【質問】
乗っていないバスの費用や実際に通勤していないルートの費用を、通勤手当として不正に申請してくる社員がいます。どう対処するべきでしょう?
【回答】
対処は2つ。
・課税と非課税を明確にすること。
・どこまで支給するかを明確にすること。
【解説】
法律上、通勤手当は支給義務はありません。また、いくら支給してもかまいません。
しかし、非課税の通勤手当の限度額は所得税法により明確に定められています。
ここをごちゃまぜにした時点で、主張に合理性がなくなってきますので、その点に注意しましょう。
まず決定すべきかは、『どこまで支給するか』です。
よくあるのは…。
・通勤手当の非課税限度額
・実費
・合理的な経路における1カ月分の定期代
・合理的な経路における6カ月定期の1/6
・通勤距離×20円をガソリン代として支給
などなどです。
多く渡すのも、少なく渡すのも自由です。上限も勝手に決めてかまいません。
ルール・基準を定めて、それに対してどうかという対応をしない限り、都度申請内容に悩み、不公平感も感じながら対処することになるわけです。
この場合、『通勤手当の非課税限度額』というのは便利です。何より、法律に明確に定義が定められています。ですから、多くの組織で採用されているわけです。
しかし、ここで忘れてはいけないのは、『通勤手当の非課税限度額』以上の通勤手当を支給してはいけないのではなく、当社では『通勤手当の非課税限度額』を支給しているというルールなわけです。
だって課税で払えば問題ないわけですから。
抑える理由を『非課税』に持っていくと、主張に合理性がなくなってきます。
それであれば…。
当社はどこに住んでいるかで給与を決定するつもりはない。ただ実費負担については、補填してあげたいので、個人的利益が生じていないとみなされて税金の対象とならない『非課税限度額』を通勤手当として支給しています。
このように主張してあげれば、それ以上社員側からとやかく言うこともないでしょう。後は、法律上、非課税限度額とされる金額の通勤手当を支給していけば良いことになります。
あと、他の定義の場合も、非課税限度額の定義の際も、『合理的な経路』という問題が出てきます。
『一番安い経路』『一番速い経路』『一番乗り継ぎが良い経路』『一番歩くのが少なくて済む経路』『個人的に好きな経路』『途中に私的に良く利用する駅がある経路』
これらがすべて同じなら良いのですが、都市部で距離があると選択枝の幅が広がります。
先にあげたいろんな経路のうち、どれが『合理的な経路』なのかという問いに答えることはできません。
これらについても、ひとつに限定するなり、優先順位をつけておくなり、工夫が必要です。
この経路の申請については、まるで『交通費は事業主が支払ってくれるのではなく、天から降ってくるかのような感覚』を社員が持っているケースがあり、悪意なく余分にもらおう、少しでも浮かそうとしてくるケースがあります。
そうした場合は、悪意はないので、ルール上こうなのでとやんわり修正してあげてください。
それでも不正が横行するようなケースでは、定期券購入を条件に通勤手当を支給することとして、提示させるような形も考えられます。
非課税限度額の考え方からも、それであれば個人的利益が生じていないことはあきらかなので、認められやすい状況がうまれます。
ただ、買わないほうが得なケースであっても(年末年始・GWを挟むような場合)、購入が絶対になりますので、全体的なコストがあがる可能性があります。
距離申請についても、悪意なく適当に答える社員もいます。
そこは、地図等で会社側が測定して、ルールに基づき支給する形を取ったほうが、結果的には不公平もなく良い状況がうまれるはずです。
さらに不正については、返金させる旨を定義しておくのも一つです。
実際にするかどうかは別にして、賃金規程と通勤経路申請書などにしっかり記載しておくことで、防止効果はあるはずです。
以前にも書いた内容が含まれてしまったような気もしますが、大変多くの質問(不満?)をお聞きしますので、気にせず全体的にまとめました。
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