧めします。

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2010年

6月

14日

明日から来なくていい。(即時解雇してしまった!)

世の中には結構あるみたいです。

 

『明日から来なくていい。』

 

この禁断のセリフが発せられることが…。

 

 

禁断と言ったからには、このセリフを使うべき場面というのは存在しません。

 

どんなに相手に落ち度があろうとも、このセリフを使った途端、経営者は『弱者の生活の糧を奪う極悪人』扱いとなってしまいます。

 

このセリフが使われる多くの場合、労使共に冷静さを欠いているケースが多く、わかっていても使ってしまうわけですが…。

 

 

雇用継続、改善・指導というのが、一番好ましいのですが、それももう難しいというような場合で、何が正解かと言えば、退職勧奨に止めることです。

 

『ここまで来ると、雇用を継続していくのは難しいように思う。これからも一緒にやっていくには、私の意見が正しいかどうかは別にして、私が経営者であり全責任を負う以上、私の方針に従ってもらわなければならないし、こうしたことが再発しないようにしてもらわないといけない。しかし、これまでも改善指導を行ってきたが、一向に改善される気配がない。それでも改善する意向を示して雇用継続を希望するのか、そうではないのか、一日考えてきて欲しい。明日、その結果を教えてください。』

 

途中の部分は、その内容にもよりますが、このような流れで話を進めます。

 

ポイントは…。

・雇用継続か退職かの選択権が労働者側にあること。

・こちらから、明確な改善要求を提示すること。

・自分の考え・方針が正しいかどうかは別として、経営者の考え・方針として、

 従ってもらわなければならない。

・最高の結果は、改善された労働者とこれからも一緒にやっていくこと。

 

上記のスタンスが表れていることです。

 

多くの場合、翌日、退社の意思表示があるはずです。

 

労働者側にとっては、自分の考えは正しかったが、ここでの考え方とは合わなかったという逃げ道があることが、重要でしょう。

 

もちろん、それまでの経緯でそこまでうまくいかないケースも多々あるでしょうが、その場合、即時解雇の場合に必要な解雇予告手当までは、本来必要なものとして急な退職になってしまったからと、特別の退職金・特別の退職金加算として、状況を和らげる道具に使う事も可能でしょう。

 

とにかく、常に、退職勧奨までに止めることが、トラブルを避けるために絶対的に必要な手段です。

 

 

で、言ってしまったら…。

 

まずは、すぐに謝ってください。

そして退職勧奨に切り替えてください。

つまり、辞めさせたいのではなく、一番の自分の希望は、○○というようなことをやめてもらって、一緒に働いていくことだと主張してください。

 

言ってしまったら終わりと思いがちですが、冷静さを欠いた発言は、後から検証する際には、真意ではないという説明も可能です。

 

しかも、他の労働者も見ています。

・何かあったときに、自分からお詫びできる経営者。

・カッとなって、即時解雇してしまう経営者。

どちらの経営者の下で働くほうが安心できますか?

 

おそらく、相手は聞く耳を持っていないでしょう。

 

しかし、『冷静さを欠いた発言をしてしまって、その後すぐに撤回した。』という事実が残ることは、その後、万一、裁判等で争う事になった場合、必ずプラスの効果が働きます。

 

労使間のトラブルはお互いに避けたいことです。

 

退職者は、自社の機密事項も知っています。

けんか別れすることに何のメリットもありません。

 

不幸にも、トラブルになってしまった際も、前述のスタンスを思い起こしていただき、最終的には、『方向性の違い』(仮に労働者の考え方が徹底的に間違っていたとしても)での退職に持ち込みたいところです。

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2010年

6月

08日

名ばかり管理職のニュースから…。【残業代未払請求】

河北新報社の記事です。

 

「名ばかり管理職」に残業代を 福井、760万円請求

 

勤務時間に裁量や権限がない「名ばかり管理職」で、残業代などが支払われなかったのは不当だとして、石川、 福井、岐阜の3県に展開する外食チェーン「ビリオンフーズハヤシ」(福井市)の元店長の男性(34)=福井県鯖江市=が7日、約760万円の支払いを求め る労働審判を福井地裁に申し立てた。

 申立書によると、男性は2009年2月から約1年間、福井、石川両県で居酒屋店長などを務めた。退職後に未払い残業代を請求したが、会社側は、残業代の支払い義務がない労働基準法上の管理監督者だとして支払いを拒否したという。
 男性側は、午後4時から翌日午前3時まで連日働く生活が常態化して勤務時間を決められる自由がなく、管理監督者に当たらないとしている。
 会社側は「残業代として月12万5千円の職務手当を払っていた。違法とは認識していない」と話している。

 

記事だけを読むと、経営側としては、しんどい内容ですね。

 

そもそも、一店舗の店長が会社全体の経営に関わっているとはなかなか言いづらいです。

店長を労働基準法上の、労働時間の適用除外となる管理監督者とするのは、無理があります。

 

最終的には、管理監督者だと言っておきながら、残業代の定額払いをしているとの主張が記載してあります。

 

これから争っていくのでしょうが、もらっていないという訴えを起こしている以上、少なくとも明確には伝えていなかったのでしょう。

 

125,000円というそれなりの職務手当を払っていたわけですから、きっちりと定義して説明していれば、こうした事態には陥らなかったはずです。

 

残業代の固定払いというのは、経営者としては、せこいと思われそうな内容です。

 

固定払い自体が、給与を制限するイメージが強いこともあって言いづらいのでしょうか?

 

しかし、経営状況を考えれば、時間対応ですべて賃金を支払う体系を取れば、固定額の支給が抑えられるのは当たり前です。

 

世の中全体で、時間対応の残業代が払われるのが当たり前になれば、おそらくは、賃金低下が起こるはずです。

 

この経営者がどうだったかはわかりませんが、単純に時間ではなく、能力や成果など、時間以外の評価軸で給与を支給したいと考える経営者がほとんどではないでしょうか?

 

決して、恥ずかしいことではありません。

最終的には、頑張ったことに対して報いるわけであり、その方法が違うだけです。

 

ちゃんと定義して、ちゃんと伝える。

 

これだけで防げる、これだけでリスクを軽減できる。

 

ちゃんとコミュニケーションを取れば、理解もしてもらえる。

 

1日でもはやく対応しておきませんか?

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2010年

6月

04日

厚生労働省のリーフレットから見た重点項目

最近、なぜか、労働基準監督署やハローワークに出向く機会があったので、厚生労働省のリーフレットを集めてみました。

 

その内容によって、現在、厚生労働省として改善が必要と力を入れている内容がうかがい知れますので、今日はそのあたりについての内容にしてみます。

 

キーワード①

『労働時間等設定改善』

なんとも、伝わりにくい言葉をキーワードに選んだなという感じがしますが、

平たく言えば、長時間労働撲滅です…。

 

ただ、まあ、これまで『過重労働は危険です!』と訴え続けてきて効果がなかったわけですから、マイナスイメージによる恐怖を与えるという手段から、プラスイメージの前向きな伝え方に変えたというところで効果が上がることを祈りましょう…。

 

また、『他の事業主と取引をする際に、時間外労働につながるような無理を言うのは控えましょう!』といったような呼びかけがありました…。

 

ある意味、凄いことだと思います。

 

キーワード②

『子育て支援』

育児休業取得促進等助成金

労働時間等設定改善推進助成金

後者の助成金のリーフレットのなかでは、『20代後半から30代』というはっきりとした世代設定がなされていたりしています。

本人への給付が、限界まで手厚くなってきているので、さらに、企業側を援助して、休みやすい、短時間勤務しやすい環境を作ろうという試みだと思われます。

 

が…。

実際には休むことでの『浦島太郎』が問題なんですけどね。

怖くて休めないですよ…。私も…。

 

キーワード③

『有給休暇取得促進』

労働時間等設定改善の中で繰り返し出てくる内容です。

労働時間見直しガイドラインというリーフレットの中で、厚生労働省の有給休暇に対する考え方、以前ご紹介しましたが、明確に記載されていました。

 

●企業の活力や競争力の源泉である有能な人材の確保・育成・定着の可能性を高めるものです。

●企業にとっては、「コスト」としてではなく、「明日への投資」として積極的にとらえていく必要があります。

(労働時間等設定改善の基本的な考え方として)

 

でも、実際にそうだと思います。

労働者も休暇や時短を権利として主張せず、経営者も長時間労働を義務とせず、お互いにベストなパフォーマンスを目指して、効率の良い働き方を実現する。

 

言葉で言うのは簡単ですね。

 

参考までにダウンロードできるようにしておきます。

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2010年

6月

03日

1人医師医療法人の承継時の雇用契約

まずは、昨日、お忙しい中、アリコジャパン京都四条AC主催のセミナーにご参加いただき、ありがとうございました。

 

また、こうした機会・準備をいただいたアリコジャパンのみなさん、あらためて、ありがとうございました。

 

詳細は、アンケートの内容など確認させていただき、報告させていただきます。

 

 

さて、今日は、1人医師医療法人の承継時の雇用契約というテーマ。

 

うちの職員に聞かれて回答した都合もあって、少しコアなテーマです。

 

しかし、思ったよりもよく質問されます。

 

親子承継、第三者承継に関わらず、当たり前に雇用契約も承継されます。

承継を理由とした解雇や労働条件の引き下げは一切認められないわけです。

 

ただ、親子承継にせよ、第三者承継にせよ、後から来た先生が、何十年とそこで働いてきたスタッフを雇用するという、なんともやりづらい環境が出来上がることが多いのも事実です。

 

新しい理事長先生の言うことを聞いてくれれば良いのですが、

『今までうちはこうやってやってきてます!そんなことはできません!』

などと、誰が経営者なのかわからないような発言をするスタッフも出てきます。

 

新しく変わることに、多くの人は抵抗を示します。

それが、何十年とやってきたことなら、なおさらです。

 

雇用契約を承継しないといけない以上、まずは今のメンバーで、新しい医院を作り上げていこうとするスタンスは大切です。

 

ただ、前述のような発言や、新しい理事長先生の経営方針に従わないことは許されるものではありません。

 

 

承継時に、解雇や労働条件を下げることは許されませんが、経営方針を変えることが許されないわけではありません。

 

承継時は、前出のようなスタッフさんでも、多少の変化がありうることは理解されています。

 

まさしく逃してはいけない『いい機会』なのです。

 

経営方針・スタンスを明確に伝え、今までなかった就業規則を制定し、経営方針・スタンスに従わないことがあれば(院長に従わないことがあればではなく)、適宜注意・指導して、改善が見られなければ労働条件を下げたり、解雇したりという可能性があることを宣言する機会なのです。

 

ここを逃せば、だらだらと流れていくことになります。

 

古株のスタッフに言いたい放題、やりたい放題されて、高い給与を払う。我慢ならなくなって、『明日から来なくていい!』と言ってしまい、解雇予告手当や慰謝料を請求されるといったやりきれない状況を作らないためにも、大事なタイミングなのです。

 

もちろん、そうしたスタッフを協力的なスタッフに変えていくのも、理事長先生のお仕事です。

実は注意指導しても、一定レベルまで成長した人間はなかなか変われません。

なぜなら、『他人は変えられない』から。

 

それでも、自分で変わろうと思ってもらえるような気づきを与えようという努力をしていくことが、結果的に、万一変わってもらえなかった場合に、残念ながら解雇をしてしまった場合などには、解雇の正当性が認められる要素になります。

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2010年

6月

02日

いろんな立場(企業側・労働者側)

ここのところ、今日のセミナーのために、追加資料として、適切な判例を整理していた。

 

そのせいもあってか、労働者側の弁護士さんのホームページや労働組合のホームページにたどりつくことも多数ありました。

 

『残業代の不払いは悪』

 

そうなんです。法律違反ですから…。

 

中には、当然ひどいケースもあります。

 

別に私も、そんなケースで会社の肩を持とうとしているわけではありません。

 

心身に異常をきたすような労働はなくさなくてはいけません。

 

私は、“残業代”と“心身に異常をきたすような労働”とは別問題で、別の対処が適切だと思っています。

 

あえて、“長時間労働”と書いていないのは、心身に異常をきたすような労働は、長時間だけに限らないからです。

 

どの業種・業態も苦戦を強いられている現状、でも、中小企業も生き残っていかなければならない中、杓子定規な労働基準法の適用が常に正しいのかという疑問があります。

 

経営者は社員の働きに敏感です。

小企業の経営者であれば、稼いでくる社員と稼がない社員を肌で感じられるはずです。

 

そうした稼いでくる社員を手放したくありませんから、当然それなりの処遇をしたいわけです。しかし、労働時間というのは、えてしてその評価に比例しません。

 

しかし、労働基準法上は、時間に応じた賃金の支払いを求めてくるのです。

 

もちろん、心身の異常があっても、それに周囲が気づかない、気づいていても対処をしないというのは、あってはならないことです。

 

法律は守らなくてはなりません。

心身に異常をきたす可能性がある労働はなくさなくてはいけません。

労働者の心身の健康状態を把握しなければいけません。

でも、会社を存続させなければなりません。

そして経営者はその責任の全てを被るのです。

 

今、残業代不払請求という現状の構図を打ち破ることが一般化してくる中、放っておけば、請求に基づく支払は当然のこと、その後は今のルールに追加で残業代を払うことを強いられます。

 

他の労働者が望む、望まないにしても…。

 

だからこそ、労使関係が正常な今、経営者主導で、くさいものにふたをしないで、これらの対策をしていくことが非常に大事だと考えるのです。

 

何より大事なのは…

・労使間の信頼関係を崩壊させないこと

・経営者と労働者が心身ともに健康でいられる環境を作ること

だと思っています。

 

どちらかの立場に立って戦うのは弁護士さんの役割です。

私は、社会保険労務士。戦いを起こさせないために存在する人間です。

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2010年

6月

01日

過労死訴訟:「日本海庄や」社長らに7860万円賠償命令

まずは、毎日新聞(毎日.JP)の記事の引用です。

 

07年8月に突然死した飲食店チェーン「日本海庄や」従業員、吹上元康さん(当時24歳)の両親が、過重な時間外労働が原因だとして、経営する「大庄」(東京都大田区)と平辰社長ら役員4人に約1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、京都地裁であった。大島真一裁判長は同社の安全配慮義務違反を認め、連帯して約7860万円を支払うよう命じた。

 

 原告代理人の松丸正弁護士は「こうした訴訟で役員ら個人の責任を認めるのは珍しい」と話している。

 

 判決によると、吹上さんは07年4月に入社し、大津市の石山駅店で調理や接客を担当。出勤日は午前8時半から午後11時まで働き、死亡前4カ月間の月平均時間外労働は過労死の認定基準(月80時間)を超える112時間に上っていた。

 

 同社は基本給に時間外労働80時間分を組み込むシステムを採用。大島裁判長は「到底、労働者の生命・健康に配慮しているとは言えない」と指摘し、社長ら役員について「悪意か重大な過失で、そのような体制をとっていた」とした。

 

 大津労働基準監督署は08年12月、死亡と業務の因果関係を認めて労災認定し、09年4月には大庄と石山駅店長を労働基準法違反容疑で書類送検している。

 

~以降略~

 

今回の判決での注目点は以下の2つです。

 

・労災補償が給付されるのとは別に、役員4名の個人に対して7,860万円の賠償命令が下った。

・基本給に時間外手当80時間が組み込まれるシステムが、安全配慮義務違反の根拠の一つとなった。

 

今回、雇用主は『法人』たる株式会社大庄です。

にも関わらず、役員4名の個人に対して賠償命令が下ったわけです。

しかも、今回は、労災認定がなされています。

労災保険の給付がある上に、上乗せとして、賠償命令になっているわけです。

 

本文中にもありますが、それだけ悪質だと判断されたということでしょう。

 

その悪質さの要因のひとつが、時間外手当80時間が組み込まれるシステムだったような報道の仕方になっています。

判決の原文を見ているわけではありませんので、なんとも言えませんが、システムそのものよりも、その実態に問題があったように感じます。

 

死亡前4ヶ月の時間外労働の平均が112時間だったとのこと。

休みを4日取っていれば、1日12時間超の労働。

もしかすると、労働時間の算定の仕方でこうなっているだけで、もしかすると、カウントされていない労働がもっとあったのかもしれません。

 

定額の時間外手当80時間というのも、もちろん良い制度とは言いません。

できれば、36協定の限度時間である45時間に抑えることがベターなのは間違いありません。

 

しかし、制度自体が悪いかどうかという考え方で言うと、それよりも、個々の労働者の心身の健康状態を確認する仕組みがなかったこと、80時間が当たり前(もっとも多いのが当たり前だったかもしれません。)と捉えて、時間外労働の削減に動かなかったことが、悪意的と判断された要因ではないでしょうか?

 

今、残業代不払請求対策ということでお話をさせていただく機会が増えているのですが、その中で、残業の実時間数を減らす取り組みの重要性もご説明させていただいています。

 

もちろん、全て時間で計れるものではないと私も思っています。

 

労働内容によっては、職種や職責によっては、労働時間の管理をされることが面倒でたまらない人もいるでしょう。

ちなみに、私も、時間外労働を制限されると困ってしまいます…。

 

しかし、少なくとも健康状態を把握して、それに応じた対応をすることは、今後企業にとって重要な課題になってきます。

 

残業代不払請求対策のその奥に、より難しいメンタルヘルスの問題が立ちはだかっていることを、まだ多くの経営者がご存知ないかもしれません。

 

こうした裁判が起きない状況を作り出していくことが、誰にとっても一番大切だと思わせられた裁判でした。

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2010年

5月

28日

年次有給休暇。繰り越し分と新規発生分

年次有給休暇ですが、本日の題名のようなことは考えてみたことがあるでしょうか?

 

例えば、初年度もらった10日間の有給休暇を持っていたとします。

そして、1年経って、さらに11日間の有給休暇が発生したとします。

 

ここで有給休暇を使用すると、初年度もらった分か、新しくもらった分かどちらが消化されたことになるかというお話です。

 

『どちらも変わらないんじゃないの?』

 

そんな声が聞こえてきます。

 

いえ、違いますよ。

経営者の考え方によっては大きな違いと考えるケースもあると思います。

 

わかりやすく言えば、

賞味期限の切れかけた有給休暇か、新鮮な有給休暇か、どちらから食べるかという話です。

 

余計にわかりにくくなりました?

 

具体例で考えてみましょう。

 

(1)繰り越し分から先に使用

10日、11日と有給発生。

繰り越し分10日、新規発生分11日。

この年度に5日間の有給休暇利用。

繰り越し分5日、新規発生分11日。

年度が終了して、新たに12日発生。初年度分は時効を迎え消滅。

繰り越し分11日、新規発生分12日、合計23日。

 

(2)新規発生分から先に使用

10日、11日と有給発生。

繰り越し分10日、新規発生分11日。

こ の年度に5日間の有給休暇利用。

繰り越し分10日、新規発生分6日。

年度が終了して、新たに12日発生。初年度分は時効を迎え消滅。

繰り越し分6日、新規発生分12日、合計18日。

 

あら…。

5日分も違いますね…。

 

つまり、新規発生分から利用することにすると、有休休暇を貯めにくくなるのです。

 

一見、経営者にとって非常に有利に見えるかもしれません。

 

が…実態は…。

『退職時の有給休暇残日数は少なくて済むが、場合によっては有給休暇の総使用日数は増えかねない。』

ということになります。

 

どういう事かと言うと、繰り越してしまった分は、新しく発生したものを使い切らない限り、使えないことになりますから、結果的に、繰り越させない、つまりは、毎年使い切る社員が出てきます。

 

その意識が働けば、今よりも計画的に有休休暇を使用するケースが出てきて、結果、有休休暇の使用率が上がってくるという現象です。

 

ただし、退職時には、40日残すことはかなり困難になります。

 

経営者として、今後も、元気に活力あふれて勤務してもらうために、有休休暇を利用してくれるなら、まだ納得できても、退職が決まった社員が、最後に使い切って辞めるというのは、精神衛生上、良く思わないケースが多いと思います。

 

厚生労働省としても、有休休暇の意義を、元気に活力あふれて勤務するために使うことのほうを推奨しています。

 

 

では…。このルールですが、どちらでも良いかというと…。

 

法律上もどちらでも良いことになっています。

就業規則の記載、労使間の取り決め、慣例といった優先順位になるでしょうが、取り扱いは労使間に任されています。

 

私が経営者だったとしたら…。新規発生分から使用を選びます。

 

さて、社長はどちらが良いですか?

 

 

 

 

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2010年

5月

26日

育児介護休業法の改正

育児介護休業法の改正施行時期が近づいてきました。

 

平成22年6月30日が施行時期です。

 

今回の改正の細かく、正しい内容については、最後に厚生労働省のリーフレットをつけておきます。

 

ですから、おおざっぱで、少し不正確かもしれませんが、改正になった内容をご説明しようと思います。

 

(1)配偶者が専業主婦(夫)である者の労使協定による育児休業等の除外禁止

 

従来は、配偶者が専業主婦(夫)である場合、労使協定を締結することで、育児休業・育児短時間勤務制度を拒むことができていました。

それが、今回、できなくなります。

 

(2)看護休暇制度の拡充

無給でもかまわない、看護休暇制度が従来5日以上だったのが、2人以上の子がいれば10日以上になりました。

 

(3)介護休暇制度の新設

看護休暇制度の介護版も強制されました。

 

(4)育児のための所定外労働の免除

従来、短時間勤務制度のひとつの選択肢とされていた、『時間外労働をさせない制度』が独立して義務化されました。

 

(5)育児短時間勤務制度の内容変更

従来、いくつかから選択する内容であったのが、所定労働時間を短縮する制度を義務付けました。それと同時に、1日の所定労働時間数が6時間以上の者という適用条件が追加されました。

 

(6)育児休業復帰時支援(パパママプラス?)

育児休業から復帰する際の負担軽減のため、復帰する際に、育児休業を取得していなかった配偶者が代わりに育児休業を取得する制度です。

復帰の際の負担を軽減するために2ヶ月限定です。

 

大変、ざっくりとした説明ですが、こんな感じです。

 

育児休業については、子育て支援政策の下、かなりいろいろと手厚くされてきています。

 

現在、事業主の実質負担はほとんどなくなり、給付も充実してきました。

 

しかし、重要なところがケアされていません。

 

それが、代替要員のケアです。

 

育児休業を取得されることはかまわない。

でも、その間どうすれば良いのか?

新しい人を雇ったら、復帰してきたときに人が余ってしまう。

産休・育休のピンチヒッターのような契約を望む人はいない。

即戦力は確保できない。

 

ここを厚生労働省でケアしてくれると、もっと進むと思うんですけどね。

 

ピンチヒッター派遣を厚生労働省で、教育を含め取り仕切り、その派遣労働者も相応の待遇にして人気の職業にしてしまう。

派遣労働者のレベルを高めていけば、何より育児休業の取得促進になると思うのですが…。

 

助成金というお金の解決よりももっと大切だと思います。

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2010年

5月

25日

申請制度・自己申告による時間外労働・残業

時間外労働・残業を自己申告の申請制度にしている事業所がよく見られます。

 

時間外労働・残業をする場合に、上司に申請をして、認められたら時間外手当・残業代が支払われるという形です。

 

経営者としては、上司の抑制や手続きの面倒さ、労働かどうか微妙な時間の不申請、時間外手当支給請求書的な書類への抵抗感などから、実態よりも時間外労働を抑えることができるため、多く採用されています。

 

また、『法律を破るつもりはないから請求されればちゃんと払うが、こちらから進んで払う必要はない。』というようなスタンスの経営者には、まさしくという制度であります。

 

ただ、本当に法律を破っていないのでしょうか?

 

今日はこのあたりのお話です。

 

“事業主には労働者の労働時間数を把握する義務がある。”

 

これが、平成13年4月6日に出された厚生労働省の通達で明確化されたものです。

 

これにより、自己申告自体が否定されたと言っても良いでしょう。

自己申告は労働者に労働時間管理を投げてしまう制度です。

 

しかし、労働時間数の把握のために自己申告させているという主張が当たり前に返ってきますので、厚生労働省も自己申告を原則から外しただけで、条件付きの例外として認めています。

 

その条件が『適正な自己申告が行われるような環境づくり』です。

具体的には下記の文章になります。

 

-通達より抜粋-

 

自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと

 

自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること

 

労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと

 

時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないか確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること

 

-以上-

 

ひらたく言えば、時間外手当・残業代の抑制にならないならオッケーという話です。

 

そうなれば、結局手間だけかかって、抑制にならないという経営者にとって何の利点もない制度になってしまいます。

 

もちろん、社内にはいるが、労働でない時間が多数あって、それを上記のような徹底の上の申請制度で省くというような形で使うことはできるでしょうが、いずれにしても、現状の運用で問題が生じないというわけにはいかないでしょう。

 

手間と法令遵守と時間外手当・残業代の抑制。

 

バランスを取ることが難しい問題です。

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2010年

5月

24日

究極の労務管理は、社員からの信頼を得ること。

私のブログでは、いろんなテクニック的な情報も提供しています。

 

経営者を守るためのテクニックです。

 

それらは労務管理の手法であり、法的に問題が生じないように、ルール作りの情報を提供しているわけです。

 

しかし…。

 

これらは、あくまでもごく一部の、権利主張の強い社員さんに対しての予防策です。

とても大切なことで、絶対やっておかなければなりませんが、こうした手法が前面に押し出されてしまうと、逆に社員からの信頼がなくなったり、残業が増えたりします。

 

労使トラブルを起こさない。

 

本当の対策は、『労使関係を良くすること』です。

社員満足(ES)を上げ、社員から信頼を得ることです。

 

そのためには、労使トラブルで悩んでいる会社の多くは、経営者が変わらなくてはいけません。

 

いわゆる“労・使”という関係ではなく、“仲間・パートナー”として捉えて、そのリーダーとして慕われるようにならなくてはいけません。

 

そうなると、多くの言動に修正が必要になりませんか?

 

社長だけが許されていることはありませんか?

特別扱いが多過ぎではありませんか?

 

良くも悪くも中小企業は経営者次第。

 

ここがしっかりしてこそ、万が一のための、労務管理のテクニックが、社員にとっても同様のリスク回避策だという理解を得られるのです。

 

社員インタビューで集めた社長の問題点。

 

全部改善したとしたら、しようと努力したとしたら…。

 

きっと、変わろうとしたことに気づき、社員も変わってくれるはずです。

 

社員を変えようと思っても変わりません。

だって他人ですから…。

 

社長自身を変えることはできます。

社長はあなたですから…。

 

そんな社長を見た社員が、自分で変わろうと思った時、社員が変わる瞬間はそこにしかありません。

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2010年

5月

19日

定額時間外手当の基礎

昨日、管理監督者に関するブログで、定額の時間外手当についてふれました。

 

今日は、定額の時間外手当の基礎中の基礎をご説明してみます。

 

定額の時間外手当というのは、本来、事後、実際に生じた時間外労働に対して払われる時間外手当を、定額で事前決定して払ってしまうものです。

 

『10時間時間外労働をした(事後)から20,000円支払う』ではなく、『(事前に)10時間分の時間外手当として20,000円を支給を確定する』という考え方です。

 

上記の記載の仕方、結構気を使って書きました。

 

定額の時間外手当というのは、使い方によっては、かなりのパワーを持っています。

 

なので、有効と認められるにはそれ相応の必要条件があります。

 

でなければ、『営業職だから、営業手当の支給を持って時間外手当の支給対象としない。』といった乱暴な扱いも可能になってしまいます。

 

当然、そんなことは許されませんので、以下の条件を満たす場合に、認められやすい(ブログ記事ですから、お約束はしづらいですね…。)状況が整います。

 

・定額の時間外手当額が明確であること(基本給などとの区分け)

・その定額の時間外手当が何時間分の手当であるかが明確であること

・労働時間の管理を行って、前述の何時間分を超えた場合には、追加で時間外手当を支給すること

・実際に時間外労働がなかった場合であっても、減額せず、満額を支給すること

・上記の内容が、就業規則・雇用契約書等に記載がなされ、労働者が明確に理解していること

 

上記を読んでしまえば、実は定額時間外手当というのは、単に、普通に払うべきものより多くの時間外手当を事前に支払い確定してしまったものという印象になるはずです。

 

ですから、単に現状の賃金体系のまま導入すると、支給額が増えてしまうことになります。

 

あるいは、既支給分に新しく意味付けするとなると、原則不利益変更になってきます。

 

理屈は単純なのですが、導入時は、その代替措置であったり、説明であったりというところが非常に大事になってくるのです。

 

ですから、『残業代を減らしたい』で導入すると、まず抵抗されてしまいます。

 

では、その時の大義名分はというと…。

 

『みなさんの頑張りを単純に時間で評価するのはおかしいと思っている。時間ではなく、働いた成果や結果、あるいはそれまでの過程や取り組みの意思を評価していきたい。』

 

こうした『時間評価との惜別』ということになると思います。

みなさん、そう思っていることだとは思いますが…。ここを大義名分に進めれば、当然、その代償というのも自然に生まれてくるはずです。

うまく導入するコツのひとつとしてご紹介しておきます。

 

また残業代請求対策目的であれば、また少し違う対応もあり得ます。

 

その辺りの詳細は、個別にご相談いただければと思います。

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2010年

5月

18日

名ばかり管理職とその対策(通達・リーフレット)

管理職だから時間外手当は支給されない。

 

当たり前に存在してきた常識です。

 

過去形であるように、もはや、現在では多くの経営者が、

『ダメらしい』

と認識している内容になってきました。

 

今日は、その幻想を打ち砕くテーマです。

 

つまり、『管理職のほとんどは、労働基準法における労働時間・休憩・休日に関する規定の適用除外に該当しない。』わけです。

 

こう考えるほうが堅いです。

 

おぼろげな期待を夢見て目をつむって管理監督者扱いするよりも、あくまでも労働者として取り扱って、問題の生じない対処をしておけば良いわけです。

 

そもそも…。

管理職≠管理監督者です。

言葉も違います。

 

管理監督者と呼ばれるための大原則は、経営者と利益を同一にするような立場という考え方です。

 

経営者が、労働者ではなく、時間管理がなされないように、経営者みたいなものだから同様に時間管理は適さないという考え方がベースです。

 

そんな人はほとんどいませんよね?

 

経営者と同等だからこそ…

・勤退に一定の自由があり

・責任と権限が相応にあり

・一般の労働者の業務とは違った業務にあたっており

・相応の待遇がなされている。

 

後半の2つは、経営者でもそうではないケースが多々ありますが…。

 

そういうわけです。

 

ですから、あきらめてしまうことをお勧めします。

 

ただ、一定レベル以上の管理職に時間管理が必要かどうかという点には、

私もいささか疑問を感じます。

 

例えば、私も現在1時20分に自宅でブログを更新しているわけです。

時間外手当の対象の労働時間などと思ったこともありません。

こうして記載する事項について、チェックを受けることもありません。

 

でも、やっぱり管理監督者かと言われれば、少し違うわけです。

 

こうした立場の方は無数にいらっしゃいますし、ご本人も、時間外手当などという時間によって賃金が決まる形を望んでいらっしゃらないはずです。

 

ですから、管理職には、管理職手当という名の『定額の時間外手当』の支給をお勧めしています。

 

もちろん、定額の時間外手当には、いくつかの要件があります。

 

書いたかな?もうブログで?

 

書いていなければ近いうちに書きますね。

 

いずれにしても、管理職を管理監督者として取り扱うことはあきらめましょう!

 

下記は、厚生労働省が発行している管理監督者に関するリーフレットです。

名ばかり店長の通達も記載されています。

 

ご参考まで。

 

リーフレット(労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために)

 

http://www.roudoukyoku.go.jp/seido/kijunhou/tatenpo/pdf/tekiseika.pdf

 

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2010年

5月

14日

交通費にまつわるご相談(まとめ)

Twitterで予告した通り、今日は交通費に関するご相談をまとめてみましょう。

 

(1)交通費は払わなきゃいけない?

 

交通費は、支給の義務など一切ありません。

ですから、嫌なら払わなくても結構です。

『なんで住んでいる位置で給与が決まるんだ?』というのは当たり前の疑問。

もらう側にとっては非課税ですが、払う側にとっては、同じ給与。

非課税ではなくなってしまいますが、一律同額支給なんてのもアリですよ。

 

この後も、この大前提が何度も出てきます。

基本、支払い義務がないので、自由度がありすぎます。

逆に法律で定めてくれたら良いのにと思う事があります。

 

もちろん、上限設定も自由ですし、ルールも自由。

自由過ぎるから困るんですけどね。

 

(2)非課税交通費

 

唯一、公的なところ、税務署ですが、定めてくれているのが非課税交通費の範囲。

 

【国税庁タックスアンサー】

公共交通機関利用の場合

http://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2582.htm

交通用具(マイカー・バイク・自転車等:徒歩は×)

http://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2585.htm

 

ひらたく言うと、通勤にかかる実費までは非課税なわけです。

当たり前ですね。

儲けがないから、非課税です。

 

法律上の支払い義務がありませんから、そもそもいくらまでというのも、経営者自身が決めなければなりません。

その時の言い訳に使われるのが、非課税交通費の範囲。

非課税交通費の限度額だから…。

 

でも、課税交通費で払う事は自由だったりします。

 

特に、マイカー等の場合、実費ではないので、ガソリン代で欲しいなどと言われるケースも多々あるでしょう。

これをどうするかも経営者の自由。

非課税限度額を交通費と定めているのでこれ以上は払えないとするも良し、キロ単位で単価を決めて非課税額を超える分を課税交通費として支給するもまた良しです。

 

(3)車通勤なのに定期代

多くの会社で見られるケースです。

 

ダメではありません。

 

が、交通用具を利用した場合の非課税限度額を超えて、定期代として非課税で支給していたら、それは税法上アウトです。

 

不便な立地で、従業員駐車場もあるのに、定期代支給。

そんな会社は、税務調査がとても怖いですね…。

 

ただ、定期代支給で、交通用具を利用した場合の非課税限度額を超える額について、課税交通費で支払うということなら全く問題ありません。

 

(4)申請経路

どうやっても1通りでしか通えない人だと問題ありませんが、複数のルートで通える場合など、どれを申請経路ということにするかという問題が生じます。

 

こちらのルートだと安いけど、本数が少ない、終電が早い。

こちらのルートだと便利だけど高い。

こちらのルートだと帰りにお買いものや習い事に寄りやすい。

 

一応、非課税範囲を決定する意味では、『経済的で最も合理的な経路』とされています。

この合理的というのも、判断に困るところです。

 

それも、非課税範囲を決めるための判断基準ですから、実際の交通費を決める基準ではありません。

 

その都度判定では、経営者や総務担当者がいちいち頭を悩ましますし、個々に不公平が出たりします。

 

ですから、明確にルールを定めておく必要があります。

 

例えば…。

①最も安価な経路とする。

②経路は本人に委ねるが、定期券の提出を求める。

 

①だと、別のルートで通ったとしても、本人が自腹を切ることになります。『経済的で最も合理的な経路』が別だったとしても、それよりも安価になりますから税法上も問題ありません。経営者としては、支払いを最小限に抑えられます。

 

②だと、本人はどう工夫しても、交通費で利益を出すことはできません。おそらくは実際に通いやすいルートを選択する可能性が高いです。利益を出していないことが明らかですから、『経済的で最も合理的な経路』というあいまいな定義の中では、まず非課税否認されることは考えにくいでしょう。

この場合、『健康のために2駅前で降りて歩く!健康と交通費の浮きが手に入って一石二鳥!』みたいなことも許されなくなります。

ちなみに定期券を購入して払い戻す強者もいますので、月一確認ぐらいが必要になりますね…。

 

(5)虚偽申請

交通用具を利用した場合、実際の距離が必要になります。

そのキロ数の境界あたりで微妙になってくると、これまた思案が必要になります。

また、自宅近くでバスに乗っていると言われても、それが本当なのかもわかりません。(こちらは定期券提出で防げますが…)

 

前述のようなルールがないと、『本当かよ?』と思う申請書もポロポロ出てきます。後は、大した悪意なく、近くに引っ越したことを黙っていたり、細かなトラブルは尽きません。

 

これらについては、少々脅しになりますが、そもそも支払い義務がないものですから、虚偽申請が発覚した場合には、全額返金の上、以降、一切交通費を支給しないくらいの定義があっても良いと思います。

 

就業規則だけで弱ければ、通勤経路の申請書の下に誓約として記載しておくのもアリです。

 

(まとめ)

こんな、従業員を疑ったようなことをするのは、経営者としても喜ばしいことではありません。

 

しかしながら、従業員は、交通費は、『経営者の懐が痛んでいないもの』というような誤解をしているかというほど、悪意なく、ごまかそうとします。

 

そうしたことをしないような組織風土作りが一番大切ですが、ここまでやるかというところをこうして見ておいて、ご自身の組織でどこまでやるかというのを検討されておけば、何かしらのトラブルがあった際の対処にも余裕が出ると思いますが、いかがでしょう?

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2010年

5月

13日

月給の対象労働時間

昨日は、医業の新規開業のお客様とスタッフの雇用条件についての打ち合わせ。

 

最近、新規開業時に労務関係の事柄をしっかりと考える先生が増えてきています。

 

開業後、最も苦労すること、最もストレスのかかることのひとつがスタッフとのトラブルです。

 

トラブルの原因となるのは、決まっていない条件を互いが都合の良いように理解していて、そこに相違があることが最大の原因です。

 

ゆえに、新規開業時という最も自由に物事を定められる機会において、少しでも先生にとって良い条件を“原則”という定義をしておいて、運用上で緩めていくというのが、上手なやり方だと思います。

 

そう考えれば、こうした流れができてきていることは、大変良いことだと思います。

 

前置きが長くなりましたが…。

 

表題の件、月給の対象労働時間。

明確に定まっているでしょうか?

 

考えられるケースがいくつかあります。

①○○○時間の労働の対価

②法定労働時間数の労働の対価(割増賃金が生じない範囲)

③勤務すべき日・時間全てに勤務した場合の労働時間数の労働の対価

 

実は、これらが決まっていない事業所が結構あります。

 

特に医療機関を始めとしたシフト制の事業所では、③ということになっていて、

いざ、“勤務すべき日・時間”の総時間数を数えてみると、著しく少ない数字になっていたり、著しく多い数字になっていたります。

 

医療機関では、先生が労務管理に関心がないと、シフト作成をスタッフに任せてチェックもしないようなケースがあります。

 

悪気はないと信じますが、まずパートさんの希望勤務シフトを入れてしまい、その上で残った分を常勤でわけるというスタイルをとって、その結果、常勤職員の勤務すべきシフトが月130時間しかないようなケースも案外存在します。

 

1日8時間週40時間なら、160時間以上にはなるわけですから、スタッフにとってはかなり美味しい状況が生まれます。

 

でも、先生としては、シフトがまわっていれば特になにも気づきません。

 

もし、常勤スタッフの170時間分の労働の確保から行えば、余分なパートさんが存在してくるかもしれませんが、それに気づくこともできません。

 

同じ200,000円の給与でも、170時間の労働の対価なら時間給1,177円ですが、130時間の労働の対価だと時間給1,539円になってしまいます。

 

大きな違いです。

 

世間に出まわっている一般的な就業規則のひな型では、ここが不明確ですし、労働条件通知書でも定義されているのをほとんど見かけません。

 

でも、実は非常に大事な項目です。

 

一度、月給制スタッフの勤務表を確認して見られてはいかがでしょう?

 

思ったより少ない時間数しか働いていないかもしれません。

 

“原則は月給は170時間の労働の対価だけどシフトは月130時間で作って運用している。”

 

“月給の対象労働時間数が130時間”

 

この二つの差は、とても大きいんです…。

※もちろん同じ月給ですから、月170時間程度しっかり働いて欲しいんですが…。

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2010年

5月

12日

試用期間中の解雇(本採用否認)

このテーマも大変多く質問を受けます。

 

試用期間だから解雇して良いか?

 

なんて質問です。

 

答えとしては、○とは言いづらいです。

理由次第で、その是非の決定は司法判断においてしかなされないというのが、明快な回答だと思います。

 

時系列で変わる是非の度合いを追ってみましょう。

 

(1)採用

採用については、不当に男女間差別をしないという事以外は、明確な禁止事項はありません。

自由に決定できますから、極端な話、『なんか気にくわない』でも不採用は可能です。理由を聞かれれば、答える義務はありませんが、『大変優秀な方でしたが、他の応募者で当社での多大な活躍を予測できる方がいらっしゃったので。』と回答しておけば、事は足ります。

 

経営者の代理行為を任せて、その責任を経営者が取ることになるわけですから、その選択権はあって当たり前でしょう。

 

(2)試用期間(14日間)

法律上、解雇予告が不要とされている期間です。

つまり、法律上も、ミスマッチによる解雇があってもやむをえないと判断されている期間だという解釈ができるでしょう。

ただ、『なんか気にくわない』レベルでの解雇は当然問題があります。

14日間で本採用しないことを決定できてしまうくらいの、様々な“事実”と、“改善見込みのなさ”が必要になります。

ただ、前述の通り、その要件は緩い目だと考えていただいて大丈夫でしょう。

また、試用期間について、採用時に説明をしていたかというところも重要です。

過去、ほとんどの方が、試用期間に本採用否認されることがなく、“形だけ”という認識を労使が互いに思っていたようなケースで、後から就業規則を持ちだして試用期間だからというのは、トラブルにつながるパターンです。

試用期間中のチェック事項を含めて、事前に説明しておくほうが、安全なのは間違いありません。

 

(3)試用期間(15日目以降)

現行法では、試用期間に法律上の定めはありません。

一時期、雇用契約法制定時に、6ヶ月という期間を最長とするという案も出たように聞いています。社会通念上の常識で言えば、長過ぎても6ヶ月くらいが限界だと思います。

14日までは解雇予告が不要という法律の線引きがありましたが、それもなくなります。すなわち、さらにハードルが上がると考えていただいたほうが良いです。

通常解雇に比べれば、きっちりと事前説明した試用期間であれば、ハードルは下がりますが、14日までとは基準が違うことは認識しておくべきです。

 

(4)本採用否認の理由

採用をしたからには、経営者はその労働者の雇用維持に努めなければなりません。

もちろん、経営者の代理行為という概念から、恐くて使えない人を強制的に雇用し続けさせられるわけではありませんが、『できないからクビ!』ではなくて、問題点を注意して、改善を求めて、可能な限り、正常に働けるように教育していく義務が生じるわけです。

 

ですから、マイナス材料の事実を拾い上げて、試用期間満了日に、こんなことしたから本採用否認では問題が生じます。

何しろ、本人は、注意を受けていませんから、改善のしようもありません。

ですから、最終的な本採用否認の理由は、『改善の見込みがないため』ということになる必要があります。

 

注意をして、改善を求めて、援助・教育し、それでもダメなら解雇という流れです。

 

全ての経営者がこうやって、本採用否認や解雇をおこなっているわけではありません。平気で、『明日から来なくていい!』と言い放つ経営者もたくさんいらっしゃいます。

労働者が訴えなかったら、何の問題もなく進んでしまうものです。

 

しかし、トラブルにつながった場合、こうした内容は、かなり気が重く、精神的なストレスとなって経営者を襲います。

 

今日の記事の内容を一度読んでいただいているだけでも、少し、トラブルの可能性が減るんではないかと、今日のブログはこんな内容にしました。

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2010年

5月

11日

医療機関の監督署調査

昨日は、医療機関の労働基準監督署調査に立ち会ってきました。

 

今日は、その流れをご紹介してみます。

 

(1)概況確認

まずは、診療科目、診療時間、雇用している人数、常勤・パート等の人数を確認されていきます。

先方は医療部隊というわけではありませんので、医療機関に対する知識・認識は、それぞれの調査官の過去の調査経験によるものでしょう。

ここで労働者名簿との確認がなされます。

 

なお、ここで、人数確認がなされるので、就業規則の提出義務や産業医・衛生管理者の選任義務など、人数基準のチェックが暗になされるわけです…。

 

(2)定期健康診断

昨日の調査は、早く出てきました。

調査対応する側としては、案外軽く見ている内容なのですが、必ずチェックされます。労働基準法上は、1年以内ごとに定期健康診断を、常勤者(フルタイムの3/4以上勤務)全員に受けさせる必要があり、困ったことに、その記録を保存しておかなくてはなりません。

 

是正対応は、頑張ります的な対応や、就業規則への付記ということになりますが、過去、『全員受けさせました。』という宣言書を出さされたこともあります。

※社長が、『受けさせたくても拒否されるので無理だ!』と抵抗したせいもあるかもしれません…。

 

(3)労働条件通知書

雇い入れる労働者に対して、事業主は書面にて労働条件を通知しなければなりません。今回も、それはあるかというチェックでした。

労働条件が記載されているので、最低賃金をクリアしているかや労働時間数などもチェックされます。

無い場合は、賃金台帳・タイムカードのチェックの際に行われます。

 

多くの医療機関で存在しない書類ですが、私個人的には、就業規則よりも大事なものだと思っています。

だって、働くときの条件ははっきりしていないと、後でもめるじゃないですか。スタッフの言いなりで良ければ要らないかもしれませんが、明確に告げておいたほうが先生にとって有利なはずです。

 

ちなみに、ない場合や、項目が不足している場合は、今後使うひな型を提出させられます。

 

(4)タイムカード

よいよ、時間外労働のチェックに入ります。

全体をざっと見られて、多く働いていそうな方からチェックしていきます。担当官にもよりますが、2~3人のチェックになることが多いです。

これも担当官によりますが、見事に見抜く担当官もいらっしゃいます。

指摘を受ければ対応しようと思っている方を、多くの場合狙い撃ちされます…。

 

基本的には1日8時間、1週40時間を超えていないか、超えているなら何時間超えているかをチェックしていきます。

超えている場合は、当然36協定の提出の有無が確認されます。

 

労働時間管理をしていないケースでは、結構しっかり注意されます。当然、今後の労働時間管理方法を是正報告で示す必要があります。

 

(5)賃金台帳

時間外労働の時間数が出てきたので、今度はそれを払えているかのチェックです。

 

時間数は正しいか、単価計算は正しいか、怪しそうなところは徹底的に計算されます。

ただし、管轄が違うので、社保加入がどうだとか、雇用保険加入がどうだとかは言われません。

 

当然、払えていなければ、チェック対象は広がることになります。

遡って数ヶ月、同条件の労働者数名という形で広がります。

 

是正は支払ったことの証明を提出することになります。

 

(6)是正勧告書

改善が必要な事項について、説明をしてくれます。

だいたい1ヶ月~2ヶ月の猶予期間があり、その間に対応して、是正報告書で報告します。

 

昨日の調査は、一応是正勧告書はいただきましたが、想定内のものでした。

そもそも、3年ほど前に私が関わっているので何か出てくるはずもないのですが(ただし、やり方は変えさせてないですよ…。)、全く専門家が関わったことのない医療機関に調査が入れば、何が正しいのかわからなくなるようなカルチャーショックを受けるはずです。

 

何しろ、昭和20年代の工場労働者をイメージして出来た法律ですから…。

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2010年

5月

10日

残業代不払請求対策の本質

残業代不払請求対策について、お話する機会が多くなってきています。

 

繰り返しお話していることですが、利息の過払い返還請求に対して活躍された専門家が、次のターゲットとしているのが、残業代の不払請求です。

 

これには、そもそもとして2つの対抗策が存在します。

 

・残業代の不払いをなくす。

・不払い請求を起こそうとは思わない関係を構築する。

 

これらが、さらに個別の対策へと分かれていくわけです。

 

残業代の不払い請求対策だけを考えれば、残業代の不払いをなくせばリスクはなくなります。

しかし、従業員のモチベーションが高まるかと言えば、高まるはずがありません。

 

また制度導入時に理解を得るためには、従業員との信頼関係が必要です。

 

テクニック的な手法によってのみ、残業代の不払い対策を行うことは、残業代の不払い請求のリスクをなくす、あるいは軽減する代わりに、モチベーションの低下や離職率の上昇など、別のリスクを抱えることになりかねません。

 

そうした意味でも、『不払い請求を起こそうとは思わない関係を構築する。』ことは、必要不可欠なのです。

 

この道程は簡単なものではありません。

 

経営者にとっては耳の痛い話になります。

 

・社員は使うもの。

・給料を払ってやっている。

 

こういうスタンスで、一歩上にいては、こうした関係を構築することは難しいでしょう。

 

社員をパートナーだと捉えて付き合い、尊敬できる立ち居振る舞いをすることで、結果として得られるのが、この経営者の下で働きたいと思っているレベルの信頼なのです。

 

 

今、給料の未払いが生じたとして、御社の社員のどれだけが、それでも良い、一緒に会社を立て直そうと言ってくれるでしょう?

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2010年

5月

06日

最近の残業代支払い命令(ニュースより)

最近ニュースになっている残業代支払い命令が下った案件について、いくつかご紹介してみましょう。

 

※産経新聞・朝日新聞より転載

 

(1)「残業隠し」の証拠提出 東建コーポの社員ら

 

残業代が支払われていないとして、名古屋市のマンション建設会社「東建コーポレーション」の社員ら5人が、同社に計約3800万円の支払いを求めている訴訟で、原告側は25日、未払い残業代の請求を社員にあきらめさせる会社側のマニュアルを証拠として岡山地裁に提出した。原告側は弁論で「会社ぐるみで組織的に残業隠しをしていた」と指摘。会社側は「(反論を)検討する」とした。
原告らによると、名古屋東労働基準監督署からの残業代支払い勧告を受けて、同社は平成20年3月「『未払い賃金なし』とするように本人を誘導する」と記載したマニュアルを作成し、各事業所に配布した。会社側はマニュアルに従って原告らを説得、「未払いの賃金はない」とする書面に署名させた。原告の一人は「賃金を請求すれば配置転換すると言われ半強制的だった」と話している。

 

いろんな事情があるでしょうが、虚偽申請を強要するのは…ですね。

 

(2)過労で寝たきり ファミレスに1億8千万円賠償命令 鹿児島地裁

 

長時間残業の過労で倒れ、寝たきりになったとして、ファミリーレストランの支配人だった鹿児島県鹿屋市の松元洋人さん(35)と両親が、店を経営する「康正産業」(鹿児島市)に損害賠償などを求めた訴訟の判決で、鹿児島地裁は16日、約1億8700万円の賠償と未払い残業代約730万円の支払いを命じた。判決理由で山之内紀行裁判長は、松元さんが自宅で倒れる前の6カ月の時間外労働が月平均約200時間だったと認定。「残業代を支払わずに時間外労働をさせ、過酷な労働環境を見て見ぬふりで放置した。安全配慮義務違反は明らかだ」と会社の責任を指摘した。判決によると、松元さんは「ふぁみり庵まどか亭札元店」の支配人だった平成16年11月10日、就寝中に心室細動を発症、低酸素脳症で寝たきりになった。06年1月に労災認定を受けた。

 

月200時間の残業ということは、月370時間くらい働いていますね…。

休みがなかったとして1日13時間弱、4日休んで1日14時間超。

これはさすがに働かせすぎですね。

 

(3)「ちゃんこ若」に未払い残業代2600万円の支払い命令

 

元横綱三代目若乃花の花田勝さんがプロデュースするちゃんこ鍋店「Chanko Dining若」をチェーン展開する運営会社「ディバイスリレーションズ」(大阪府吹田市)の元社員6人が、未払い残業代の支払いを求めた訴訟の判決が17日、京都地裁であった。辻本利夫裁判長は「支払った賃金に残業代などが含まれる」とする同社側の主張を退け、同社に2600万円の支払いを命じた。
判決によると、6人は平成17~19年の間に採用され、「Chanko Dining若」の京都四条店などで勤務していたが、1日8時間の所定労働時間を超える長時間労働をしていたにもかかわらず、残業代が支払われていなかった。
判決で辻本裁判長は、同社について「原告の実労働時間を少なく算定するなど、支払うべき賃金を不当に少なくしようとする姿勢が顕著」と認定。残業代など約1500万円のほか、付加金として約1100万円の支払いを命じた

 

結果、今日のニュースで破産になってましたね。これが原因ではないでしょうが…。

 

(4)総額3億円か 不払い残業代ほぼ2年分 アイシン精機支払い

 

自動車部品大手のアイシン精機(愛知県刈谷市)は、刈谷労働基準監督署の是正勧告を受けて2008年1月~09年11月のサービス残業分の賃金を今年3月に支払ったことを明らかにした。同社はサービス残業の時間と支払額を公表していない。
同社広報部によると、是正勧告は09年10月下旬の同労基署の立ち入り検査に基づくもので、30分単位で記録された残業時間と従業員のタイムカードの出退勤時間の間に差があったという。
勧告を受けて同社は、社内調査を実施し、同年12月にパートを含む従業員約1万2千人の残業実態を個別に確認。実際の残業時間が29分でも、30分未満の残業はカットされていたことが判明。広報部は時間や支払額を公表していないが、同社関係者によると、確認された残業は計10万時間分、支払額は約3億円に上るという。
対策として、同社は4月から残業時間の記録を15分単位にし、より厳密に入社ゲートでも出退勤を記録する二重チェック態勢をとった。
同社広報部は「管理職、従業員とも時間管理の認識が甘かった」と話した。

 

15分単位で許してもらえたのでしょうか?

それにしても人数が多いと驚きの額ですね…。

 

さっと検索しただけでこういう事例が出てきます。

 

悪質なところだけがやられるというのは、近い将来誤った認識になります。

過払い請求の専門家が、ターゲットを変えて労働者と一緒に請求してくる時代は、もう目の前に迫っています。

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2010年

4月

28日

パートタイマーの有給休暇に関する疑問(2)

23日のブログの続きです。

 

アクセス数が多かったようで、やはり不安に感じている内容なのでしょうか?

 

早速、予告していた内容について回答してみましょう。

 

(4)途中で雇用契約が変更になり、所定労働日数が変わった場合は?

 

今まで週5日勤務だったのに、週3日勤務になった場合、経営者としては、10日与えた有給休暇を6日に減らしたくなりませんか?

 

あるいは、週3日勤務だったのに、週5日勤務になった場合、労働者としては、5日(比例付与ルール)しかもらえなかった有給休暇を10日にして欲しくありませんか?

 

増える・減るで、有利・不利が生じますので、明確に定まっています。おそらく通達か何かで決まっているはずですが、不勉強で明確な根拠は知りませんが、以下で間違いありません。

 

『有給休暇の付与日数は、付与日の労働条件によって決定され、その後労働条件が変わったとしても、日数は変更されない。』

 

つまり、4月1日から労働条件が変わり、4月1日が付与日であれば、週所定労働日数が増えることになろうが、減ることになろうが、新しい労働条件に基づき付与されることになります。

 

(5)雇用契約が一旦途切れた場合は?定年退職した場合は?

 

これも良く聞かれる話です。

ですが、単純な回答です。

 

『定年退職時も含め、雇用契約が一旦切れたとはいえ、実質継続した雇用と認められる場合は、残日数及び付与日数を決める勤続年数は引き継ぐものとする。』

 

ですが、定年退職時に全ての有給休暇を没収したり、とある公的機関で6ヶ月に1日足りない雇用契約を複数回継続する形で有給休暇を発生させないという取り扱いをしていたりと、少々、問題のある取り扱いが見られます。

 

“実質継続した雇用と認められる”というあいまいな表現がそういった状況を生んでいるのでしょうが、これを認めてしまうと、合法で有給休暇を発生させない雇用契約の形ができあがってしまいます。

 

→6ヶ月経過直前の休み前までで契約を切り、休み明けから契約をすれば、単に継続していない状況は作れます。

 

では、何日なら何ヶ月なら大丈夫という話になりますが、実態として、復職が明確であれば、休職・欠勤の取り扱いが通常であり、復職の可能性が不確定なら一旦雇用契約が切れるという程度の解釈をしておくのが無難だと思います。

 

(6)1日の所定労働時間数が様々な場合は、いくら払えば良いの?

 

医療機関にお客さまが多いので、良く聞かれます。

また、適切に運用されているケースも少ないです。

 

法律上定められているのは以下の通りです。

①その日に通常勤務した場合の賃金

②平均賃金

③標準報酬日額(労使協定要)

 

月給制で控除しないというスタイルは、『その日に通常勤務した場合の賃金』ということになります。

 

では、時間給で、シフト制の場合は…。

 

経営者の意図で明確に定めておかないと、どうして良いかわからなくなります。

単純に、週4日(月火木金)は8時間、週2日(水土)は4時間という、医療機関によくあるシフトで、時間給1,000円で考えてみます。

 

①の『その日に通常勤務した場合の賃金』ということになると、月火木金に休むと8,000円支給、水土に休むと4,000円支給することになります。

有給休暇の原則は日単位ですし、水土は結果的に半日ですが、1日分の所定労働として定めているものですから、水土も1日分有給休暇を減らして全く問題ありません。

 

②の『平均賃金』ということになると、過去3ヶ月の給与支給実績から計算することになります。

3ヶ月=90日 90日÷7日=12.857週 12.857週×40時間×1,000円=514,286円

514,286円÷90日=5,715円

平均賃金は5,715円ということになり、月火木金に休んでも、水土に休んでも、5,715円を支給することになります。

 

労働者にとっては、①のケースでは水・土に休むと不利です。②のケースだと月火木金に休むと不利です。

 

あとは、経営者として、どちらを選ぶかです。

(どちらの形かは、当然周知しておく必要があります。)

 

土曜日の人の確保が難しければ、土曜に休まれないように①の形を取っておくべきでしょう。

 

①のケースで全部月火木金に取得されると80,000円の支給になるので、金額を抑えたいなら②の形(総額57,150円)を取っておくべきでしょう。

 

決めていなくて、退職時等、労働者から訴え・請求があれば、基本的には労働者に有利なように処理せざるを得なくなります。

 

 

2回に分けて、パートタイマーの有給休暇について、よく聞かれることを記載してきました。

 

労使関係が良好で、先生や経営者のことを想って請求してこないだけで、ほとんどのパートタイマーは有給休暇の権利があることはご存知ですよ。

 

突然有給休暇を認めざるを得なくなると、実質的に、一気の昇級になってしまいます。

 

昇給や賞与時期に、その代りに認めていくという手段もありだと思います。

 

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2010年

4月

27日

院長・中小企業経営者のためのセクハラ講座

昨日、当初よりご相談いただいていたセクハラ行為を理由とした試用期間中の解雇が、労働者側が納得がいかないというご相談が来ました。

 

経営者側の対応は、当初よりご相談いただいていたので、抜け目なく対応できており、関係機関にも確認を取りながら進めてもらっているので、心配していません。

 

が、そもそも、セクハラ行為があったのか、あるいはある行動がセクハラに該当するのか否かというところが争点になると、きれいな線引きが難しい上、加害側と被害側で全く認識が違うので、争う余地があると言う事になります。

 

逆に言えば、通常セクハラでないことも、シチュエーションやキャラクター、相手によっては、セクハラになることもあり、院長・経営者は、特に敏感になっておく必要があるでしょう。

 

ということで、少しまとめてみましょう。

 

セクハラとは…。

 

単純に言えば、性的いやがらせ。ウィキペディアで調べると…。

 

職場・学校などで(法的な取決めがあるのは職場のみ)、「相手の意志に反して不快や不安な状態に追いこむ性的なことばや行為」を指す。例えば、「職場に限らず一定の集団内で、性的価値観により、快不快の評価が分かれ得るような言動を行ったり、そのような環境を作り出すことを広く指して用いる」といった性別を問わない用例である。そしてこのような用例を踏まえて、異性にとって性的に不快な環境を作り出すような言動(職場に水着写真を貼るなど)をする事や、自分の行為や自分自身に対して、相手が「不快」であると考えているのも関わらず、法令による場合や契約の履行以外での接触を要求する事、同性同士で同様の言動をする事も含まれる。この場合、行為者が自己の行為をセクシャルハラスメントに当たるものと意識していないことも多々あり、認識の相違に由来する人間関係の悪化が長期化、深刻化する例もままみられる。

 

とあります。

 

今回の事例も、正直、「“地方のおっちゃん(失礼!)”ってそんなもんじゃないだろうか?」と思ってしまう内容でした。

 

しかし、相手が不快に感じれば、悪気があろうがなかろうが関係ありません。

 

つまり、受け手側の主観に左右される面があり、中には過敏に反応する受け手も存在します。

 

主観ですから、行為者によっては全く同じ事を言ったり、したりしても、セクハラになったり、やさしくしてもらったになったり、ある意味不公平な仕組みです。

 

また、普段は全く嫌がるそぶりもなかったのに、退職時のはらいせでしょうか、『ずっと我慢してきました』と手のひらを返す可能性もあり、対処に困るところです。

 

で、その対策ですが…。

 

まず、セクハラはしないでください。

セクハラだと自認できる行為は絶対NGです。

 

そして、できるだけ、異性からさわやかに、好意的に思われるように意識してください。

清潔にする。小奇麗にする。おしゃれする。

これは非常に大事です。

カッコよくなれとは言っていません。

清潔になることなど、努力次第ですし、案外女性はちゃんと見ています。

 

これでかなりのセクハラは回避できます。

 

もちろん、

・業務外でこちらから2人きりになる状況を作らない。

・必要以上に身体に触れない(基本的には触れない)

・恋愛話や外見の話をしない(恋愛話はしたければ、勝手に話してくれます。)

・聞かれて嫌そうなことは聞かない

など、細かな注意点はあります。

 

しかし、基本的には、人間見た目が9割ではないですが、

『何を言った』ということよりも、

『誰が言った』ということのほうが大きな意味を持ちます。

 

また、院長・経営者は、自分以外の人間が起こしたセクハラも、管理責任が問われます。

 

定期的にセクハラについて啓蒙するなど、わかりやすく対応しておくことが重要です。

 

個人がやったことでも、やってはいけないと指導していなければ、管理責任を問われるからです。

 

いずれにしても風評被害もあるセクハラ。

 

あまり、自分の関係するところから発生させたくないですね。

 

私も、冗談を言ったつもりが、『それはセクハラですよね。』と言われることが多々あり…。反省しきりです。

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2010年

4月

26日

定年と継続雇用の違い(定年引上げ等奨励金は現実的?)

現在、労働基準法で定められている最低の定年年齢は60歳です。

 

そして、希望者全員を65歳まで継続雇用する制度の導入が義務付けられています。

 

定年と継続雇用の違いをまとめると以下のようになります。

 

【定年】

定年年齢になるまでは、年齢のみを理由とした労働条件の変更は、従来より明確に就業規則や賃金規程等に明確に定められ、運用されてこない限り許されません。

 

※許される場合も、役職定年等、責任・業務負担の軽減などを伴って行われる場合でなければ、やみくもにはできません。

 

【継続雇用】

そこで一旦雇用契約を終了します。ですから、以前の雇用契約内容を白紙に戻して、そのあとの雇用条件を労使間で話し合って決定します。

あまりに不当な労働条件(週1日1時間、時給800円)は、問題となるケースも考えられますが、現行法では、その不当な労働条件すら禁止はしていません。

 

※有給休暇などは継続した雇用として扱われるので、残日数等継続します。が、取得した場合は、取得日の労働条件での支給になります。

 

 

上記のような大きな違いがあります。

 

65歳定年だと、65歳までは原則労働条件を低下させることはできません。

 

しかし、60歳定年65歳まで希望者全員を継続雇用であれば、60歳の段階、あるいは、継続雇用を1年更新とした場合の更新時に、その責任の重さ・業務内容と量等に応じて、過去の功績とは切り分けて労働条件を決定することができます。

 

違いをご理解いただけましたでしょうか?

 

表題にあげた『定年引上げ等奨励金』は、希望者全員を70歳まで継続雇用することを求めている助成金です。

 

もちろん定年を引き上げたほうが金額は高くなります。

 

しかし、『60歳定年70歳まで希望者全員を継続雇用』でも金額は少ないですが申請は可能です。

 

継続雇用定着促進助成金という、過去にあった65歳まで希望者全員を継続雇用という助成金も、当時は抵抗感があったものです。

 

しかし、現状では法律により強制です。

 

近い将来にそうなるかはわかりませんが、法律が継続雇用制度に関する規制(労働条件の維持)を強めない限り、おそらくは強制されていくでしょう。

 

で、あれば、たとえ少額でも申請しておいて良いと思うのですがいかがでしょう?

 

繰り返すようですが、継続雇用制度とは…。

・定年前の労働条件を引き継ぐ必要はない。

・労働時間数についても制限はないので、週30時間未満として社会保険を喪失可能。

・あくまでも労働条件を提示するのは経営者、その条件によって、本人が継続希望した場合に雇用義務が生じる。

 

 

平成22年4月導入分から、制度導入後6ヶ月経過後にしか申請が認められなくなりました。

※すでに平成22年3月中に、制度を導入済みの場合は、従来通りすぐに申請可能です。

 

極端な話、“最低賃金で、週30時間未満でも働いて欲しくない、その人にしてもらう仕事が考えられない”、そんな人に辞めてもらいたいというケースを除いて、困るケースはないはずです。

 

まあ、そんな方を解雇せずに、65歳まで継続雇用していれば、70歳まで延びるのは耐え難いかもしれませんが…。

 

ちなみに、60歳定年、70歳まで継続雇用の場合、雇用保険の被保険者の人数に応じて、1人~9人の場合40万円、10人~99人の場合60万円、100人~300人の場合80万円です。

 

その他、65歳までの継続雇用制度(現行法義務)を導入後1年以上経過している、60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いる等の条件があります。

 

ご関心がありましたら、お問い合わせ・ご質問か、お電話(075-801-6333)まで。

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2010年

4月

23日

パートタイマーの有給休暇に関する疑問(1)

パートタイマーの有給休暇。

 

一昔前と比べるとかなり一般的になってきました。

 

それでもまだまだ導入がなされていない事業所も多数ありますが…。

 

ただ、そうは言っておられず、導入に際し、パートタイマーならではのご質問が出てくることになります。

 

そのあたりを今日は質問形式で回答してみましょう。

 

(1)1日8時間の人も、1日2時間の人も同じ日数を与えないといけませんか?

 

よくいただく質問です。

 

答えは、その通り、同じ日数を与えないといけません。

与え過ぎな感じがしますか?

 

良く考えてみましょう。

 

時給1,000円だとすると、1日8時間の人には有給休暇使用時に8,000円渡すことになりますが、1日2時間の人には2,000円しか渡しません。

 

つまり、日数が同じでも、価値が違うので問題ないのです。

 

 

(2)週5日1日8時間の人と週3日1日8時間の人には、同じ日数の有給休暇を付与しないといけませんか?

 

こちらは、その必要はありません。週4日以下かつ週30時間未満の方には比例付与という方式で付与することが許されています。

 

週3日1日8時間の人は、週4日以下で週30時間未満なので、比例付与の対象になります。

 

比例付与とは、週5日の人が10日だったら、それに比例して、週3日の人は○日という考え方をするものです。

 

具体的には以下の式です。

付与日数=通常の付与日数÷5.2日×週所定出勤日数

 

つまり、例の方の初年度の付与は、以下のようになります。

10日÷5.2日×3日=5.769日→5日(切り捨て可)

 

ちなみに、5.2日というのは厚生労働省が定めている数字で、一般的な正社員の週所定労働日数の平均だそうです。

 

※そこから考えると、週の平均休日は1.8日。年は52.143週なので、年間休日は93.8日。ちょっと少なめな気もしますね…。

 

 

(3)では、週の所定労働日数が定まっていない人はどうするのですか?

 

答えは、年間の所定労働日数で考えます。

 

法律で定められているのはここまでです。運用上は、年でも決まっていないと思いますので、付与日前1年間の実出勤日数に応じて付与します。

年間出勤日数が、週何日の所定労働日数に該当するのかは、以下のように定められています。

 

169日~216日→週4日

121日~168日→週3日

73日~120日→週2日

48日~72日→週1日

 

まだまだよく聞かれる質問がありますので、次回に分けようと思います。

次回は、こんな感じの質問に答えてみましょう。

 

(4)途中で雇用契約が変更になり、所定労働日数が変わった場合は?

(5)雇用契約が一旦途切れた場合は?定年退職した場合は?

(6)1日の所定労働時間数が様々な場合は、いくら払えば良いの?

 

リクエストがあれば、お問い合わせ・ご質問からどうぞ。

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2010年

4月

21日

事業場外のみなし労働時間制(営業職等)

水曜のテーマは労働基準法なので、何を書こうかとパラパラと『受かるぞ社労士』をめくっておりました。

 

※受かってますが、どこに何が載っているか一番覚えているので今でも使っています。

 

明日のセミナーでもお話する内容ですが、今日は事業場外のみなし労働時間制についての話にします。

 

お客様から確認の電話。

 

『営業職って営業手当を支払っていれば残業代は払わなくていいんだよね?』

 

最近は、この質問、経営者や総務の方、不安そうに聞いてこられます。

 

一昔前は、当たり前のようにどこでもそうだった話ですが、今や、ダメらしいというのも一般化してきている様子。

 

私は、個人的には、営業職など自分で仕事の段取りをつけるタイプの仕事は残業代なんて要るんだろうかと思っている口なので、『そうです』と危うく答えそうになりながら、『ダメですよ』と回答しております。

 

この、間違った常識の根拠となったと思われるのが、この『事業場外のみなし労働時間制』です。

 

労働者が労働時間の全部または一部について事業場施設の外で業務に従事した場合において、労働時間を算定しがたいときは、所定労働時間労働したものとみなす。

 

これが基本となる条文です。

 

外回りだし、実際に仕事をしているかどうかもわからないし、労働時間の把握はできないから、良いよね?

 

これが言い分です。

 

しかし、大原則は、『事業主は雇用する労働者の労働時間を把握する義務がある』というところにありますので、『把握しようとしたが、どうしても算定できないときは』というくらいの重い意味がここには存在します。

 

でなければ、『何時間働いても、所定労働時間働いたものとみなす』のはあまりに乱暴という論理です。

 

営業報告しかり、携帯電話しかり、定時報告しかり、始業・終業は会社という場合しかり、労働時間を算定しがたいとまで言えるケースは、情報機器が発達し、普及している昨今、なかなか難しくなっていると思われます。

 

ただ、実態としては、相手の都合もあるし、本人の働きやすさからいえば、残業代が出ないからこそ、自由に動ける良さもあって、法律で不自由にはしたくないのですが、法律上はそういうことになります。

 

もちろん、算定しがたいかどうかは、誰が判断できるものでもなく、最終的には、訴えがあって司法判断で決定されるものなので、シロ・クロをはっきりさせることは難しいです。

 

だからこそ、安全な状況を作り出す意向であれば、労働時間を把握しようとした上で、営業日報や自己申告等も織り交ぜながら、できるだけ労働時間に応じた時間外手当を支払っていくほうが無難だと言えます。

 

また、同じ営業手当を支払う場合であっても、『営業職で勤務する事によって労働時間が長くなることについての代償として、○時間の時間外手当として支給する』という定義付けをしておくことで、少なくとも、営業手当分については、時間外手当として認められますし、割増賃金単価の抑制もできます。

 

どういう場合は算定できるからダメという例が、下記の3つしか挙げられていません。

 

①グループで事業場外労働をする場合で、その中に管理者(労働時間を管理する者)がいる場合
②無線や携帯電話等で随時管理者の指示を受けながら労働に従事している場合
③外にでる前に、訪問先や貴社時刻など当日の業務について具体的な指示を受け、事業場外で指示どおりに業務をこなし、その後事業場にもどる場合

 

否認された場合のリスクを考えると、事業場外のみなし労働時間制だけで営業職の時間外手当を払わないという考え方は避けておかれるほうが無難だと思います。

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2010年

4月

16日

違法?合法?(雇用関係)

この解雇は正当ですか?

 

上記のテーマで、先日ブログを書きました。

 

解雇に関わらず、大丈夫か?という質問は大変多いです。

 

しかし、実は、そうした質問の多くは、答えが司法判断でしかはっきりしないものです。

 

両者の言い分があるでしょう。

細かな言葉のやりとりもあるでしょう。

 

ただでさえ、相談になるような微妙な話ですから、シロ・クロとはっきり出ないわけです。

 

そこで重要になるのは、『第三者が見てどう思うのか?』というところです。

 

そもそも、裁判に訴えるまで大きな問題になるかは、相手や相手の家族・友人がどう思うかというところによります。

 

また裁判になったとしても、判断基準は、法律でシロ・クロ出ない部分については、裁判官も過去の判例に比してどうか、社会通念上どうかというところになってきます。

 

例えば、減給ひとつにしても、

『いきなり通知して下げる理由を並びたてた』のと、『再三再四、改善事項を通知して、それでも改善しないので減額した』のとでは、全く違う印象になります。

 

セクハラ・パワハラなどは、そもそも同じ行動でも、行動側・受け手側の性格やとらえ方で、全く違う結論になります。

 

そして、最終的には、経営者側に戦って完全に正当性を主張する意思があるのか、正当性は主張しても条件面で労働者側に歩み寄る意思があるのかというところがポイントになります。

 

真っ黒な違法は問題外として、自分たちとしては正当な行為を行うつもりだが、法的にどうかという疑問が生じた場合は、まず、相手の家族の立場、相手の友人の立場になって、どう思うかというところを考えてみてください。

 

そこにきっちりと説明ができる状況であれば、大きなトラブルにはつながらないはずです。

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2010年

4月

14日

雇用保険法改正分施行(育児休業の給付)

平成22年4月1日以降に育児休業に入られる方(たぶん平成22年2月3日以降の出産)については、育児休業者職場復帰給付金が廃止されて、その分、育児休業基本給付金が増額されます。

 

今まで、基本給付金で30%、残りの20%を復帰給付金でという形で給付されてきましたが、今回、始めから50%渡そうということになったわけです。

 

育児休業は、あくまでも復帰を前提とした休業であり、復帰がなされない間は、30%にしておいて、復帰してから残りを渡すという、言い方は別として復帰を人質にしたような仕組みだったのですが、始めから信用して渡すようにしたみたいです。

 

もともと復帰給付金は、実際の勤務は必要なく、在籍のみが要件だったため、あまり意味がないなぁと見ておりました…。

 

まとめると…

(改正前)

休業中30% 復帰時(6ヶ月後)20%

(改正後)

休業中50%

 

時限措置の10%アップは当分延長されるようです。

 

リーフレットは下記より。

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2010年

4月

08日

誰にもわかる1ヶ月単位の変形労働時間制

一昨日、「洋麺屋五右衛門」の1ヶ月単位の変形労働時間制が要件を満たしていないとのことで、残業代の追加請求が認められる判決が下りました。

 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100407-00000091-mai-soci

 

読んでいただければ、1ヶ月単位にも関わらず、半月単位でしかシフトが決められていないことが最大の落ち度であることはわかります。

 

あまりトラブルになることのない制度ですが、制度導入でメリットがある事業所も多数ありますので、できるだけ簡単に説明してみることにします。

簡単に説明するため、詳細部分で誤解を受ける可能性がありますので、実際に導入される場合は、専門家にご相談の上でお願いします。

 

さて、一言で言いますと…。

 

『1ヶ月間を平均して週40時間に収まるように労働時間が設定されていれば、本来定められている1日8時間・1週40時間を無視して労働時間を決められる制度。』

 

ということになります。

 

本来は、1日、1週という単位で労働時間を見ていきますので、8時間を超える勤務は全て0.25倍の割増賃金が必要になります。

 

しかし、上記の通り、1ヶ月を平均して40時間に収まってさえいれば、例えその日が12時間労働だったとしても、割増賃金は必要なくなります。

 

1ヶ月単位の変形労働時間制は、就業規則に必要な事項を記載することで導入できるように、比較的簡単に導入できます。

 

その分、経営者にとって、労働者をたくさん働かせる制度という意味はあまりありません。

 

と言いますのも…。

 

1ヶ月を平均して40時間に収まって…。

これを満たすとすると、暦日数に応じて、

31日:177時間、30日:171時間、29日:165時間、28日:160時間ということになります。(暦日数÷7日×40時間…1ヶ月が何週間かを出してそれに40時間をかける)

 

一般的な週5日1日8時間の週40時間労働であれば、祝日がないと仮定した場合、

31日:168時間~184時間、30日:160時間~176時間、29日:160時間~168時間、28日:160時間となります。

 

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入することで、月・曜日の巡り合わせによっては、普通に勤務して割増賃金が発生することになってしまうケースもあるのです。

 

ということで、導入することにメリットがあるとされているのは…。

 

①1日の労働時間が8時間を超えることがあるシフト制勤務

②隔週出勤があるようなケースで、1週の労働時間が40時間を超えることがある勤務

 

ということになります。

 

そして、多くの方が誤解をされているのが、前出の177時間・171時間・165時間・160時間を超えさえしなければ、割増賃金の支払いが不要と思っておられることです。

 

実際はそうではなく、あらかじめ、1日8時間・1週40時間を超える設定をしている日について、その設定をした時間までであれば(月平均は満たしているものとして)、割増賃金が不要とされているだけなのです。

 

つまり、もともと9時間労働の日に10時間労働してもらった場合は、例え月単位で前出の時間数を超えていなかったとしても、その1時間について0.25倍の割増賃金は必要になってしまいます。

 

洋麺屋五右衛門のケースでは、このあらかじめがなかったわけですから、違法とされても当然のケースだったと思われます。

※詳細は知りませんので推測です。

 

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入すれば…。

 

月9火9水4.5木4.5金9土4.5 40.5時間

月9火9水4.5木4.5金9土0   36時間

月9火9水4.5木4.5金9土5   40.5時間

月9火9水4.5木4.5金9土0   36時間

月9火9              18時間 合計171時間≦171時間

 

月7火7水7木7金7土7 42時間

月7火7水7木7金7   35時間

月7火7水7木7金7土7 42時間

月7火7水7木7金7   35時間

月7火7水7       21時間 合計175時間≦177時間

 

こんな勤務でも、決められている時間を超えなければ、割増賃金の支払いの必要がないわけです。

※上記は、曜日固定で考えていて、最も曜日が経営者に不利な場合を考えています。シフト制で自由に決めることができる場合は、月の中で決められた総時間数内で決めることになるので、もう少し長い時間設定が可能です。

 

ただ、ご覧の通り、多く働いてもらうための制度ではなく、先にあげた通り、1日や1週で、8時間や40時間をはみ出るケースがある場合の対応策というのが、現実的な考え方です。

 

また、シフト時間数=前出の時間数(177・171・165・160)でシフトを組んでいる場合で、欠勤・遅刻・早退の類がなければ、割増賃金の計算を、『総労働時間数-前出の時間数』で計算していただいても問題は生じません。

 

これでもできるだけわかりやすく説明したつもりですが、それでもややこしいですね…。

 

なお、少しでも長い所定労働時間を設定したい場合は、1年単位の変形労働時間制を採用することになります。そうすることで、お盆・GW・お正月といった長期の休みの分を、他の期間にばら撒くことができます。

労働者にとっては、厳しい制度ですので、導入には労使協定が必要ですし、制限もいくつか存在します。また1年間(最低三ヶ月)の勤務日と労働時間をあらかじめ決めておく必要があります。

 

これはまた別の機会に…。

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2010年

4月

06日

この解雇は正当ですか?

『これこれこういう事情なんですが、解雇できますかね?』

 

こうした相談を受けることが多々あります。

 

不当解雇は法律で禁じられています。

 

しかし、正当・不当の判断は、実は裁判でしか明確な答えは作りだされないのです。

あまりにも悪質というか、明らかというか、そうした場合は、労働基準監督署が指導するケースもありますが、微妙なケースになってくると、労働基準監督署では判断ができないわけです。

 

解雇というのは、労働者にとって生活の糧を奪われてしまう一大事です。

 

日本国は憲法で勤労の義務を課し、最低賃金を規制し、結果として生活補償をしているというスタイルの中、働く場所を奪われることを容易に認めていては、生活補償をしていないのと同じ事になってしまいます。

 

反面、事業主の代理行為を行わせる労働者を、どんな場合も辞めさせられないとなると、事業主は怖くて雇用ができなくなってしまいます。労働者が行った代理行為の責任は事業主が取らされるわけですから…。

 

従って、なかなか、これはシロ、これはクロとか線引きができないので、結果、裁判での司法判断にゆだねられるわけです。

 

では、どうすれば良いのか?

 

納得してもらうしかないわけです。

 

訴えを起こされない解雇をすれば良いわけです。

決して解雇を推奨しているわけではありませんが、お互いにとってプラスにならない雇用契約を無理に続けることもおかしい話です。

 

何故、解雇する・しないということになっているのか?(注意・指導)

 

当然、それに対して、労働者は弁解するし、今後の改善を誓うはずです。

 

そこでチャンスを与えます。(挽回の機会)

 

それで改善すれば良いです。解雇の必要はなくなります。

ただ、多くの場合、改善しません。

 

再度、注意指導・挽回の機会と繰り返して、最終的に労働者にも納得してもらうわけです。

 

納得というところまで行かなくとも、少なくとも、事業主に恩義を感じる程度にまでは持っていくことができるはずです。

 

そうすれば、解雇ではなく、退職勧奨というところまで持っていくことができるはずです。

 

解雇と退職勧奨は、ともに事業主都合の雇用契約の終了ですが、本人が同意しているかどうかというところで、雲泥の差があります。

 

そうなれば、そもそも正当・不当を問う必要がなくなるわけです。

 

私が『裁判で勝てる解雇はほとんど無理』と回答するのは、退職勧奨に持ちこめなかった解雇は、やはりどこかに正当性に欠ける部分があると思っているからです。

 

大事なのは、コミュニケーションを取ること、普段から言動に対する注意・指導(人格否定ではありません)をしておくことだと思います。

 

何も言わずにおいて、最終的に非難とともに、どこが悪いかも伝えずに、チャンスも与えないで解雇を告げたとしても、納得がいくはずがありません。

 

 

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2010年

4月

04日

雇用保険の適用拡大(雇用保険法改正)

4月1日から雇用保険の適用範囲が拡大されました。

 

従来)6ヶ月以上の雇用が見込まれること・所定労働時間数が週20時間以上

 

改正)31日以上の雇用が見込まれること・所定労働時間数が週20時間以上

 

これにより、週所定労働時間が20時間以上の方については、ほとんどが適用されることになります。

 

上記のような表現にはなっていますが、実質は…。

『31日未満の雇用契約が明らかである場合を除き、所定労働時間数が週20時間以上』

 

契約書の“更新する場合がある。”の表現や、同様の雇用契約で31日以上雇用された実績がある場合なども、雇用保険の資格があることになります。

 

昔は、“1年を超える期間の雇用が見込まれること”だったのが、“6ヶ月以上”になり、今回、“31日以上”になったわけです。

その昔は年収見込みのハードルまでありましたので、ここ10年弱で、かなり適用拡大されました。

 

会社としては、雇用保険ですので、人数がまとまらない限りは、そう大きな負担にはなりませんが、事務上の煩雑さが予想されます。

 

このことが、逆に30日間の有期雇用を増やすことにつながらなければ良いのになと思ったりもします。

反面、考えようによっては、取得が徹底されれば、不正受給の抑制にもつながる可能性があるかもと思ったりもします。

 

保険料率も、被保険者分が4/1000→6/1000、事業主分が7/1000→9.5/1000に増加します。

 

財政のずさんさを指摘されての毎年の見直しですが、毎年決定が遅いのはやきもきさせられます。

 

今年は、協会けんぽの料率もガンと上がりました。その上雇用保険も上がって、当たり前に9月には厚生年金保険料率も上がります。上がり幅が小さくても、じわじわと毎年やられるときついですね。

 

昔は賞与からは1%しか厚生年金保険料を控除されなかったのに、賞与からも保険料を取ることになって、平成15年に86.75/1000だった保険料を一旦67.9/1000に下げましたが、6年かけて78.52/1000までじわじわと上がってきました。そしてあと7年(平成29年9月からは固定らしい)で元に戻されるわけです。なんとも見事な“賞与からの保険料控除作戦”が完成してしまいますね…。

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2010年

3月

30日

時間単位有給休暇(H22.4.1労基法改正)

明日、平成22年4月1日より、労使協定を条件に、年次有給休暇の時間単位取得が認められるようになります。

 

時間単位の有給休暇。

 

一般的には、労働者に有利な取り扱いという印象はないでしょうか?

 

私にはそう見えます。

労働者の都合に応じて取りやすい形、選択の幅が広がるわけですから、何も労使協定を条件にしなくてもと思うわけです。

 

しかし、年次有給休暇は以下のような趣旨で制定されているようです。

 

『労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るとともに、ゆとりある生活の実現に資する。』

 

従って、『まとまった日数の休暇を取得する』というのが本来の趣旨だそうです。

 

今回の改正の労働基準法のパンフレットにも記載してあります。

 

つまり、本当は、本来の趣旨から認めたくなかったが、消化率が5割に満たない現状、仕事と生活という観点から見ると、時間単位有給休暇を認めることも、労働者の希望として存在するので、やりすぎないように制限をつけて認めよう。

 

こんな感じになったのだと思います。

 

制度の内容としては、5日を最大とするというのが特徴で、使おうが使わなかろうが、毎年5日を最大とします。

普通の有給休暇と時間単位の有給休暇は日数を別にカウントするのではなく、あくまでも、通常の日数管理のうち、1年に5日分は時間単位で取得できるという考え方です。

5日以上ではなく5日を最大です。

先ほどの制度の趣旨と労働者にとっての使い勝手が相反しているので誤解しているケースも良く見られます。

 

いくつか就業規則にも反映させましたが、なんとまぁわかりにくい制度だこと…。

※制度の説明、就業規則の改定など、メール対応も可能ですので、必要なら気軽にこちらからお声掛けください。

 

どうやら都合よく解釈して運用されるケースが多そうです。

 

ただ、“労使協定を条件に取得できるようになった”だけです。

労働者の希望があったとしても認める必要はないのですが、思ったよりも、導入される事業所が多いのにびっくりしました。

 

元々あった制度を法律に合わせてというケースも含めてですが、このあたり、経営者の多くが、可能な限りで労働者の希望に沿うように動いておられることの証明のような気がします。

 

労使お互いの思いやり。

 

本当は、労働基準法なんて要らないのかもしれませんね。

 

ただ、退職が決まった労働者の豹変ぶりを何度も目の当たりにしていると、なかなか、信頼関係だけでとは言いづらいのが、この職業の性です…。

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2010年

3月

28日

時間外手当不払請求対策セミナー4/22

ウェブ申し込みと左のチラシからの申し込みで、参加費用を無料にしました。

 

その理由は…。

 

経営者のみなさんにお伝えしないといけないことだからです。

 

もっともっと多くの経営者のみなさんに参加して欲しいからです。

 

『うちは“ちゃんと払っているから大丈夫!”』

 

こんな風に思っている経営者のみなさんに参加して欲しいからです。

 

これから訪れるであろう、不払残業請求が当たり前になってくる時代に向けて。

驚くほど、どこの会社にも不払が生じているのです。

 

労働基準監督署の調査が当たったところは、逆にラッキーかもしれません。

そこで、修正をしてもらえます。

労働者からの弁護士さんや司法書士さんを伴っての不払請求に比べて、監督署はやさしいですから。

 

今、気づいていない経営者のみなさんにどうやって気づいてもらえるのか?

 

目をそむけている経営者のみなさんにどうやって目を向けてもらえるのか?

 

過払い利息の返還請求の次が、残業代請求だという現実。

時間外手当を法律通りに払えていない事業所がほとんどだという現実。

労使関係が良好だから大丈夫、今までも大丈夫だったからということが、決して大丈夫ではない現実。

寝た子を起こすようでという話は、寝た子を起こして回る人が出てきた現在では、リスクを抱えているという現実。

 

逆に労使関係が良好な時なら、時間外手当不払請求がまだ一般化していない間なら、手を打つことができるということ。

 

是非、一度、お話を聞きに来てください。

 

参加費は無料になりました。

 

参加のハードルは経営者のみなさんの大切なお時間だけです。

 

損をさせないセミナーにすることはお約束いたします。

 

左の一番上のイベント案内から、詳細の確認・お申込みをお待ちしております。

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2010年

3月

25日

有給休暇の買い取りは良い?

答えは…。

 

買い取りの期待を持たすことは良くない。

しかし、最終的に買い取ったとしても時期次第では問題ない。

 

制度として覚えると、頭を使わないといけませんので、理屈で覚えておきましょう。

 

労働基準法、監督署等の考え方は…。

 

『有給休暇は取得されなければならない。』

『有給休暇の取得を妨げるような制度は違法。』

 

上記に基づいています。

 

買い取り制度があれば、労働者が休みよりもお金を欲しがってしまう可能性があります。ですから、取得を妨げるのでアウトとされているのです。

 

皆勤手当を有給休暇取得により支給しないのも、同じ理由でアウトになります。

※少額の皆勤手当で有給休暇取得に影響がないものは問題ないらしいですが…。

 基準もないので、やらないほうが無難でしょう。

 

ただし、時効が訪れたものや、退職により消化不能となったものについては、買い取ったとしてもアウトにはなりません。

 

ただ、それが蔓延してしまうと、他の労働者も同様に貯めておいて、最後に買い取ってもらおうという考えができてしまいますので、退職者に買い取りを求められた場合は、こうした論法で拒否していただくことになります。

 

1.労基法上、有給休暇の取得促進を妨げることはできない。

2.今回の消化しきれない分を買い取ることは、あなたの取得促進には関係ないが、今回買い取ったら、今後、同様に貯めておいて買い取りしてもらおうと思う人が出てくる。

3.従って、今回の買い取り希望に応えることは有給休暇の取得促進を妨げることになるので、買い取りはできない。

 

前述の、『退職して消化しきれないものを買い取ることは違法ではない』という情報はインターネット上にもあふれています。

 

買い取り違法だけで説明すると突っ込みを喰らいかねません…。

 

退職時の有給休暇の一括請求に関して少しだけ。

 

防ぐ手段は基本的にはありません。

あるとしたら、お願いすることでしょうか?

後は、退職の申し出の際に、退職日を会社が決定してもらうことに同意を取ること。

有給休暇は労働日にしか取得できませんから、退職日以降の日に請求はできません。一括請求させたくなければ、早期の退職日を設定することになります。

 

 

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2010年

3月

23日

有給休暇の一般化

年次有給休暇についてのお話です。

 

年次有給休暇は働くほとんどすべての人(週所定労働日数が1日以上)に付与されるものです。

 

パートタイマーの有給休暇、法律上は、当たり前に付与されるものですが、5年前だとほとんど機能していなかったように思います。

 

経営者にとって、月給者の有給休暇と時間給者の有給休暇は、感覚として全く違います。

 

月給者は休んだ分の賃金を控除しない。

時間給者は休んでいるのに賃金を支給する。

 

同じことなのですが、『マイナス(控除)を行わない』のと『プラス(支給)を行う』のでは、感覚が違うのも大変理解できます。

 

大変気持ちがわかるだけに、私も、過去は、あまり積極的にアナウンスしていませんでした。

 

いわゆる『寝た子を起こさない』、問題になっていない、請求されていないのに、わざわざ経営者側から動きたくないという方がほとんどであり、それもやむなしと思っていたからです。

 

※取らせないというのは、違法だというご説明はもちろんしていましたが…。

 

ただ、もはや、寝た子は完全に起きてしまっています。

 

それは、退職時の一括請求という形でやってきます。

私たちにも有給休暇が法律上あるんじゃないですか?という質問がやってきます。

 

だからこそ、事前に対応して計画的に対処していく必要があるのです。

 

今まで有給休暇が機能していなかった組織で、有給休暇が機能し始めるというのは、フルタイムの時間給者であれば、4%~9%程度の昇給と同等の効果があります。

 

※10日付与→月0.83日付与→月170時間勤務(1日8時間週40時間)なら6.64時間分→4%→96%の勤務で100%の賃金→4.2%の昇給(20日なら8.4%)

 

言われてからでは、法律ですから、認める以外に手段がありません。

 

ですから、事前に対処しておけば良いのです。

 

対処法としては…。

 

『有給休暇を機能させること』を昇給とする。(時間給はそのまま)

 

これが一番適切だと思います。

 

昇給時期を外したのであれば、恩恵的賞与の代わりにしても良いと思います。

※給与規程に基づく、ルールにのっとった賞与は代わりにすることはできません。

 

とにかく、負担が増えるのは間違いないので、負担を増やさないように、労働者が納得いくように、他の費用負担と引き換えにして、有給休暇を機能させるのが、最も上手な機能化の手段だと言えます。

 

医療機関に多いのですが、退職金規程・特別なルールがないのに、結構な退職金を支給されるケースがあります。

 

人それぞれの考え方ではありますが、辞めていく人に法的に支給義務のない退職金を支給するよりも、今いる人、これから頑張ってくれる人が働きやすいように有給休暇を機能させるほうが、法的にも経営的にもプラスになると私は思います。

 

ですから…。

『ルールじゃなく恩恵的に、長く勤務していただいた方には、気持ちで少額の退職金を今まで支給してきましたが、これから辞めていかれる方今いらっしゃる方をケアすることのほうが大事だと思って、退職金の支給は原則なしにしてしまって、有給休暇を法律通りに使っていただけるようにしようと思います。』

 

こういう説明をしておけば、単純な負担増は避けられて、法的なリスクは下がるということになります。

 

是非、検討してみてくださいね。

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2010年

3月

16日

平成22年4月1日施行改正労働基準法

4月1日より、改正労働基準法が施行されます。

 

大きな目玉は、月60時間を超える時間外労働に対する割増率の引上げです。

 

中小企業については、3年間の猶予措置がありますので、私どものお客様にあまり関係ないかと思っておりました。

 

が、中小企業の定義を確認しますと、落とし穴が…。

 

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2010年

3月

14日

残業代ちゃんと払っています!

ほとんどの経営者はそう思っていらっしゃるでしょう。

 

でも労働基準監督署の調査を受けることになると驚かれます。

 

杓子定規に労働基準法を適用すると、ほとんどの経営者に残業代の未払いが生じています。

 

その経営者の主張、私には十分過ぎるほど理解できます。

 

しかし、最後は法律です。

 

労働基準監督署の調査の場合、善意ある経営者には、やさしい是正勧告書が渡されます。

 

『不足分について今後改善するように!』といったものや、『2ヶ月分だけ遡って修正するように!』といったものです。

 

でも、弁護士さんや司法書士さんを伴っての請求、あるいは1人加入できる労働組合からの団体交渉となるとそうはいきません。

 

2年分きっちり請求してきますし、同額の付加金なども請求してきます。

 

払うべき仕事をしている人に払わずにごまかしている経営者を味方するつもりはありません。

 

でも、良かれと思って、労働者のことを思って、自分たちの役員報酬を削りながら賃金を支払っている経営者がそうした請求を受けることは、何としても阻止しないといけません。

 

そして、そうした経営者のほとんどが、残業代の不払いが生じていることを認識していません。

 

だから、私のような者のアナウンスにも反応できません。

 

これは何とかしないといけないことです。

 

何故、今と思われるかもしれません。

 

何故なら、おそらく2年後には、そうした未払いの残業代請求がもっと当たり前になされるようになっているから…。

 

その時に2年間遡って請求されても大丈夫なように、そして、一般的でない今だから打てる対策があるから…。

 

セミナーでも無料個別相談でもかまいません。

相談して大丈夫なら何よりの話。

まずは、目を向けてみてください。

 

しばらくは、しつこいくらいにアナウンスしていこうと思います。

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2010年

3月

09日

見えざる時間外手当不払い(1)

私自身は、時間外手当について、下記のように考えています。

 

・自分の仕事の段取りを自分でする人には不要

・ライン労働者や新入社員のように指示や決まりで仕事を行う人には必要

 

だから、労働基準法とはちょっと違ってますね。

 

労働基準法自体が、工場労働者をイメージして作られたものですから、それも当たり前かもしれません。

 

ご自身で仕事の段取りを組む人が時間で評価されるというのにどうも抵抗があります。

法律ですし、健康管理の面でも長時間労働は防がないといけないという話もあります。

でも、経営者は誰も守ってくれませんし、時間で評価してもらえません。

もちろん、雇用される者と違って、多くの報酬を得ることができる可能性はありますが、多くの借金を抱える可能性もあります。

 

だから、経営者が労働法令を熟知していないがために、残業代未払い請求のリスクに脅かされるというのが、どうして合点がいかないのです。

 

残業代不払い請求が、若い弁護士さんや若い司法書士さんの一般的な業務になるのが例え2年後だったとしても、賃金の消滅時効は2年間ですから、今支給する給与だって未払い扱いされてしまいます。

 

『うちは残業代は払わない』

こんな風に、言いきっている経営者。

 

『営業手当、管理職手当を支払っているから』

と少し不安ながらも、直視しようとしていない経営者。

※ほとんどのケースでアウトでしょう…。

 

『うちは、必要以上にケアしてあげているから大丈夫』

と、まさか自分のところで不払いが生じているとは思っていない経営者。

 

どれも、リスクを把握して、定義を明確にして、労働者にきっちり伝えておけば、リスクはなくす、あるいは減らすことができるのですが、実態としては、どのケースでも残業代未払い債務が増えていっています。

 

特に、最後のケース。

例えば、よく頑張っているからということで、でも賞与だと半年に1回だから、月々のほうが助かるだろうと、普通の給与とは別に、特別に手当を支給してあげようという意図で支給されているケース。

 

特別の加算だから、まさか、時間外手当の単価計算に入れないといけないとは思っていないわけです。

だって、同業他社では、あり得ないような手当です。

でも、労働基準法上は、単価計算に入れなくて良い手当というのは限定列挙(例外なし)で決まっています。

 

・家族手当(家族の数等に応じて支給されているもの)

・通勤手当(通勤費用に応じて支給されているもの)

・別居手当(単身赴任手当等、費用負担が増加してしまうことの補填)

・子女教育手当(別居手当同様、費用負担が増加してしまうことの補填)

・住宅手当(住宅に要する費用に応じて支給されているもの)

・臨時に支給する手当(あくまでも臨時)

・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる手当

 

経営者としては、臨時に支給する手当だと思っていても、前述のような手当だと、毎月定額支給ですから、そうは理解してもらえません。

 

おかしな話ですよね…。

 

先ほども記載しましたが、きっちりとした定義をしてきっちり伝えることで防げる話です。

 

監督署はやさしいですから、まだ融通をきいてくれます。

でも、弁護士さんや司法書士さんを伴った残業代未払い請求では容赦ありません。

 

そして、一番大きい問題は、経営者が気づいていないケースです。

多くは、労働者にとって素晴らしい経営者であるにも関わらず、そうしたリスクを抱えさせられている。

でも気づいてないので対処ができない。

 

だから、どの経営者も一度、疑似監査、疑似残業代未払い請求を受けてみられることをお薦めします。

 

労使関係が良い今なら、将来出てくるかもしれない、理不尽な労働者に対するリスク回避をするという理由で、定義付けを明確にすることもできるはずです。

 

今、動こうという方は是非、お問い合わせからご連絡先等をいただければと思います。

 

また、こうした対処方を4月22日(木)のセミナーでもお話します。

よろしければこちらもどうぞ。

 

近々、パッケージ商品も発表予定です。

ブログ・ツイッターメールマガジン等でのモニター募集も検討していますので、それぞれチェックをお願いいたします。

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2010年

3月

02日

残業代不払い請求への対処

退職金以外の賃金債権の消滅時効は2年間。

 

不払いの賃金があったとしても2年後には請求権がなくなってしまいます。

 

4月22日(木)に行うセミナーでは、残業代や時間外手当の不払い請求、そもそものサービス残業など、経営者が訴えられ、かつ、金銭的実害があって、その上、裁判で勝ち目のないという、とんでもないリスクについてのお話です。

 

もう一度重要な個所を拾い上げれば…。

・金銭的実害がある。

・裁判で勝ち目がない。

 

うちは関係ないと思っている経営者のみなさま。

 

実は関係あるケースが多いです。

 

・労使関係が良好だから訴えられない。

 →辞めることが決まった途端、手のひらを返すことがあります。

 →管理職が部下から恨みをかっている可能性もあります。

 

・うちはちゃんと払っている。

 →労働基準法ガチガチに考えて払えているでしょうか?

 →たくさん払っていれば良いわけではありません。

  時間外手当として払えているかどうかです。

 

たとえば、1日1時間分の時間外手当が払えていなかったとして…。

※多くの中小企業では、労働基準法ガチガチに考えれば当たり前のケースです。

 

300,000円の月給なら、時間外手当は時間あたり2,200円程度です。

2,200円×20日×24月=1,056,000円

月20日出社で12カ月分だと105万6000円です。

 

20人いらっしゃれば、2000万円。

 

付加金請求されれば、倍の4000万円。

 

従業員20人の中小企業には存続にかかわる金額になります。

 

繰り返すようですが、監督署的な目線でみれば、多くの会社で、1日1時間分程度の不払いは存在しています。

 

そして、残業代請求が、利息の過払い請求の次のトレンドとして狙われているとすれば…。

 

早く手を打たないと、もっと一般的になっているであろう2年後に、とりかえしのつかないことになっている可能性が出てきます。

 

今やっておけば、2年後には、遡及請求されるものがなくなるわけです。

 

まずは、労働基準法ガチガチに計算した場合との差額を計算してみましょう。

 

その恐怖を受け入れてから、対策は始まるはずです。

 

自社の場合はどうなのか?

 

お知りになりたい場合は、無料個別相談へのお申込みください。

 

いきなりの個別に抵抗があれb、4月22日(木)のセミナーへご参加いただければ、残業代不払い請求の今がおわかりいただけるはずです。

 

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2010年

2月

23日

精神疾患(うつ等)と休職制度①

最近、ご相談を受けるケースで増えているのが、精神疾患による休職です。

 

うつ等の個別の疾患内容については、専門家ではありませんので触れません。

 

あくまでも、経営者の立場からのお話です。

 

まず大前提をひとつ。

 

雇用される労働者は、雇用する経営者の代理行為をしています。

雇用する労働者が行ったことは、経営者が行ったこととして責任を問われます。

 

ですから、解雇を乱用することはできませんが、自分の代わりに言動してもらうことが不安な状況であれば、休職命令を出すことができます。

丁寧な手順で言えば、医師の診断を受けさせて、その結果に基づき対処するということになるでしょう。

 

そこで労務不能の診断が出れば、休職となるわけです。

※実際には本人から申し出てくるケースが多いです。

 

ちなみに、この休職制度、制度作成自体義務ではありません。

 

しかしながら、労務不能だから、雇用契約の労働者側の義務を果たせないので債務不履行で雇用契約解除というような杓子定規に進めることは、社会がなかなか許してくれません。

それこそ不当解雇などと言われかねません。

 

ですから、一定期間の休職制度を置いておき、その制度に則って、自然退職という流れを作っておくわけです。

※あくまでも経営者側からの見方です。労働者側からすれば救済措置というありがたい制度になるわけですが、あまり労働者にその意識はありません…。

 

『ルールだから』というのは、大変便利な理由です。

 

精神疾患に限らず、病に伏せっている人に対して、退職の通知をするわけですから、なかなか言いづらいものです。

 

そういう意味でも、制度があることで救われるケースが最近よく見かけられます。

 

で、精神疾患と身体疾患でどう違うのかと言えば、わかりやすさでしょうか?

 

『働ける』『働けない』

『復帰できる』『復帰できない』

『原因が何か?』『業務上?』『私傷病?』

 

血液検査などで○×で決められませんので、本人の主張が通りやすい傾向にあるように感じられます。(すみません。あくまでも感覚です。)

 

ちなみに、前述の代理行為的考え方から、経営者の指定する医師の診断を受けさせることは、問題ないとされているようです。

また、そういう意味で、あくまでも復職の可否を決めるのは、経営者という考え方も成立しています。

 

しかしながら、最終的に、その決定に不服があるとトラブルになる可能性もはらんでいます。

 

では、どうしておけば良いのでしょう?

 

ひとつは、就業規則への記載は当たり前として、ルール・周知を徹底しておくこと。その内容も、様々な状況を想定して、たとえば、中途半端な期間復職した場合、復職の可否判断が難しい場合のリハビリ勤務などの手順、一旦退職した後再就職希望の受け入れ等、きっちり決めておくことが求められます。

 

そしてもうひとつ。

面倒なことだと思わずに、本人の健康な状態での復帰を望んで、休職中も対処を心がけることです。

ここでのコミュニケーション不足は、最終的なトラブルにつながります。

精神疾患は、誰でもがかかる可能性がある病です。

 

行き過ぎた優遇はする必要はありませんが、少なくとも身体疾患と同様のものであるという認識で対応する必要があるでしょう。

 

機会があれば、細かな規程例などもご紹介させていただきますね。

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2010年

2月

16日

時間外労働の種類(法定外・所定外)不払い残業代対策①

正社員は何時間働けば、月給を手にできるでしょう?

 

月給は何時間の労働の対価なのでしょう?

 

答えられる経営者、答えられる労働者、案外少なかったりします。

 

時間給なら1時間おいくらとはっきりしていますが、月給の場合、そのあたりがうやむやになっているケースがすごく多いです。

 

①働くべき時間とした時間帯すべての時間に対する対価

②週40時間の労働を1カ月おこなったことに対する対価

③月170時間の労働に対する対価

 

上記の内容は、似ているようで違います。

それぞれ、その人の実質時間給は変わってしまいます。

 

そして何より、追加で支給すべき時間外労働の数え始めの時間が変わってしまいます。

 

一気に説明すると長文になりますので、今回は表題の件を説明しておきます。

 

所定外の時間外労働というのは…。

・雇用契約において賃金の対価として定められた時間以外の労働

 

法定外の時間外労働というのは…。

・週40時間、1日8時間(変形労働時間制採用時は一定期間内で平均週40時間)を超えた労働

 

いわゆる25%の割増が必要なのは、法定外の時間外労働です。

 

たとえば、

月160時間の対価として月給160,000円をもらっている人であれば、変形労働時間制を採用しておらず、その月の初日が月曜日で、月-金(土日祝休み)で1日8時間労働、祝日がなかった暦日30日の月の場合、おそらくは、月・火が5回ありますから、176時間の労働になるはずです。

 

この場合、週40時間・1日8時間は超えていないので、法定外の時間外労働というのは行われていません。

 

しかし、月給の対象が160時間だと雇用契約で定めているので、16時間については契約外の労働ということで、所定外の時間外労働ということになります。

つまり、時間外手当が発生するわけです。しかし、法定外の時間外労働ではないので25%割増は必要ありません。1,000円×16時間=160,000円ということになります。

※160,000円÷160時間=1,000円/時間

 

しかし、これが暦日が28日の月の場合で、祝日もない場合。

1日だけ9時間働いてしまったとすると、どうなるでしょう。

月の総労働時間数は161時間。ですから所定外の時間外労働は1時間。

しかし、9時間働いた日の1時間は法定外の時間外労働ですから割増が必要です。

結果、1,000円×1.25×1時間=1,250円の時間外手当が必要ということになります。

 

今回は、月給の対象労働時間数を決めている場合の話です。

これが、月-金(土日祝休み)で1日8時間、これで勤務すべき時をすべて勤務した場合の労働の対価と決められていたら、最初の方の例では、所定外の時間外労働はなかったことになります。

 

あるいは、月給の対象労働時間数が170時間と決められていたら、これまた、最初の例では所定外の時間外労働はなかったことになるのです。

 

つまり…まとめますと…。

 

所定外の時間外労働(100%の支給:上記例の1,000円)

・労使間で取り決めた時間との比較

(自由に決められる→過多な労働を強制せず最低賃金を超えていれば…。)

 

法定外の時間外労働(125%の支給:上記例の1,250円)

・法律に定められた時間との比較

(1日8時間・週40時間以上の労働→変形労働時間制採用時は除く)

 

ということになります。

 

つまり、一般的な時間外手当のうち80%(100%/125%)は、自由に決められる労使間での『月給がどれだけの労働の対価なのか』という取り決めによって左右されているわけです。

 

そして、その『月給がどれだけの労働の対価なのか』ということが定められていないケースが圧倒的に多いのです。

 

定められていなければ、労使間が順調な時期は理解しあって折り合いますが、戦闘モードに入れば、お互いに都合の良い解釈をしていきます。

 

経営者の立場としては、ここを明確にかつ有利にしておくことで、時間外手当の不払い請求を起こされた際のリスクをかなり低減できます。

 

口頭でのご説明・詳しい対応策の検討が必要でしたら、お気軽にご相談ください。

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2010年

2月

14日

医療機関の高齢者雇用

60歳から65歳の高齢者の上手な雇用の仕方。

 

一昔前に社会保険労務士が提案しまくった内容です。

 

単純に言えば、厚生年金を全額受給できて、高年齢雇用継続給付を最大限もらえる雇用条件によって再雇用しようという内容です。

 

もちろん違法でもなければ、悪意的でもなく。

 

雇用主にとっても、スタッフにとっても、再雇用を推進する国にとっても喜ばしい内容です。

 

しかし、現在では、男性の多くが、特別支給の老齢厚生年金の定額部分をもらえない年代になり、あまり、言われなくなっています。

 

実行して効果が高いのは…。

①ある程度の額の特別支給の老齢厚生年金があること

(定額部分の支給・厚生年金の加入期間が長く60歳までの平均給与が高いこと)

②ある程度高額の給与を60歳時点でもらっていたこと

 

これらを満たすケースです。

 

そうです。医療機関にはまだいらっしゃいます。

女性なら、まだ定額部分の支給を受けられる方がいらっしゃるのです。

 

男性は、昭和24年4月2日以降生まれの場合、定額部分の受給は受けることができません。

しかし、女性については、今年60歳を迎えられる昭和25年4月2日以降生まれの方でも、63歳から定額部分を受給できます。

それ以前なら、昭和21年4月1日以前生まれなら60歳から、昭和21年4月2日~昭和23年4月1日なら61歳から、昭和23年4月2日~昭和25年4月1日なら62歳から定額部分を受給できるのです。

 

そして、助産師・看護師といった資格職の方は相応の給与をもらってこられています。

 

個人医院にお勤めで厚生年金の加入が少ない方を除けば、上記の①②を満たす方が結構いらっしゃるのです。

 

そして、必要不可欠となる20時間以上30時間未満の勤務という要件も、一般業種に比べて満たしやすい環境にあります。

 

多くは対応されていると思いますが、まだのところがあれば、是非、ご検討ください。

 

誰も損をしない、みんなが喜ぶとても良い手法ですから。

 

ご不明の点があればお気軽にご相談いただければ結構です。

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2010年

2月

09日

労働基準監督署の調査

 

先日、労働基準監督署の調査に立ち会ってきましたのでその時の話。

 

今回対象となったのは医療機関でした。

 

労働者にとっては天国のような働く場なのですが、いろいろとご指摘をいただきました。

その中から一部をご紹介します。

 

(1)時間給者への定額の手当

こちらでは、時間給者に対して、よく頑張ってくれているのでと、定額の手当を出されています。それも2万円~3万円程度ですから、時給に換算すると結構な額になります。

しかし、これが、指摘を受けてしまうのです。

 

指摘内容は、時間外手当の単価計算に算入されていない。

 

確かに…。

もちろん、労働基準監督官も意地悪で言っているのではありません。

現状で、労働者からの訴えがあれば、追加の支給が必要になると心配して言ってくださっているわけです。

 

口頭にて、『法定以上の時間外手当として』という説明をしての支給とご説明しましたが、現状の規程では大丈夫とは言いづらいと…。

 

遡及しての追加支給とならなかったのは、悪意のなさと、実質的に上乗せ支給であることが明白だったからでしょう。

これが賞与時にまとめて払われていたら何の問題もないわけですから、ある意味おかしな法律です。

ちなみにここは、さらに賞与も別であるんですけどね。

 

今回、きっちりと賃金規程を見直し、労働条件通知書にも記載しておきました。

 

(2)休憩時間

これは、過去の医療機関の調査でもよく指摘された内容です。

 

たいていのパート勤務者は、休憩時間を好みません。

なぜなら、その分、拘束時間が長くなるから。

休憩しているくらいなら、早く終わらせて帰りたいからです。

夕飯の支度もあれば、子供も帰ってきますから。

その要望に応えて、休憩は最小限にしてもらって、その休憩時間を申告してもらって時間給によって給与を計算する。

 

これが、『休憩を取らせていない』との指摘を受けます。

 

本人の要望なのに…。

 

確かに労働基準法で、6時間以上の勤務には45分以上、8時間超の勤務には1時間以上 の休憩を取らせるようにとはなっていますが…。

 

しかも、事業主には、雇用する労働者の労働時間把握義務がありますから、『休憩時間の取得を任せておいて、タイムカードの全ての時間に時間給をお支払いする。』という形態でも、同様の指摘を受けます。

 

私は、監督署の調査や就業規則作成によって、その組織なりに平和に成立しているルールを変えるのがあまり好きではありません。

 

ですから、今までと同じまま、何も変わらないが、意味付けを変えるという形での是正を心がけます。

 

今回も、その線で対応しました。

60分の休憩が必要であることをご説明の上、でも、やり方を変えるつもりはないので、今まで通りの賃金不支給となるしっかりした休憩だけの時間と、トイレやお茶などの賃金不支給とならない細かな休憩時間を加えたものと、2つの時間を申告してもらうことにしました。

 

この他にもいくつか指摘はありましたが、こんなに問題のない医療機関でも、是正勧告書は書かれてしまいます。

 

しかもその多くは、労働者の希望に応じたために指摘を受けたに近い内容です。

 

ただし、労働基準監督官がおっしゃるように、労働者が豹変して訴えを起こしてくれば、労働者の言い分が通ってしまう内容でもあります。

 

今が平和だからこそ、意味づけの変更がスムーズに行えるのも事実です。

 

うちはどうかなと思われた院長先生がいらっしゃいましたら、変えるかどうかは別のこと。

まずは、認識することが大事だと思います。

 

中には、意味づけによって防げるかもしれない、不払いの時間外手当が日々増えている医療機関もあると思われます。

 

不安な場合は、一度チェックしてもらうのもひとつですよ。

 

もちろん、私に言ってくださってもチェックさせていただきます。

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2010年

2月

07日

定年引上げ等奨励金(定年延長)

一昔前、60歳定年のみが当たり前だった時代、継続雇用定着促進助成金なる助成金がありました。

 

いわゆる助成金バブルの時代、数多くの社会保険労務士がその代行申請で事務所経営の基盤を作ったと言われている助成金のうちのひとつでした。

 

かくいう私は平成13年からこの仕事をしているので、このバブルは経験することができなかったわけですが、あの頃のいろいろあった助成金の中で、最も社会に貢献したのではと思える助成金でした。

 

で、それの後継となっているのがこの奨励金です。

 

ひらたく言えば、70歳まで従業員を雇用する制度を作った企業に対するご褒美となる奨励金です。

 

条件はいくつかありますが、一番のポイントは60歳以上の雇用保険被保険者を現に雇用していることでしょう。

 

現在、65歳まで現役の時代ということにはなっていますが、現行法の縛りでは、定年はあくまでも60歳です。

希望者全員を65歳まで雇用すれば、法違反とはなりません。

そして、継続雇用時の労働条件には、継続雇用制度の場合、何の制限もありません。

※定年延長だと雇用契約が一旦終了しないので、以前の労働条件を不当に下げることはできません…。

 

つまり、経営者として、この人をこの条件で雇用したいという条件を提示できるのです。

※あまりに不当なものは問題が出てくるとは思いますが…。

 

実際、今の時代、60歳定年で『今の給与で雇用し続けるなら退職して欲しい。』とは思っていたとしても、組織にとっては、まだまだ戦力になる年齢です。

 

年齢だけを理由に絶対退職という意向がなければ、60歳定年・70歳まで希望者全員を継続雇用というのは、そんなに不都合な制度ではないと思います。

 

なお、奨励金は、65歳以上への定年延長でも申請できますし、条件によって金額も様々です。

 

継続雇用義務化後、法改正への就業規則の対応が1年以上前になされていることも要件です。

 

昔のように高額を5年間給付ということではなく、低額を1回きりの申請ですが、もらえないよりもらうほうが良いと思いませんか?

 

詳細は、独立行政法人高齢障害者雇用支援機構のホームページをご確認ください。 

 

もし、窓口に相談しにくいことがあれば、お気軽にご相談ください。

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2010年

2月

02日

鬱(うつ)と休職

ここ数年、うつ病での休職についての相談が多い。

 

今日もその相談がある。

 

うつ病等、精神疾患だからと言って、特殊な対応になるわけではない。

 

大原則として、雇用契約は、『労務の提供に対してその対価を支払う』ということがベースである。

 

従って、労務の提供ができないのであれば、賃金を支払う必要はないし、回復の見込みがなければ、雇用契約の解除となる。

 

ここで問題になるのは、その原因。

 

パワハラやセクハラ、過度なノルマや残業等、業務上の事由によって発病した場合は、労災となるので、雇用契約は解除できない。

 

しかし、原因が医学的に特定できるわけではないため、本人の言い分によっては取り扱いが難しくなる。

 

また、もうひとつ問題になるのが、復帰の可否である。

 

これもまた、医学的に数値が出て大丈夫というわけではないので、復帰できるかどうかの判断は本人の主張によって診断書の内容が変わってくる。

 

基本的には、事業主は、雇用する労働者に代理行為をお願いしているわけなので、雇用する労働者が行った言動・行動の責任を取らなければならない。

 

その観点から、事業主の指定する医師の診断を受けることを強制することが認められていたり、事業主側に復帰の可否を決める権限があるのであろう。

※もちろん、復帰を認めないことが不当だと労働者側が戦うことはできる。

 

二つあげた問題。

共通する解決策は、事業主のスタンスである。

先日のブログでも書いたが、『第三者が見て』というやつである。

 

事業主が行ったことが、第三者的に見て正当、あるいはやむなしと判断される状況であれば、大やけどをすることはない。

 

しかし、うつ病の社員なんて面倒だ、早く辞めてもらおうなどと考えて、それが行動に出ていたなら、パワハラ・不当解雇で訴えられ、簡単に負けてしまう。

 

今や、うつ病は誰もがかかる可能性のある病です。

 

まずは、雇用する者の責任として、健全に復帰できるようにできるだけの努力をする姿勢を見せること、つまり、本人へのケア、家族へのケア、復帰先の職場へのケアをしっかりと行うことが大切です。

 

それと、就業規則の休職の項目はきっちりと確認しておく必要があります。

条件は適当か、期間は適当か、復帰の判断は適当か、再休職時の取り扱いはどうか、実際に社員がその規程を理解しているか。

 

昔は、ただなんとなくあった休職規程です。身体的疾病が中心で、復帰の可否、復帰の可能性も明確だったので、運用も容易でしたが、現代においては、慎重に検討して、明確に定め、きっちり周知しておく必要があります。

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河原 義徳

経営コンサルタント

特定社会保険労務士

所属 ひろせ税理士法人

〒602-8155

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過去のセミナー

今回の京都商工会議所

主催セミナーのテーマは…

中小企業の採用活動!

平成22年11月26日(金)

13時30分~

(15時45分終了予定)

京都商工会議所2階教室

(京都市中京区烏丸夷川上る)

平成22年11月26日(金)に開催される、京都商工会議所の人事労務サポートセミナーに講師として参加させていただくことになりました。

参加費無料とのことです。 

お申込みは下記チラシを印刷いただきファックスいただくか、お問い合わせ・ご質問から、参加希望の旨をご連絡ください。折り返し、ご連絡を差し上げます。

ご案内チラシ・申込書
人事労務サポートセミナー(20101126).pdf
PDFファイル 27.3 KB
残業代不払請求対策セミナー0722

平成22年7月22日(木)に開催される、京都商工会議所の人事労務サポートセミナーに講師として参加させていただきました。

関係ホームページ

河原義徳のTwitter

河原のTwitterです。よろしければフォローいただけましたら、うれしいです。