誰にもわかる1ヶ月単位の変形労働時間制 - 労務相談.COM(京都の社会保険労務士事務所 誰でも読める、誰でもわかる就業規則)

誰にもわかる1ヶ月単位の変形労働時間制

一昨日、「洋麺屋五右衛門」の1ヶ月単位の変形労働時間制が要件を満たしていないとのことで、残業代の追加請求が認められる判決が下りました。

 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100407-00000091-mai-soci

 

読んでいただければ、1ヶ月単位にも関わらず、半月単位でしかシフトが決められていないことが最大の落ち度であることはわかります。

 

あまりトラブルになることのない制度ですが、制度導入でメリットがある事業所も多数ありますので、できるだけ簡単に説明してみることにします。

簡単に説明するため、詳細部分で誤解を受ける可能性がありますので、実際に導入される場合は、専門家にご相談の上でお願いします。

 

さて、一言で言いますと…。

 

『1ヶ月間を平均して週40時間に収まるように労働時間が設定されていれば、本来定められている1日8時間・1週40時間を無視して労働時間を決められる制度。』

 

ということになります。

 

本来は、1日、1週という単位で労働時間を見ていきますので、8時間を超える勤務は全て0.25倍の割増賃金が必要になります。

 

しかし、上記の通り、1ヶ月を平均して40時間に収まってさえいれば、例えその日が12時間労働だったとしても、割増賃金は必要なくなります。

 

1ヶ月単位の変形労働時間制は、就業規則に必要な事項を記載することで導入できるように、比較的簡単に導入できます。

 

その分、経営者にとって、労働者をたくさん働かせる制度という意味はあまりありません。

 

と言いますのも…。

 

1ヶ月を平均して40時間に収まって…。

これを満たすとすると、暦日数に応じて、

31日:177時間、30日:171時間、29日:165時間、28日:160時間ということになります。(暦日数÷7日×40時間…1ヶ月が何週間かを出してそれに40時間をかける)

 

一般的な週5日1日8時間の週40時間労働であれば、祝日がないと仮定した場合、

31日:168時間~184時間、30日:160時間~176時間、29日:160時間~168時間、28日:160時間となります。

 

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入することで、月・曜日の巡り合わせによっては、普通に勤務して割増賃金が発生することになってしまうケースもあるのです。

 

ということで、導入することにメリットがあるとされているのは…。

 

①1日の労働時間が8時間を超えることがあるシフト制勤務

②隔週出勤があるようなケースで、1週の労働時間が40時間を超えることがある勤務

 

ということになります。

 

そして、多くの方が誤解をされているのが、前出の177時間・171時間・165時間・160時間を超えさえしなければ、割増賃金の支払いが不要と思っておられることです。

 

実際はそうではなく、あらかじめ、1日8時間・1週40時間を超える設定をしている日について、その設定をした時間までであれば(月平均は満たしているものとして)、割増賃金が不要とされているだけなのです。

 

つまり、もともと9時間労働の日に10時間労働してもらった場合は、例え月単位で前出の時間数を超えていなかったとしても、その1時間について0.25倍の割増賃金は必要になってしまいます。

 

洋麺屋五右衛門のケースでは、このあらかじめがなかったわけですから、違法とされても当然のケースだったと思われます。

※詳細は知りませんので推測です。

 

1ヶ月単位の変形労働時間制を導入すれば…。

 

月9火9水4.5木4.5金9土4.5 40.5時間

月9火9水4.5木4.5金9土0   36時間

月9火9水4.5木4.5金9土5   40.5時間

月9火9水4.5木4.5金9土0   36時間

月9火9              18時間 合計171時間≦171時間

 

月7火7水7木7金7土7 42時間

月7火7水7木7金7   35時間

月7火7水7木7金7土7 42時間

月7火7水7木7金7   35時間

月7火7水7       21時間 合計175時間≦177時間

 

こんな勤務でも、決められている時間を超えなければ、割増賃金の支払いの必要がないわけです。

※上記は、曜日固定で考えていて、最も曜日が経営者に不利な場合を考えています。シフト制で自由に決めることができる場合は、月の中で決められた総時間数内で決めることになるので、もう少し長い時間設定が可能です。

 

ただ、ご覧の通り、多く働いてもらうための制度ではなく、先にあげた通り、1日や1週で、8時間や40時間をはみ出るケースがある場合の対応策というのが、現実的な考え方です。

 

また、シフト時間数=前出の時間数(177・171・165・160)でシフトを組んでいる場合で、欠勤・遅刻・早退の類がなければ、割増賃金の計算を、『総労働時間数-前出の時間数』で計算していただいても問題は生じません。

 

これでもできるだけわかりやすく説明したつもりですが、それでもややこしいですね…。

 

なお、少しでも長い所定労働時間を設定したい場合は、1年単位の変形労働時間制を採用することになります。そうすることで、お盆・GW・お正月といった長期の休みの分を、他の期間にばら撒くことができます。

労働者にとっては、厳しい制度ですので、導入には労使協定が必要ですし、制限もいくつか存在します。また1年間(最低三ヶ月)の勤務日と労働時間をあらかじめ決めておく必要があります。

 

これはまた別の機会に…。

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